■ マイナー極まりない移民博物館見学

 さて、Klein氏という偉大なる後ろ盾がなくなり、いよいよ我々の真の海外旅行が始まったのである。
 ホテルを出て初めに向かったのは、ホテルのすぐ裏にある移民博物館。これはマニアックな建物である。一応『地球の歩き方』に載っていたのだが、観光客がこぞって押し寄せるようなところではない。
 では、何故小生がこの建物をチョイスしたかと言うと、世界名作劇場『南の虹のルーシー』に感化されたから以外の何物でもない。イギリスから未開に等しいアデレードに渡り、家族で力を合わせて生活し、やがて土地を手に入れて幸せになるポップル一家の物語を見て、小生はどうしてもこの移民博物館に行ってみたくなったのだ。
 下は北側から入った外観。1階はカフェにもなっている。


 それから、恐らくこちらが表なのだと思われる、南側から撮った外観。


 さて、中に入った我々は、まず受付でチケットを購入した。
"One adult. please."
 で良い。大丈夫。
 これを言った後、受付の若いお兄ちゃんが、小生にこう聞いてきた。
"Where are you from?"
 実際には、2度ほど聞き返してようやく理解したのだが、これに小生は"Japan"と素直に答えた。
 治安の悪い国では、あまり自分が日本人であることは言わない方が良いと言うが、少なくとも今回の旅では、一度として国籍を偽ったことはなかった。
 ちなみに、ここでは恐らく各国語のパンフレットがあって、どのパンフレットを渡すか選ぶために聞いてきたのだろうが、今回の旅行では、他にも料理店やパンフレットのない建物でもこれを聞かれた。結局、5、6回は"Japan"と言う機会があったように思われる。
 メルボルンだけなのか、それともオーストラリア全域なのか、あるいは海外旅行と言うのはそういうものなのかはわからないが、少なくともメルボルンでは、「よく出身国を聞かれる」というのを念頭に置いておくと良いだろう。
 パンフレットを受け取った後、小生はこの建物内で写真を撮って良いかを尋ねた。
"Can I take pictures here?"
 これで通じた。ちなみに、大抵の本に、丁寧なのは"May I"、少しくだけた言い方が"Can I"と書かれているが、今回の旅ではすべて"Can I"を使った。
 で、通じたのだが、この後が大変。相手の返事がまったくわからないのだ。
 それでも、何度か聞き返した後、どうにか、「1階と2階はフラッシュなしの撮影OK、3階は撮影NG」だと理解した。いや、本当にそうだったのかは定かでないが、少なくとも小生とMichaelはそう受け取った。
 では内部。内部と言っても、日本の観光地ですら説明文を読まない小生が、英語で書かれた説明文を読むはずがない。結局展示品をちらちら見て終わったのだが、それでも思っていたより遥かに面白かった。説明なしで、いくつか内部の写真を載せよう。






 これは船の内部。随分狭っ苦しいところだ。『南の虹のルーシー』では、イギリスからアデレードまで3ヶ月かかったと言うが、こんなのに3ヶ月はかなり参る。




 実際、この移民博物館にはまったく期待していなかったのだが、先にも書いた通り、ここは面白かった。
 我々の他に回っていたのは、地元の学生と思われる人たちばかりで、観光客は皆無だったが、博物館が嫌いでない人は、是非行ってみるといいだろう。ポイントは、期待せずに行くことだ。期待して行っても満足できるが、期待していなければ大満足できる。