『 少女パレアナ 』 あらすじ



■書名 : 少女パレアナ
■著者 : エレナ・ポーター
■訳者 : 村岡花子
■定価 : 480円
■出版社 : 角川文庫
■ISBN : 4-04-221201-8
■初版発行日 : S37.07.20
■購入版発行 : H11.05.10 ( 二十六刷 )
 
■購入日 : 2003/08/21






−裏表紙より−


孤児となったパレアナは気難しい叔母さんに引き取られたが、

どんな事からでも喜ぶことを捜し出す「何でも喜ぶ」ゲームで、

その頑な心を溶かしてゆく。

やがてその遊びは町全体に広がり人々の心を明るくした。

全篇にあふれている強い希望と温かい心は

一九一三年にこの本が出されてから今もなお、

多くの読者に読み継がれている。




一 ミス・パレー
ナンシーは、パレー・ハリントンという女性のところに奉公している。パレーは父母も姉妹もおらず、父の残した大きな屋敷にたった一人で暮らしていた。と言って、決して寂しがるような素振りは見せず、むしろ一人で静かに暮らすことを望んでいた。ナンシーはこの屋敷に来てまだふた月だったが、すでにパレーが何をやっても気に入らない、冷たく気難しい女性であることを知っていた。

6月のある日、滅多なことでは動じないミス・パレーが、随分せわしない様子でナンシーを呼び、彼女に屋根裏部屋を一つ空けて、そこにベッドを運ぶよう指示した。聞くと、彼女の死んだ姉の娘、つまり姪のパレアナ・フィテアという、11になる子供がこの屋敷に来るという。パレアナは遠くの村で父親と二人で暮らしていたが、その父親が死に、身寄りのなくなった娘を世話してくれるよう村の者から手紙が来たのだ。

ナンシーは子供が来るというので喜んだが、パレーはパレアナを引き取ることを快く思っていなかった。というのは、パレーはパレアナの父親であるジョン牧師を憎んでいたのだ。パレーの姉のジェニーには、彼女を懇望していた金持ちの男があったが、ジェニーはジョンを選び、駆け落ちしてしまった。ジェニーとはそれっきりで、パレーはそのことでジョンをひどく恨んでいた。それでもパレアナを引き取る決心をしたのは、ひとえにそれが自分の義務であると考えたからだった。

二 トム爺とナンシー
ナンシーは屋根裏部屋の掃除をしながら、ぶつぶつ文句を零していた。文句の対象は、今度来る姪に対するパレーの扱いだった。綺麗な部屋はいくらでも余っているというのに、父母を亡くした可哀想な子供をこんな屋根裏部屋に押し込むのが、不愉快でしょうがないのだ。午後、ナンシーはその不満を庭師のトムにぶちまけた。

トムはもう何十年とハリントン家の屋敷で働いており、ナンシーの話を聞いて、すぐにそれがジェニーの娘だとわかった。トムはジェニーの娘を見られることに感謝してから、未だに不満を言い続けるナンシーに、「パレーさまを好きでないな」と尋ねた。ナンシーが「だれが好くもんですか」と言うと、トムはそんなナンシーに、パレーの昔の話を語って聞かせた。

トムの話では、パレーには昔恋仲だった人がおり、その人は今でもこの町内にいると言う。パレーも昔はあんなに気難しくなかったのだが、その人とケンカして以来、すっかり刺々しくなってしまったのだ。話を聞いてもナンシーは納得いかず、今は仕方なく働いているが、いつか出て行ってやると宣言する。そんなナンシーに、トムは「それじゃあ、ためにならねえんだよ」と優しく諭すのだった。

三 パレアナきたる
6月25日の夕方、ナンシーは不機嫌な様子でティモシーの走らせる馬車に乗っていた。これから駅までパレアナを迎えに行くのだが、パレーが自ら行こうとしなかったことが不満なのだ。ティモシーはトムの息子だったが、父親同様、もしもパレアナが溌剌な子だったら、「パレーさまと騒々しい子供──こいつぁおもしろい組み合わせだなあ」と、至って気楽な様子だった。

さて、いよいよパレアナと対面したナンシーだったが、いきなり抱きつかれて驚いた。パレアナは「ああうれしい、おめにかかれてうれいい、うれしくてたまりませんわ」と、心底嬉しそうにまくし立てた。馬車に乗っている最中も、パレアナは息つく間もないほど、自分のトランクのことや婦人会のこと、服のことなどを話し続ける。その内ふと、ナンシーはパレアナが、自分を叔母と勘違いしていることに気が付き、自分はメイドのナンシーだと名乗った。するとパレアナは、初めは驚いたが、すぐに「あたしね、叔母さんが迎えにきてくださらなかったのがうれしいの。だって、まだこのあと叔母さんに会う楽しみがあって、あなたとはもう会っているんですものね」と笑った。

屋敷が見えてくると、パレアナはその大きさに驚き、それを喜んだ。パレアナは絨毯の敷いてある部屋や絵の飾ってある部屋に憧れていたのだ。そんな話を聞きながら、ナンシーはパレアナが不憫に思えてしょうがなかった。パレーがこの女の子に与えようとしているのは、絨毯も絵もない、殺風景な屋根裏部屋なのだ。ナンシーはティモシーに、「もうこれから金輪際、ひまをもらうなんて言いっこなしよ」と宣言し、パレアナに助けになってやろうと心に誓った。

四 小さな屋根裏の部屋
ナンシーと初めて会ったときのように、パレアナはパレーにも飛びついて、その喜びを声に出したが、パレーはそんな姪を冷たくあしらった。そして、父親の話をしようとしたパレアナに、「あんたのお父さんのことはわたしはあまり聞きたくないんだよ」と宣言する。パレアナはひどく落ち込んだが、すぐに「お父さんのことは聞きたくないと言ってくださるほうが、あたしにはらくなんだわ。話さないほうが我慢しやすくなるかもしれない」と、叔母の言葉を前向きに考えた。

パレーは落ち込むパレアナを屋根裏部屋に案内する。その最中、パレアナは綺麗な部屋を見て心をときめかせた。けれど、やがて飾りのない階段を上り、パレアナが案内されたのは殺風景な屋根裏部屋だった。パレアナは思わず呆然と立ちつくし、パレーが行ってしまってから、ついに泣き出した。けれど、ナンシーが来てからはすぐに気持ちを切り替え、鏡がなければソバカスだらけの自分の顔を見ずに済むとか、窓から見える景色が素晴らしいから絵がなくても平気だと言って、明るい発想をするのだった。

ナンシーはパレアナの言葉に思わず涙を零した。けれど、すぐにパレーに呼ばれて行ってしまう。一人残されたパレアナはしばらく窓から外を眺めていたが、やがて野原の向こうの小山に、一本松が寂しそうに岩の脇に立っているのを発見して、そこに行ってみたくなった。そして窓から外に出て、枝から枝に飛び移り、地面に降り立つと、その小山を目差してまっしぐらに駆け出した。

五 ゲーム
ナンシーがようやくの思いでパレアナのいる大きな岩までやってくると、パレアナは何事もなかったように窓から木を伝って下りたことを話し、ナンシーは唖然となる。それからナンシーは、パレアナが食事に遅れたので、パレーが姪に台所で自分(ナンシー)と一緒にパンと牛乳だけを食べるよう言っていたことを話した。ナンシーはそんなパレアナを可哀想に思っていたが、パレアナはそれを聞いてとても喜んだ。パンも牛乳も好きだし、ナンシーと食べられるのも嬉しいと言うのだ。

ナンシーがパレアナに、「あなたはなんでも喜べるらしいですね」と言うと、パレアナは「なんでも喜ぶ」ゲームの話をする。事の起こりは、昔人形が欲しかったのに慰問箱の中から松葉杖が出てきたとき、パレアナは非常にがっかりしたが、父親が松葉杖を使わないでもいいことを喜びなさいと言ったことだった。それからパレアナは、父親と二人で、ずっとゲームを続けていた。パレアナは一緒にゲームをやる相手が欲しくて、パレーに話してみようと言い、ナンシーは慌てて自分がチャレンジする約束をする。

さて、家に帰ったパレアナに、パレーは食事について聞いた。するとパレアナはパンと牛乳が嬉しかったと言い、それからパレーのそばにいるのが好きになりそうだと笑った。パレーはパレアナに罰を与えたつもりだったのに、逆に喜ばれて呆然となるのだった。

六 義務の問題
翌日、朝食の際に部屋にハエがいるのを見咎めて、パレーがナンシーを追求すると、パレアナがそれは自分のハエだと言い出した。昨日あまりの暑さに、網戸もない窓を開けて寝たのである。パレーは罰としてパレアナに、ハエの害について書かれた冊子を読ませたが、パレアナはこんな素敵なものは読んだことがないと喜ぶのだった。

パレーはそんなパレアナに、自分は義務を果たしているから、パレアナにも義務を果たすよう言い、網戸がつくまではどんなに暑くても窓を開けないことを約束させた。またパレーは、パレアナに学校へ行き、家にいる時は読書や料理や裁縫をするよう言いつける。パレアナはそれでは生きる時間──すなわち、好きなことをする時間がないと反論したが、パレーは勉強するのもまたパレアナの義務であると言って、申し出を突っぱねた。

最後に、パレーはパレアナに服を買うことを約束する。パレアナの服はどれもボロボロで、とてもハリントン家の人間として着られないようなものばかりだったのだ。パレーは姪に服を買い与えるのは自分の義務だと言い、パレアナは思わず顔をしかめた。パレアナは義務という言葉が嫌いだったが、一人になると、義務が終わったらどんなに嬉しくなるかと考え、声を立てて笑った。

七 パレアナと罰
パレーがパレアナに服を買い与えた日の午後、パレアナはベランダでナンシーと話をしていた。ナンシーは自分の名前が気に入っておらず、もっと可愛い名前がよかったとパレアナに愚痴をこぼす。するとパレアナは、「ヘプジバって名でなかったのを喜びなさいよ」と笑った。昔住んでいた村のホワイト夫人の名前がヘプジバと言い、彼女はその名前でひどく嫌な思いをしていたという。その話を聞いて、ナンシーは心が軽くなるのだった。

夜、窓を開けることを禁止されたパレアナの部屋はまるでオーブンのようで、パレアナはちっとも寝付けなかった。ふと小部屋の窓から外を見ると、パレーのサン・パーラーの屋根が実に気持ちよさそうに見え、ついにパレアナはそこで寝ることを決心する。

さて、パレアナがようやく寝ようとすると、下からトムやティモシーがやってきた。物音に気が付いたパレーが姪を泥棒と勘違いしたのである。パレアナの行動に呆れ返ったパレーは、パレアナに自分と寝るよう言いつける。パレーはそれは罰を与えたつもりだったのだが、パレアナは叔母と寝られることを喜び、またもやパレーを驚かせるのだった。

八 パレアナの訪問
パレアナは、パレーの計画通り勉強や裁縫、料理に励んだが、毎日午後はほとんど生きるための時間に使うことができた。そこでパレアナは、この時間を外に出て散歩に使った。人を見たり、会って話をするのが大好きなのだ。

パレアナは散歩の途中、「その男」と出会った。その男は長い黒いコートを着た紳士だったが、いつも一人でおり、パレアナは彼を気の毒に思っていた。そこでパレアナは、男に話しかけたのだが、彼は少女をまるで相手にしなかった。しかし、パレアナが毎日のように話しかけると、ついに男は足を止めて、咎めるように少女に何故話しかけてくるのかを尋ねた。パレアナは「さびしそうでしたから」と答えてから、足を止めてくれたことを喜ぶのだった。

さて、町にはスノー夫人という、病気で寝込んでいる貧乏な夫人がいた。パレーは自分の義務として、この夫人に毎週何かしら届けていたのだが、ある日パレアナがナンシーに、自分が届けに行きたいとせがんだ。スノー夫人と言えば、何もかもが気に入らず、文句ばかり言っている人だったので、ナンシーはパレアナを気の毒に思ったのだが、当の本人は「ふうがわりの人が好きよ」と喜ぶのだった。

さて、この夫人はパレアナがゼリー寄せを持っていったら、羊肉のスープがよかったと言い出した。けれどパレアナは事前にナンシーからその話を聞いていたので、笑って返す。他にも夫人は昨夜一睡もできなかったと愚痴をこぼしたが、これにもパレアナは、時間が無駄になるから、寝ずにいられるのは羨ましいと言うのだった。

部屋はカーテンが閉められ、暗かったのだが、スノー夫人はこの変わった少女を見たくなり、カーテンを開けさせた。するとパレアナは夫人を見て美人だと言い、髪をといて花をさしてやった。夫人はもう何年も自分を飾ったことなどなく、後からやってきた娘のミリーがそんな母親や、カーテンが開けられて明るくなった部屋を見て驚くのだった。

九 その男
パレアナは町で出会う「その男」にしょっちゅう話しかけた。男は初めはパレアナを無視していたが、ある時ついに怒り出す。けれど、パレアナの無邪気さと根気に負け、最後には打ち解けて少しずつ話をするようになった。

それを知ったナンシーが、パレアナに「その男」はペンデルトンの丘に一人で暮らしている、ジョン・ペンデルトンだと教えた。彼は滅多に人と話すことがなく、金持ちのくせに安いものばかりを食べてお金を貯めている。それに、戸棚には骸骨が隠してあるのだと言うと、パレアナはそれを本気にして震え上がった。

けれど、金を貯めているのはきっと外国伝道に寄付するためなのだと解釈し、ペンデルトン氏がよく旅行に行くという話を聞くと、彼は宣教師なのだと言い始める。最後には、ペンデルトンがいかに変わった人かを知り、そんな人間と話ができたことを喜ぶのだった。

一〇 スノー夫人の驚き
次にスノー夫人の許を訪れたとき、パレアナはかつてスノー夫人が欲しがったものをすべて持っていき、夫人を驚かせた。夫人は相変わらず機嫌が悪かった。ネリー・ヒギンスという人の音楽の練習が聞こえて、それがたまらなく苦痛だったという。

けれど、パレアナが音楽がやかましくても寝返りすら打てなかった人の話をしたり、ホワイト夫人がうるさい音楽でも聞こえるだけ幸せだと考えていた話をすると、スノー夫人はその話に興味を持った。ホワイト夫人の妹は耳が聞こえなかったのだ。パレアナはスノー夫人に「何でも喜ぶ遊び」の話をして聞かせた。すると夫人は人生が変わったように呆然となり、涙を零したのだった。

七月のある日、屋根裏にパレーがやってきた。パレーは屋根裏に置いてあったショールを取りに来ただけだったが、パレアナはパレーが自分に会いに来てくれたのだと思い、感激して叔母を部屋に招き入れる。それからパレアナは、今ではすっかり自分がこの部屋を気に入っている話をしたのだが、それがパレーには愉快ではなく、とうとうパレアナを下の部屋に移すことを決意した。

その知らせをナンシーから聞かされたパレアナは、すぐさまパレーの部屋に行って礼を言った。あまりの嬉しさにパレアナが音を立ててドアを閉め、椅子をひっくり返すと、パレーはそれをはしたないことだと叱る。パレアナは謝りながらも、叔母はそういうことがないのかと尋ねた。

パレーがないと答えると、パレアナは叔母を気の毒に思い、心底同情した顔付きになった。音を立ててドアを閉めるのは、嬉しくてとても静かにしていられないからである。それがないというのは、つまり嬉しいことがないということなのだ。パレアナの言葉に何か言おうとしたパレーだったが、すでにパレアナは部屋を飛び出していった後だった。姪の言葉にパレーは思い悩んだ。パレーにも、昔は嬉しいことがあったのだ。

一一 ジミーを紹介する
パレアナはパレーはこの世の中で最も親切な人だと思っていたから、時々道端で可哀想な猫や犬を拾ってきては、家で飼ってもいいかと尋ねた。パレーは猫も犬も嫌いだったが、パレアナの手にかかると、どうしても嫌と言えないのだった。けれど、パレアナがジミーという、家のない男の子を連れてきたときは、さすがに怒った。

ジミーは父親をなくした身寄りのない少年である。初めは孤児院へ行ったのだが、そこはすでにいっぱいで入る場所がなかった。仕方なく家々を回り、働くから置いてもらえないかと頼み込んだのだが、結局置いてくれる家はなく、途方に暮れていたところをパレアナと出会ったのだ。

パレアナは叔母がきっと置いてくれると思っていたが、パレーはジミーを乞食扱いし、終いにはジミーの方から怒って、「あんたは親切だよ!」と言い捨てて飛び出してしまう。パレアナはすぐに追いついて、今度は婦人会に相談してみることを提案した。ジミーは喜び、今夜は孤児院に戻ると行って別れた。

一二 婦人会で
パレアナがジミーのことをお願いしようと決意した日、運良くパレーは頭痛を患って婦人会を欠席した。パレアナは叔母に悪いとは思いながらも、それを知ってほっとしたのだった。パレアナの前ではもうジミーのことは話したくなかったのだ。

さて、パレアナは初めてこの町の婦人会の集まりに単身で乗り込み、ジミーを引き取ってもらえないかと持ちかけた。けれど、結果は思わしくなかった。引き取り手は誰もなく、気の毒に思った牧師夫人が、それならばインドの子供へ送る金を少し減らして、それをジミーに回そうかと言うと、さらに議論が紛糾した。

どうやらここの婦人会の人たちは、近くの子供を助けるよりも、遠くの子供を助けることの方が大切らしい。その理由は、小さな男の子を一人助けたところで、「すこしも報告が立派にならない」からだった。パレアナは悲しい思いで婦人会を後にし、ため息をつきながら家路についた。

一三 ペンデルトンの森で
婦人会の冷たい対応にショックを受けたパレアナは、真っ直ぐ家に戻るのが嫌で、ペンデルトンの丘に立ち寄る。パレアナはこの丘にある森に何度も来たことがあり、この美しい森が大好きだった。パレアナが嫌なことも忘れて歩いていると、突然彼女の前に犬が現れて吠え立てた。どうやらパレアナを呼んでいるらしい。その犬が、以前ジョン・ペンデルトンがつれていた犬だとわかると、パレアナは犬について行くことにした。

しばらく走ると、森の中でペンデルトンが倒れていた。どうやら誤って足を折ってしまったらしい。ペンデルトンはパレアナに屋敷の鍵を渡し、電話でチルトン先生を呼んでくれるよう頼む。パレアナはすぐに屋敷に行ったが、以前ナンシーから骸骨の話を聞いていたし、屋敷はひどく不気味に写った。それでも頑張って電話をかけると、パレアナはすぐにペンデルトンのところに戻り、チルトンが来るまでペンデルトンに膝を貸してやるのだった。

一四 ゼリー寄せだけのこと
ペンデルトンが足を折った翌日、パレアナがジミーに婦人会でのことを話すと、ジミーはやはりがっかりした。けれど、この町の婦人会の人が、近くのジミーより遠くの子供を気にするのなら、遠くの婦人会に手紙を出してみたらどうだろうかというパレアナの提案に喜び、またしばらく様子を見ることにする。

さて、ペンデルトンが足を折ってから一週間が過ぎた日、パレアナはいつもスノー夫人に持っていくゼリー寄せを、今回だけは「あのオジサン」のところに持っていきたいとパレーに訴えた。パレーは初め承諾したが、それがペンデルトンのことだと知ると、すぐに反対する。パレアナにはその理由がわからなかったが、最後にはパレーが折れる形になった。ただし、ゼリー寄せはパレアナからのものであって、絶対にパレーからだとは思われないようにすることを約束させらえる。

一五 ドクター・チルトン
パレアナがペンデルトンの家に見舞いに行ったとき、ペンデルトンは女中に誰にも会いたくないと言っていたため、門前払いに遭いそうになった。その時、ちょうど出てきたチルトンが女中を下げてパレアナを通す。チルトンはパレアナのことを患者の口から聞き知っており、一度じっくりと話したいと思っていた。

パレアナが部屋に入ると、ペンデルトンは不機嫌だった。足を折って不自由になったので、機嫌がいいはずがない。ところが、パレアナがスノー夫人のようにいつまでも寝たきりでないことや、看護してくれる女中や看護人がいることは喜ぶべきだと言うと、ペンデルトンの機嫌も少しは良くなった。

しかし、話がパレアナのことになり、彼女がパレー・ハリントンの姪であるとわかると、ペンデルトンは急に表情を険しくして青ざめた。パレアナは驚き、もうおいとますると告げる。

屋敷から出てきたパレアナを、チルトンが待っていた。パレーの屋敷までパレアナを送っていく最中、パレアナがふと、チルトンは医師であることを誰よりも喜ぶべきだと言い、チルトンは驚いた。医師という仕事は好きだったが、苦しむ人々をたくさん見なければならないこの仕事を嬉しいと思ったことはなかったのだ。ところがパレアナは、誰よりも人を助けることができるのは喜ぶべきだと言い、チルトンはその発想に感動するのだった。

一六 紅いばらとレースのショールと
ある雨の日、パレーは非常に不機嫌な様子で屋敷に戻った。パレアナが婦人会にジミーのことを頼みに行ったことで恥をかいたのだ。パレーはパレアナを叱ろうと思っていたが、パレアナはパレーの雨に触れた髪を見て喜ぶ。パレアナは、黒い、カールの髪が大好きだったのだ。

パレーが怒るのを聞きもせず、パレアナはパレーを座らせるとその髪を結い始めた。パレーは「なんでこんなバカなことをおまえにさせているんだろう」と思いながらも、大人しく座っていた。そして、鏡を見て、すっかり美しく飾られた自分の姿に頬を染める。

ところが、そのままサン・パーラーに出たとき、その姿をちょうどパレアナを迎えに来たチルトンに見られて、パレーは憤った。慌てて部屋の中に駆け込むと、パレアナが悲しむのを気にせず、髪をかきむしる。パレアナは何故急にパレーが怒ったのかわからず、立ちつくして悲しんだ。

チルトンは、ジョン・ペンデルトンの遣いでパレーの屋敷にやってきた。馬車でペンデルトンの屋敷に向かう途中、パレアナはパレーが急に機嫌が悪くなった話をする。チルトンはパレーを見て美しいと思ったことをパレアナに伝えたが、同時に自分がそう言ったことはパレーには言うなと言った。パレアナはなんだかよくわからずにため息をつき、後は屋敷に着くまで二人とも黙っていた。

一七 『本のように』
パレアナの訪問はペンデルトンを喜ばせたが、それはパレアナにとっても楽しい時間だった。帰り際、ペンデルトンはパレアナに、これからも遊びに来て欲しいと頼むと同時に、ある告白をする。それは、ペンデルトンは、パレアナの素性を知ったとき、本当は二度と見たくないと思ったということだ。パレアナを見ていると、彼が長年かかって忘れようとしていることを思い出してしまうらしい。

さて、屋敷に戻ってナンシーにこの話をすると、ナンシーはこのペンデルトンの「秘密」に興味を持ち、ついに一つの結論に行き着く。それは、パレーとペンデルトンが、昔恋人同士であったというものだった。以前トムが、パレーには昔恋人がいて、今でもこの町内に住んでいると言っていたし、二人が仲違いをした恋人同士ならば、これまでの様々なことに納得がいく。初めは信じられない面持ちだったパレアナも、最後にはナンシーの説に納得して、それならば二人が仲直りできればいいのにと思うのだった。

一八 プリズム
パレアナは、ペンデルトンに『遊び』のことを話していなかった。まだその時ではないと思っていたし、実際に何度か話しかけてみたが、父親の話になるとペンデルトンは話を逸らしてしまうのだ。

ある日、パレアナはペンデルトンの部屋で素晴らしいものを見た。それは、ガラスの寒暖計に太陽光が屈折し、綺麗な虹を作っていたのである。喜ぶパレアナを見たペンデルトンは、女中に言いつけて、窓に燭台のプリズムを吊るし、部屋中を七色の光で輝かせた。

パレアナは「太陽もゲームをしようとしているんですよ」と笑った。そして、ゲームを知らないペンデルトンに「喜びの遊び」のことを話す。ペンデルトンはその話を黙って聞いていたが、やがて「だが、一番上等のプリズムは、きみだ」と泣きそうな顔で笑った。

一九 ちょっとばかり驚いたこと
九月になり、パレアナは学校に通うようになった。パレアナには新しい友達ができ、彼らと遊ぶのに時間を費やしたが、決して古い友達も忘れなかった。と言っても、昔のように時間を割くわけにはいかず、それを寂しく思ったペンデルトンが、パレアナに「一緒に暮らして欲しい」と願う。

ナンシーの話を聞いて、ペンデルトンとパレーがかつて恋人同士だったと思い込んでいるパレアナは、パレーを一人きりにはできないから来られないと答えた後、パレーと一緒に二人とも迎え入れてくれればよいと言う。ペンデルトンは、家庭には婦人の手と心か、子供の存在が必要だと言ったが、そうすればどちらも手に入ると、パレアナは嬉しそうに言った。

二〇 もっと驚いたこと
ペンデルトンがパレアナに、家に来て欲しいと言った翌日、パレアナは街でチルトンに声をかけられた。ペンデルトンが呼んでいるから来て欲しいというのだ。パレアナは、ペンデルトンがパレーと自分を呼ぼうとしているのだと信じており、それを嬉しそうにチルトンに話したが、チルトンは複雑な顔をしただけだった。チルトンは、パレアナが勘違いしていることを知っていたのだ。

実際、ペンデルトンの口から告げられたのは、パレアナの思ってもいないことだった。ペンデルトンが長年かかって忘れようとしていたことは、昔ある女性を求め、結局手に入れられなかったことであり、その相手はパレーではなく、パレアナの母親のジェニーだったのである。ジェニーがペンデルトンではなく、ジョン牧師と結婚したことで、ペンデルトンはすっかり気落ちし、誰とも話さない気難しい人間になってしまったのだ。

話を聞いて、パレアナは愕然となったが、パレーと来られないのなら、改めて自分はペンデルトンの家には来られないと言う。けれどペンデルトンは、パレーは親切でパレアナを引き取ったわけではなく、義務で引き取ったのだと主張し、是非一度パレーに頼んでみるようパレアナに言って彼女を帰した。

二一 質問と応答
ペンデルトンの家からの帰り道、今にも雨が降り出しそうな天気だったが、パレーの家への中ほどまで来ると晴れ間が広がり始めた。その時、向こうから嬉しそうな様子でナンシーがやってきた。ナンシーは、パレーがパレアナを心配して、傘を持っていくよう言ったと言う。

パレアナはパレーを心配させて申し訳なく思ったが、ナンシーはそれが嬉しいと言った。それは、義務や責任一辺倒だったパレーが、ようやく人間らしい気持ちでパレアナに接し始めたのがわかったからだと言う。パレアナはペンデルトンの話を思い出し、もし自分がいなくなったらパレーはどう思うかとナンシーに尋ねた。ナンシーは寂しがるに違いないと答え、パレアナは喜んで、やはりパレーの側にいることを決めた。

しかし、パレアナはペンデルトンの身の上を十分承知していたので、彼を可哀想に思った。そして考えた末、ペンデルトンが孤児院にいるジミー・ビーンを引き取ることを思い付く。ペンデルトンは家庭には女の手と子供の存在が必要だと言っていたから、きっとジミーを引き取ってくれるだろう。そう思ってパレアナはその話を持ちかけたが、ペンデルトンはパレアナが来ないことに失望し、その話もろくに聞かずに突っぱねてしまった。しかし、パレアナが「生きてる、かわいらしい子供よりか、死んでる骸骨のほうがいいんでしょうね、おじさまは」と言うと、ペンデルトンは突然笑い出し、「きみの言うことは正しい」と言って、ジミーの話を聞いてみることにした。

二二 お説教と薪の箱
今、町の教会はひどい状況になっていた。教会の役員は喧嘩をする、熱心な婦人会員はつまらない理由で婦人会を脱退する、聖歌隊は分裂、日曜学校は校長以下二人の教師が辞表を出す始末。日曜日の礼拝はもちろん、週間の祈りの会も外国伝道のための茶話会も出席は減る一方。そんな状況に、ポール・フォード牧師は心を痛め、頭を悩ましていた。

パレアナがペンデルトンにジミーの話をした帰りのこと、フォード牧師は森の中で、次の日曜にいかなる説教をしたものかと悩んでいた。そして、「偽善な律法学者、パリサイ人たちよ」で始まる恐ろしい句を選び、それを言うかどうか迷っているところにパレアナがやってきた。

パレアナは苦しそうなフォード牧師を見て、昔父親もよくそうして悩んでいたことを話した。パレアナの父親はその時、聖書に『喜びの句』がなければ牧師などしていられなかったと言った。その話に興味を示した牧師に、パレアナは『喜びの句』の話と、何でも喜ぶゲームの話をする。牧師は、人にやる気を起こさせるのは、人がそれに喜びを見出すことであり、決して相手を批判することではないと悟り、日曜日の説教で読む句を変えた。「ただしき者よ、エホバを喜び楽しめ、すべての直き者よ、喜びよばうべし」

二三 交通事故
パレアナがスノー夫人の用事で初めてチルトンの診療所を訪れ、「これが先生のおうちなのね」と嬉しそうに言ったとき、チルトンは寂しげに、「ただいくつもの部屋があると言うだけさ──ホームじゃないね」と言った。パレアナはその時、チルトンもペンデルトンと同じように、昔誰かの心と手を欲しがった結果、断られてしまったのだとわかったが、チルトンはそれ以上その話を続けようとはしなかった。

さて、十月の末日、パレアナは自動車に撥ねられるという事故に遭い、意識を失ったままパレーの家に運ばれてきた。パレアナはウォーレン医師によって診察されたが、状況はあまり思わしくなかった。ウォーレン先生は、骨は折れてないし、傷も大したことはないと言ったが、難しい顔のまま「時がたたねばわからない」と言って帰っていった。

パレアナが気が付いたとき、部屋にはパレーと看護婦のハントがいた。パレアナは起き上がろうとしたが起き上がることができず、また足にまるで感覚がないことに恐怖を覚えて二人にすがりついた。パレアナはまた、明日にでも学校へ行きたいとせがんだが、ハントはそれは難しいと言ってからパレアナに沈静の丸薬を飲ませた。

二四 ジョン・ペンデルトン
パレアナは翌日も、その翌日も学校へは行けなかった。しかしパレアナは、自分は怪我をしただけで、病気ではなくて嬉しいと笑った。パレーが理由を尋ねると、パレアナは、足が折れただけなら、いつかまた歩けるようになるが、スノー夫人のように、病気では一生治らないからだと言った。パレアナは、自分の足が動かないのは、骨が折れているからだと思い込んでいたのだ。しかもパレアナは、自分が怪我をしたことで、パレーがいつも以上に優しくしてくれるのが嬉しいと言った。パレーは悲しみのあまり、もはやその場にいることができなかった。

その日の午後、ジョン・ペンデルトンがパレーの屋敷にやってきた。そのことにナンシーは驚愕する。と言うのは、ペンデルトンとパレーはもう何年も口をきいたことがなく、ナンシーはその理由も知っていたのである。姉のジェニーがペンデルトンではなく、牧師とともに町を出て行ってしまった後、パレーはペンデルトンを気の毒に思い、ペンデルトンによくしてやっていた。それが元で、パレーがペンデルトンを追いかけ回しているという噂が立ち、パレーは心を痛めてペンデルトンと口をきかなくなったのである。

そのペンデルトンがパレーの家にやってきたのは、もちろんパレアナの怪我のことを聞くためだった。パレーはパレアナが本当は脊椎に傷を負い、それが原因で半身不随になっていることと、本人はそれを知らず、足が折れただけでいつか治ると喜んでいることを辛そうに話した。ペンデルトンはそんなパレーの様子を見て、いつか自分がパレアナを幼女にしたいと申し出たことと、パレアナがパレーといたいからと言って断った話をする。ペンデルトンは話を終えると静かに立ち上がり、パレーもただ、何かわかったら連絡するとだけ言った。

二五 待つ遊び
パレーはパレアナのために、パレアナのような怪我に詳しいニューヨークの偉い医師を呼ぶことにした。ところがパレアナは、「あたし、チルトン先生にかかりたくてたまらない」と言い、パレーを困らせる。けれどパレーはうんとは言わず、その医師が都合で来るのが遅くなっても、決してチルトンだけは呼ぶまいとした。パレーはその他のことなら、パレアナのためにどんなことでもしてやるつもりだったが、チルトンを呼ぶことだけは嫌だったのだ。

実際、パレーはあれだけ嫌がっていた猫をパレアナの部屋に入れることも承知したし、一日中パレアナの側にいては、姪の喜ぶことをしたのだった。けれどパレアナは日々衰えていき、それでも決して笑顔は忘れずに、怪我が治ってからペンデルトンの家に遊びに行ったり、チルトンと馬車に乗ったりするが嬉しいと言った。パレアナは気が付いてなかったが、ナンシーはそれらの話がすべて未来のことであって、現在のことではないのに気が付き、一人の時にそれを思って泣くのだった。

二六 開いていたドア
ニューヨークからミード医師がやってきたのは、予定から一週間経った日のことだった。ところが、ミード医師の診断結果はあまりにも残酷なものだったので、パレーは思わず叫び声を上げた。「先生、それだけは! まさか──あの子が──二度と歩けないとおっしゃるのではございますまい!」

パレーと医師の会話は広間でなされていたのだが、不幸なことに、パレアナの部屋のドアはほんのわずかに開いており、パレーの叫びをパレアナは聞いてしまった。パレアナは寝室から「叔母さん──叔母さん!」と叫び、聞かれたことを知ったパレーは気を失って倒れてしまった。二度と歩けない状況で、一体どうやって喜びを探せばいいのかと途方に暮れるパレアナに、彼女の看護婦であるハントはかける言葉もなかった。

二七 二つの訪問
ナンシーからパレアナの怪我のことと、そのことをパレアナ自身が知っていることを聞かされたペンデルトンは、パレアナが不憫でたまらなかった。それにパレアナは、一生歩けないと宣告されてから今日まで、まったく喜びを見つけることができず、日々悲しみに明け暮れているという。そしてさらに、パレアナがジミーのことを気にかけていると聞かされたペンデルトンは、とうとうジミー・ビーンを引き取ることを決意する。それを聞いたパレアナが喜んだのは言うまでもない。パレアナはその話を持ってきた叔母に、チルトンもペンデルトンと同じように家庭を欲しがっていたことを話したが、パレーはなんだかそわそわするだけであまりその話には乗ってこなかった。

パレアナが怪我をして、一生歩けない体になってしまったことは、今や町中の人が知っていた。彼らは皆、パレアナのことも、彼女の『遊び』のことも知っており、あまりにも残酷な事態に涙した。そしてパレーの家に見舞いに訪れては、贈り物をしたり伝言を頼んだりしたのだった。

二八 『遊び』と『遊び』をする人たち
パレーの家には連日、パレアナに伝言を頼みたいという者が訪れた。その中には、パレーの知っている者もいたが、一度も会ったことのない者もおり、パレーはパレアナがどこで彼女らと知り合ったのか当惑した。訪れる者は皆、決まって『遊び』のことを口にし、今も『遊び』を続けていることや、喜んでいることをパレアナに伝えてくれるよう頼んだ。

パレーは『遊び』のことを知らなかったので、直接パレアナに聞き出そうとしたが、パレアナがひどく困った顔をするのでそれ以上言葉をつなげられなかった。しかし、ある時とうとう我慢できなくなり、ナンシーを捕まえて『遊び』について問いただした。ナンシーはわっと泣き出して、パレアナの『遊び』のことと、自分もそれをしていること、今や町のほとんどの人が知っていることを話した。

パレーは何故パレアナが自分には話してくれないのかと困惑すると、ナンシーはそれはパレーがパレアナに、父親のことを話すなと言ったからだと打ち明けた。パレアナは真っ先にパレーに話したかったのだが、『遊び』の話をすれば、どうしても父親のことも言わなければならない。だから言えなかったのだと言う。それを聞いたパレーはすぐにパレアナのところへ行き、これからすぐにでも自分も『遊び』をしたいと言って、パレアナを喜ばせた。

二九 開いた窓から
パレーが一緒に『遊び』を始めたことで、パレアナは元気を取り戻していた。今ではやはり歩けないスノー夫人同様、手と腕が自由であることを喜び、編物もしていた。けれど、容態の方は一向に良くならず、二度と歩けないというミード医師の診断は、ますます現実味を帯びてきた。

そんなパレアナの様子を人伝に聞きながら、チルトンは苛立っていた。しかし、とうとう我慢ならなくなってペンデルトンの家に行く。チルトンは、ペンデルトンにパレアナが歩けるようになるかも知れないと話した。彼の友人の医師が、パレアナによく似た症状の患者を治したというのである。けれど、チルトンはパレーと仲違いをし、十五年以上も会っていなかったし、パレーはチルトンを許していなかった。それに、まさか頼まれてもいないのに患者を診察に行くなど、医師としてできるはずもなく、チルトンはどうすることもできない現状をペンデルトンに訴えた。

誰かがパレーに、今の状況をわからせなければならない。ペンデルトンも話を聞いてそう思ったが、一体誰がその役を買うと言うのだろう。二人は頭を悩ませたが、ちょうどその話を庭で聞いていたジミーが、それこそ自分の役目だと嬉しそうに言って、二人に気付かれないように立ち上がり、さっさとパレーの家に向かって走り出した。

三〇 ジミーが舵をとる
ジミーはパレーの屋敷にやってくると、ペンデルトンの家で聞いた二人の話をパレーに話して聞かせた。パレーはその話を熱心に聞き、わずかに逡巡したが、すぐに顔を上げると、興奮した様子で、ジミーにチルトンを呼びに行くよう言った。

三一 新しい叔父
そもそも、パレーとチルトンの間には約束があり、パレーがチルトンを呼ぶことは、すなわち二人の結婚を意味し、それゆえ余計にパレーはチルトンを呼ぶことができなかったのである。今パレーがチルトンを呼んだのは、偏にパレアナのためだけでなく、チルトンと再びやり直す決意の表明でもあった。

いよいよチルトンがやってきたとき、その話を聞かされたパレアナは、チルトンが求めていた婦人の手と心というのがパレーだったことを知り、大いに喜んだ。足のことを忘れるくらい嬉しいと言ったパレアナに、パレーは、来週パレアナはえらいお医者様のところに旅行するのだと優しく言った。

三二 パレアナからの手紙
パレアナが病院へ行ってから十ヶ月の後、パレーとチルトンのもとに手紙が届く。それは、ようやく少しだけだが歩けるようになったと言う、パレアナからの報告の手紙だった。パレアナは今では、少しの間足が動かなくなってしまったことが嬉しいと言った。だからこそ今、こうして足がどれだけありがたいかわかるのだから!



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