■ イタリアの暑さ

 確か4時半くらいにホテルにて解散し、自由行動になったと思う。旅行日程表を見ていて、初日ながら実はこのローマでの自由行動が、今回の旅行のクライマックスではないかと考えていたので、後先を考えずに果てるまで歩くことを誓い、外に出た。
 その自由行動の話の前に、イタリアのことなのだが、イタリアの夏は暑い。湿度が低いので日本のような嫌な暑さではないが、紫外線が日本の3倍だと聞くし、生まれて初めて日焼け止めなるものを持参していった。これを毎日顔や腕に塗っていたし、サングラスはもちろん、帽子も基本的には常にかぶっていた。
 そして水。事前にコンダクターのIsabellaさんが、「自分は一日に水を3リットルから4リットルは摂る」と言っていたので、ベテランの人がそうしているのに、素人の自分がそうしない理由は無いと考え、極力水分を補給するよう努めた。絵にするとこういう感じ。


 見えにくい左手奥の富士山の水と、ポカリスエットは成田空港で買ったもの。ファンタオレンジは現地で買ったものだが、この先にも何度か購入した。露天などで買うと1本2.5ユーロから3ユーロする。日本のものより果汁が多く、美味しいような気がした。ちなみにこの暑さの話、このローマの日に一組の新婚夫婦の旦那さんが熱中症になり、旅行の前半を棒に振るという残念な事態になってしまった。ガイドさんやベテランコンダクターの話には是非耳を傾け、忠実に守ることが安全への近道だ。
 ……と言いつつ、初日の夜に思い切り外出したが。まあ、自己責任にて。


■ 単身ローマ

 世の中には一人でマクドナルドやココイチに行けない人がいるらしい。会社の食堂で、ある社員から一人で飛行機に乗って北海道へ行ったという話を、妙に自信たっぷりにされた時には、正直反応に困ったが、そういう人には今回の私のような旅行は恐らく一生無理であろう。そういえばインターネット上でも、新婚旅行で海外に行ったら、嫁さんが怖がってホテルから一歩も出ず、当然旦那も嫁を置いて行くわけにもいかずに、残念な旅行になってしまったというような話を見たことがあるが、大丈夫、大丈夫だよ。実際にそこで生活している人は存在するのだから、いきなり殺されるわけではないのだから、勇気を出して!
 と自分に言い聞かせながら、テルミニ駅から地下鉄に乗ってポポロ広場へ。ちなみに地下鉄は1回券が1ユーロ。地下鉄の範囲内ならどこまで行っても同一料金。これは日本に比べてお安いなぁと思った。
 Flaminio駅で降りてポポロ広場へ向かったのだが、いきなり道に迷う。冗談抜きで、太陽がある方が西だとか、そういう世界だった。
 ということで、ポポロ広場。特に何があるでもなかったが(恐らく事前に調べていけばそれなりに何かあったのだろう)、自分で地下鉄に乗って、地図を片手に辿り着いたというだけでも十分興奮した。


 ポポロ広場からサンタンジェロ城へ歩く。これも少し道に迷いながら、しかも結構距離があり、すでにヘトヘト。ここは入場料を払って中に入った。サンタンジェロ城から見るローマ市街が良いというのは、事前に調べていたからである。それがこれ。ちょっとわかりにくいか。まあいい。どうせ目で見たものを写真で伝えるのには限界がある。


 外に出て橋を渡り、振り返ってサンタンジェロ城を撮影。


 本当はこの一本西の橋からが綺麗だったのだが(車窓から見た)、そこまで歩く元気はなかった。サンタンジェロ城からナヴォーナ広場へ歩く。これも少し道に迷った上、結構人通りの少ない路地を歩いた。しかしこの頃にはもう慣れていた。少なくとも、明るい間は治安は大丈夫そう。
 ナヴォーナ広場は写真は割愛。その後パンテオンというのが観光地マークになっていたので、そこへ行く。何かも知らなかったが、行ったらこれが出てきて興奮した。いきなりこういうのが出てくるからイタリアは面白い。


 そろそろ疲れていたが、ベネチア広場へ向かう。どうしても車窓から見たフォロ・ロマーノをちゃんと見たかった。その途中で、不覚にも石の出っ張りに右足首を強打。さすがは石。これが予想外に痛く、しばらくその場に立ち尽くした。キノの言葉を借りるなら、「怖かったよ。終わってしまうかと思った」が、10分くらい悪い想像をしながら佇んでいたら、次第に痛みは引いていった。くるぶしの少し上だったから良かったが、実際この時の打撲傷は、二週間近く経った今なお、痛みが残っている。
 ベネチア広場からフォロ・ロマーノへ。このフォロ・ロマーノがやたらとでかく、南に入ると東に抜けられないなど、同じ所を往復したりして、本当に疲れた。本当に疲れたが、本当に素晴らしかった。ポンペイに行けなかった遺跡欲求の半分は満たされた。


 再びコロッセオへ。中に入れるかと期待したが、すでに8時近かったと思う。開いているはずがなく、結局コロッセオは外観観光だけになってしまった。さて、これでほとんどローマ市街を西から東へ歩いたわけで、もう足も棒になっていた。だが、外はまだ明るい。スペイン階段に行くべきか、あきらめるべきか。
 これは本気で悩んだが(それくらい足が疲れていた)、このローマがクライマックスだし、ここまで来て疲れを理由に止めてどうすると言い聞かせ、地下鉄でスペイン広場に向かった。さすがにこの時間の地下鉄は少し怖かったが、それとなくカバンに手を当てていれば、何も恐れることはなかった。
 そしてスペイン階段。眼前に結構長い階段が現れ、登るか登るまいか本気で悩んだが(それくらい足が……)、ここまで来て疲れを理由に止めてどうすると言い聞かせ、登頂。登頂したという充実感以外の満足はあまりなかったが、まあよしとしよう。
 テルミニ駅に戻り、ジャンキーな夕食を取る。


 ピッツァの8分の1サイズだったが、それでも残した。確かこれで7ユーロくらいだったと思う。日本からすると高く見えるが、ボリュームもあったし、割と妥当な値段。
 ホテルに戻ったのが22時くらい。それから足を冷やしたり、バンテリンを塗ったり、念入りにケアした後、倒れるように眠りについた。とてつもなく長い一日が終わった。