■ 参加者の顔ぶれ

 7月5日申し込み段階で、8月18日出発のツアーは8人だった。小生が申し込むと、その時点ですでにいっぱいだと言われ、窓口のお姉ちゃんがどこかに電話して、一人分席を確保してくれた。
 最少催行人数が6人のツアーのくせに、8人でいっぱいというのも困った話なのだが、とにかくこの旅行は、多くて小生を含めた9人で行くことがわかった。
 が、蓋を開けたら北京空港で集まった数、20人。確かに窓口のお姉ちゃんは、「これから席を増やしていくと思う」と言っていたが、まさかここまで増やせるとは。ちなみに、飛行機は満席だった。不思議だ……。
 さて、ここではどんな顔ぶれだったかを、こういうツアーの参加者の一例として書いてみたいと思う。なお、プライバシー保護のため、当然実名は出さないし、このページ内で載せる画像はなるべくツアー客が写っていないものを用い、どうしても載せざるを得なかった場合も、そうだとは一切言及していない。

 まず、足つぼマッサージの若い夫婦。名古屋空港発だから、参加者は全員名古屋近郊だと思っていたら、彼らは確か高山から来たと言っていた。奥さんの方は小生と同い年で、旦那は少しだけ上だった。
 年が近いこともあって、割と話しかけ易かったが、結婚2年目のラブラブ夫婦で、基本的にはあまり他の人たちとの交流はなかった。
 次に、パンダの夫婦。恐らく30歳前後だと思われる二人組で、勝手に夫婦だと認識した。ほとんど接点がなかったため、印象が薄いのだが、北京動物園にパンダを見に行ったとき、奥さんがとても嬉しそうにしていたのを覚えているので、こういう愛称にした。
 一番最後に、名古屋空港に着いて荷物を待っているときに、旦那と少し話をした。なかなか面白くていい人だったから、もっと旅行中にも話ができれば良かったと思う。奥さんともその時に話をし、3つ買ったパンダのぬいぐるみの内、2つは自分のだと言って笑っていた。好感度の高い夫婦。
 それから、書の3人家族。すでに定年退職したご主人と、奥さん、それからその息子さんの3人の家族連れで、息子さんのMr.R(イニシャルは架空)は小生と年が近く、非常によく話をした。今回の旅行が疎外感を感じない旅になったのも、ほとんどこのMr.Rのおかげで、3日目の夜などはホテルのロビーで3時間も話し込んでいた。
 ところでこのご主人、北京動物園で話す内に、実は小生と同じ小学校の出身だとわかり、奥さんは小生がお世話になった先生とお知り合いだった。先日、よく行くライブハウスで見る、尊敬しているプロのギタリストが、実は高校時代の恩師の知り合いだったことが判明したのだが、世間では本当にこういうことがよくあるものだ。
 ガキんちょ連れのおっかさん。残念ながらこの二人に関しては良い印象がない。ガキんちょは小学校2年生で、まあ恐らく一般的な小学校2年生はそうなのだろうが、非常に我が儘でうるさかった。
 ただ、周囲がそれを「ガキだからしょうがない」と許容していたのはいいとして、おっかさんの方があまり厳しく叱っていなかったのがどうかと。どこかで一度、おっかさんがガキんちょに、「ガイドさんに対する言葉遣いが悪い」と言っていたが、おっかさんの方もガイドさんに対して言葉遣いが悪かった。
 この際年齢は関係ないだろう。書の3人家族の旦那さんを始め、みんなガイドさんに丁寧語を使っていた。子供は親を見て育つ。「甘やかしすぎ」ということで、小生とMr.Rの意見は一致した。
 掛け軸の夫婦。中高年の夫婦で、3日目まで印象が薄かった。3日目の夜に、ロビーでMr.Rと話していたところに、最後にホテルを見て回っていたご主人がやってきて、30分ほど話をした。愛称は、故宮で掛け軸を買ったことから。
 お茶の夫婦。ほとんど話をしていないので、年などはわからないが、掛け軸の夫婦よりは上だと思う。書に詳しく、故宮で随分勧められていたが、結局購入しなかった。けれど、その後お茶を大量に買い込み、Mr.Rが「みんな、使うべきところで使うんだねぇ」みたいなことを言っていた。同感。
 けれど、まったく買い物をしていなかった人たちもある。それが、ビデオの夫婦。小生がひたすら写真を撮っていたとしたら、ここのご主人はひたすらビデオを撮っていた。行きの飛行機で一緒になり、その時は話さなかったが、帰りの飛行機でも一緒になって、たくさん話をした。
 息子さんが小生より2つ下、ということから、ご夫婦の年齢は察してもらうとして、お二人は昔から頻繁に海外旅行に行くらしい。その中で、土産物は、「現地ではいいと思っても、結局帰ってくると邪魔になる」と悟り、ほとんど何も買わないことにしているとか。それは実に正しいと思う。
 最後に、4人家族。パンダの夫婦の旦那さんと、「実に冷静で厳しそう」というところで意見が一致した、冷静なご主人。もっとも、「厳しい」と「悪い」は別であり、他の人のためにも動くことができる、頼りになるしっかりとした人であることが、最終日に証明されている。
 最終日のことは個別に取り上げていないのでここで書くと、北京空港で荷物を預ける際、隣の列がこっちに割り込んできた。そのため、ただでさえ動いていなかった列がますます動かなくなり、このままではさらに遅くなると察知。そこで小生が、列の前の方にいたご主人に、「とくとく北京でパスポートを集め、一気にやっちゃいませんか?」と持ちかける。ご主人、すぐにOKしてくれ、、海外旅行慣れしていることもあってか、小生が人数分のパスポートを集めると、さっさと手続きをしてくださった。
 瑪瑙の奥さんとは、最後の最後、空港で息子さんと話していたら、二言ほど挨拶をしていかれた。話したのはそれが最初で最後。瑪瑙をたくさん売っている国営の土産物屋で何かを買っておられたので、こう愛称をつけたが、本当に瑪瑙を買っておられたのかは定かではない。
 お二人の息子の少年は、中学2年生。反抗期真っ盛りという感じで、小生意気なヤツだった。もちろん、それを鬱陶しく思うほど小生は若くなく、北京動物園で小生とMr.Rが話しかけてからは、少年も含めた3人で話すことが多かった。名古屋空港で瑪瑙の奥さんに、「相手をしてくださってありがとうございました」と言われたが、相手をしてもらったのはこっちだという認識。
 ただ、奥さんの言葉が心からのものかは微妙。実は、ご両親は小生とMr.Rが息子さんと話をするのを、快く思っていないのではないかというのが、3日目の夜に聞いたMr.Rの意見。小生もMr.Rもろくな話をしていなかったので、変な毒がつかないかと心配していたのではなかろうか。
 そして最後に、今回の旅行で小生にとって一番心残りだったことの当事者である、4人家族の娘さん。小柄で黒髪、決して今風ではない、素朴な女の子で、化粧っ気もまったくなく、ちょこちょこ動くのが可愛らしい子だった。
 小生はこの素朴な女の子は、少年の妹だと思っており、Mr.Rもそう思っていたから、恐らく今回のツアー客の、少なくとも男性陣はみんなそう思っていただろう。ところがこの子は、実は大学1年生だと、少年の口から驚くべき事実が公開され、小生とMr.Rは驚く以外に反応のしようがなかった。
 大学1年生にしてはあまりにも純粋そうな、絶滅危惧種に指定したいような女の子。中学生なら話も合わないだろうからどちらでもよいが、大学生なら小生やMr.Rとも対等に話ができるだろうから、小生はこの子と話をしたくてしょうがなかった。
 が、今回の旅行で、小生以外の19人の参加者の中で、唯一一言も口をきかずに終わったのが、誰よりも話をしたかったこの子なのだ。
 その理由が、まずこの子自身が家族以外の誰とも話すことなく、話したそうでもなかったこと。ひょっとしたら、単にものすごい上がり症なだけかも知れないが、どちらにせよこの子の周りには常に壁があった。さらに、この4人家族自体が、ほとんど他の家族と交流していなかったこと。要するに、二重の壁に守られていて、どうすることもできなかったのだ。
 その点少年の方は、なるべく両親とは一緒にいたくなさそうで、北京動物園では、自分から声はかけてこなかったが、ずっと小生とMr.Rのそばを歩いていた。だからこちらから声をかけたのだが、素朴な女の子は、こんなふうに自分から壁を壊してくることは決してなく、いつも両親と一緒にいて、手も足も出なかった。
 これが今回の旅行で一番悔やまれたこと。もっとも、Mr.Rはこの点について、面白いことを言っていたが。
 というのはこの子、始終無表情で、時々カメラの前でにっこり笑うほか、ほとんどその表情を変えなかった。だから、一体どんなことを考えているのかさっぱりわからず、一言も話をしていないので、すべてが謎に包まれているのだ。だからMr.Rは、そのことを、「想像の余地があって面白い」と言っていた。
 確かに、もちろん事実を知るのが一番心の平穏が保てるが、事実が永遠に闇に葬り去られた今、想像の余地が膨大に残されているのは、せめてもの慰めかも知れない。
 以上が小生以外の参加者19人。長くなったが、一人で参加すると、他の人たちといかに話をするかというのがネックになるので、必要以上に観察してしまうものだ。
 メインコンテンツ終わり(爆)。次から、おまけで北京の話をしていこう(ォ