■ 八達嶺−人々は右へ、小生は左へ

 さあ、八達嶺、万里の長城である。結果としてだが、振り返ってみてここが一番面白かったので、少し長めに書こう。
 まず駐車場でバスを降りると、Ryan氏に連れられて土産物屋にやってきた。T字の上の ̄が万里の長城だとすると、ここは|の下の方にあたる。写真はそこから撮った八達嶺。


 トイレ休憩の後、Ryan氏はT字路まで来た。そこを右に折れ、1時間後に先ほどの土産物屋に集合するよう我々に言った。そしてRyan氏は希望者の写真を撮っていたが、小生はふと、前方と後方を見る。まずこれが前方。


 ものすごい人なのがわかってもらえるだろうか。振り返った後方。


 手前の大きな正方形のスペースから向こうに、まったく人がいないことがわかってもらえるだろうか。
 これがかなり気になったので、Ryan氏が結果として小生以外のほぼ全員の写真を撮り終えるのを待ち、向こう側には行けないのかと尋ねてみた。すると、別に行けるが、垂直に近いところもあって大変だという返事。
 別に行けるのならば行かない手はないと、小生はT字の左の方へ行くことにする。
 後から知ったのだが、人の多かった右の方が「女坂」、急斜面の左の方が「男坂」というらしい。

 さあ、頑張って行きましょうと、例の正方形のスペースを通り抜けた辺りから撮った写真。


 先は長い。
 さらに少し歩いたところで、マジで鬱陶しいおばちゃん現る。絵葉書を売りつけてきたのだが、しつこいなんてもんじゃない。無理矢理見せてくると、もうマジでうんざりするくらいまとわりついてきて、「帰りに見るよ、帰り帰り」と何度も何度も何度も何度も言って、ようやくどっか行ってくれた。
 さらに歩いたところから撮った階段。


 これでもだいぶ急だが、もっと先にはこんなものではないレベルの階段があった。まあ、それは帰りに。
 ようやく上に辿り着くと、いくつか店があって、もちろん長城はずっと先に続いていた。
 頂上から取った、その「ずっと先」の写真。


 さすがにここから向こうは切りがないから、まったく行く人がいない。写真に写っている人たちも、そこから先には行かなかった。
 頂上で休んでいると、写真を撮ってその場でキーホルダーにしてくれるサービスを10元でやっていた。珍しく良心的だと思って頼むと、どうやらこれが罠だったらしい。
 写真を撮った後、別の人が頂上到達記念プレートのようなものを持ってきて、紙が貼ってあるところに名前を書いてくれと言ってきた。
 これもそのキーホルダーについてくるのかと思って名前を書いたら、「280元」と言ってくる。おいおい。
 「そんなもん知らん」と言い張ったが、「書いたでしょ、名前書いたでしょ。買ってよ、買って買って」としつこい。マジでしつこい。
 あまりにも鬱陶しかったので、結局160元くらいで購入した。ちなみに、これでも十分高かったと、後から激しく後悔したが、まあ仕方ない。ちなみに1元13円。
 しかもその男、200元渡したら釣りをよこさねーの。誤魔化そうとするから、とにかく要求すると、「お願いだから私にください」と言って聞かない。しょうがないから5元だけくれてやった。小生、優しすぎる模様。というか、こういう押し売りに弱いのかも。
 さあ、帰り。とにかくこの写真だ。


 Ryan氏が「垂直に近い」と言っていた場所である。行きも怖かったが、帰りはもっと怖い。
 見ての通り、カメラをほぼ真下に向けているにも関わらず、数段先が見えないのである。
 まいったね、これは。確かに、あの中高年夫婦勢がこっちに来ていたら、ここでゲームオーバーだったかも知れない。

 さて、頑張って帰ってきた頃には、だいぶこっち側に来る人も増えていた。
 にも関わらず、ヤツは小生のことを覚えていて、再びまとわりついてきた。絵葉書のおばちゃんである。
「帰りって言った。さあ、買って。買って買って買って、ほらほら、買って。100元、100元」
 マジでいい加減にしてくれと言う感じだが、こっちがどれだけ突っぱねてもまるで動じる連中ではない。日本人の何かの勧誘のしつこさの比ではない。
 別に絵葉書自体は、日本でも趣味で集めているものなので、55元で購入してやったが、後で行った土産物屋で10元で売っていた。もうダメぽ……。
 ちなみに帰りの飛行機で、ビデオの夫婦も中国人の押し売りのしつこさにはうんざりだったと話していた。もちろん、彼らは何も買わされなかったが、「他の国ではあんなのは見たことがない。あれにはものすごい抵抗があった」と言っていた。

 集合場所の土産物屋に来ると、まだ誰もいなかった。どうやら小生、時間に余裕を持ちすぎのようだが、一人だし、他の人以上に周りに迷惑をかけるわけにはいかない。
 何気なく土産物を見て回っていると、また店員に捕まった。扇子の押し売りだ。
 はっきり言って、扇子などまったく必要なかったのだが、気が付くと1,000円で1本購入していた。もうダメぽ。
 後から何度も話題になったのだが、実は小生、この旅行に2万円しか持って行かなかった。この時点ですでに金を使いすぎの予感。
 実際、最終日には千円札1枚と60元しか残っていなかったから、持っていった量が少なすぎだったか、もっと押し売りを突っぱねなければいけなかった模様。扇子はともかく、頂上のプレートが余分だった。

 これで八達嶺は終了だが、一番初めに、「ここが一番面白かった」と書いた。無理矢理物を買わされてばかりで、それほど面白くないように見えるかも知れないが、結局、ツアーについて回るだけの無難な旅よりも、少しでも自分の意思が入っている、能動的な旅の方が面白いということである。
 失敗もまた笑い話。その辺りは、メルボルン紀行を読んでもらえればわかると思う。