■ トラムに乗ろう

 4/29の夜は、あっと言う間に眠りに落ちて、体感時間約1、2秒で目覚し時計が鳴った。朝だ。
 午前6時。日本時間では5時になる。メルボルンでは、毎日この時間に起きていた。日頃はなかなか起きられない小生だが、さすがに旅行先では気分や気合いが違うらしい。
 この日はメルボルンの顔とも言えるトラム、要するに路面電車に乗りまくる予定である。というわけで、まず朝一番にメットカードを買いに行った。メットカードというのはトラムの乗車券であり、トラムだけでなく、バスや電車も乗ることができるカードのことだ。
 ホテルの向かいにあったニュースエージェンシーで売っているようなので、入って店員さんに尋ねる。
"Excuse me. Can I buy a met card?"
 ちゃんと通じた。そうすると、「奥で買えます」というような身振り手振りをしてくれ、我々は促がされるまま奥に。そこで次の店員さんに同じように言ったのだが、今度は"met card"が通じなかった。
 3度ほど言い直すと、ようやく通じる。メットカードにはいくつか種類があるが、1日乗車券は"daily"、ゾーン1は"zone one"と言えば大丈夫。
 購入した後、店員さんが「使い方は大丈夫ですか?」と聞いてきた。と言っても、聞き取れたのは"how"ただ1語だが。
 せっかくだからと尋ねると、店員さんは"green box"という言葉とともに、カードを箱に差し込む手振りをした。わかりやすい。
 実際に、少しトラムの解説をしよう。まず下の写真がメットカードである。一番左は部屋のルームキーなので、気にしなくて良い。


 写真右のカードは、5/1に使った2時間券だが、まず最初の乗車の際に、車内の緑色の箱にカードを差し込む。そうすると、裏に日付が刻印される。これ以降は、カードは差さなくてもいいし、誰にも見せなくていい。勝手に乗って勝手に降りる。
 トラムには2種類あって、一つが無料で乗れるCity Circle、もう一つが、いわゆる普通のトラムだ。


 こっちがCity Circle。なかなか趣深い。


 こっちが普通のトラムだが、実際には色々な種類がある。Klein氏の話では、昔は緑色のもの1種類しかなかったが、今は民営化されたか何かで3社くらいで運営していて、その時に種類も増えたとか。
 トラムストップは道路の真ん中に立っている場合が多い。下は帰りに車の中から撮ったもの。


 この写真のような停留所なら普通に降りることができるが、中には本当に車の走ってくる路上に降ろされたりするので、降車時には常に車に注意しなければならない。
 降りるときには、その停留所の手前で車内にある紐を引く。これが写真。


 次がどの停留所であるかのアナウンスはないので、あらかじめしっかりと降りる場所についての勉強をしておいた方がいいだろう。実際我々も、市街ではなんとかなったが、コモハウスへ行った時も、メルボルン動物園に行った時も、ともに降り場を一つ間違えた。

 この話は夜のことになるが、トラム関連の話と言うことでここに載せよう。
 まずはこの写真を見てもらおう。


 これは、City Circleの車内の写真である。もう夜だったのだが、これを撮った後、その事件は起きた。
 撮った瞬間、向かいのぼけたような白髪のおっさんが、突然何か大きな声でわーわー言い始めたのだ。
 小生はMichaelと顔を見合わせ、「ひょっとして、撮影してはいけなかったのだろうか」と不安になった。
 けれど、どうやらそういうわけではなかったらしい。延々と喋り続けるおっさんの話はまったくわからなかったが、中に時々"new camera"などの言葉が聞き取れた。どうやらカメラの話をしているようである。
 しかし、いい加減うんざりしてきたので、適当な停留所で降りることにする。降りる時に、一言声をかけてやった。
"Sorry. I can't understand you."
 この話が笑い話になったのは、それからである。
 我々が降りると、同じ停留所で降りた2人組の若者が突然楽しそうに声をかけてきて、笑いながら、喋るような手振りとともに、
"Talk, talk, talk, talk!"
 と言ったのだ。どうやら、傍観者的にも、さっきのおっさんは面白かったらしい。
 小生が両手を広げて、
"I can't understand. まいたっよ、あはは。"
 みたいなことを言うと、彼らは笑いながら答えた。この時の言葉、小生には"I could understand."と聞こえ、Michaelは"I couldn't understand."と聞き取った。
 文脈的には後者の方が面白いだろう。ただし、小生の"can't"は、文字通り「聞き取れなかった」という意味だが、彼らのそれは、「こいつの頭が理解できない」という意味である。
 ともかく、こんな小さな出来事の一つ一つも、海外旅行の魅力かなと、小生とMichaelは感じたのである。