エリックとエルメス 第1話『二人』


◆ 発端 ◆

水原「あのさ、雪島」
雪島「おう」
水原「突然だけど、TRPGやらん?」
雪島「はい?」
水原「いや、ザバダックの『harvest rain』口ずさんでたら、突然やりたくなった」
雪島「いや、まあいいけど」
水原「よしっ、じゃあ決まりね」
雪島「二人でするの?」
水原「う〜む」
雪島「う〜ん」
ほずえ「ふにぃ? 二人ともどうしたの? 唸っちゃって」
雪島「ほずえちゃん……か……」
ほずえ「ほずえちゃんだよ」
水原「まあ、いっか」
雪島「案外面白いかもよ」
ほずえ「??」
水原「んじゃ、決まり」
ほずえ「何が?」
雪島「ほずえちゃん。はいこれ」
ほずえ「?? サイコロですね」
雪島「ダイスだね。よりマニアックには、6面体ダイス」
水原「D6という表記をする。2つ振るときは、2D6という表記をする」
ほずえ「……で、これでどうするの?」
雪島「遊ぶの」
水原「そうそう」
ほずえ「…………」
雪島「まあ、手取り足取り教えてあげるから、安心してね」
ほずえ「わ、わかりました。よくわかんないけど、頑張ります」
水原「おう。まあ、所詮はゲームだから、そんな力まんでいいよ」
ほずえ「うん」

◆ キャラメイク ◆

雪島「キャラシ♪」
ほずえ「きゃらし?」
雪島「キャラクターシートのこと」
ほずえ「なるほど」
雪島「んで、どうするの?」
GM(水原)「ん。適当に」
雪島「ブラジャー。経験点は?」
GM「+8,000くらいにしよっか? まあ、ほずえも初めてだし、多少強い方が面白いだろ」
雪島「うにゅ」
ほずえ「いろんな職業があるー」
雪島「とりあえずファイターがいいよ」
ほずえ「そうなの?」
雪島「私がソーサラーやりたいから」
GM「(笑)」
ほずえ「なるほど(苦笑)」
GM「じゃあ、1つだけ。今回能力値だけど、とりあえずダイスを8回振って、好きなところに振り分けていいから」
雪島「ふ〜ん」
ほずえ「8回ね……」

 ということで、とりあえず8回振る。

ほずえ「8、9、6、5、4、12、5、9。まあまあなの? これ」
GM「まあまあ。通常だと、+3が1つもないからいまいちかも」
雪島「GM、振り直していいっすか?」
GM「ダメです」
雪島「しくしく」
ほずえ「どれどれ?」
雪島「5、6、7、7、11、8、5、5」
GM「平均6.75。今日は華麗に平均以下の日だな、きっと」
雪島「ういっす。まあ、平均5とかじゃないからいいや」
ほずえ「平均か。私、7.25」
GM「おお! 足すと、丁度7じゃん!」
雪島「おっ!」
ほずえ「すごいかも!」
雪島「とりあえず完成した」
GM「おう。リプレイ起こすときに、キャラシも載せるつもりだけど、一応宣言して」
雪島「うにゅ。名前がエリックで、人間・男、24歳。器用度10(+2)、敏捷度16(+2)、知力18(+3)、筋力11(+1)、生命力14(+2)、精神力15(+2)」
GM「ほずえは?」
ほずえ「エルメス・フィレン。人間・女、18歳。器用度14(+2)、敏捷度17(+2)、知力13(+2)、筋力18(+3)、生命力21(+3)、精神力13(+2)」
GM「二人とも、なんかこう、普通だな。俺だったら、絶対に13歳の少年とか、若い女の子とか……」
雪島「あなたとは違うから」
ほずえ「私、若いよ。ほら、18歳」
雪島「いや、この人(GM)の若いっていうのは、14歳とか15歳のこと」
ほずえ「変な人〜」
GM「しくしく」
雪島「うぃ。で、生まれは?」
GM「うぃ。適当でいい。貴族も可」
ほずえ「じゃあ、貴族」
雪島「魔法使いっと」
GM「技能宣言して」
雪島「ソーサラー3。ライトニングが使える」
GM「使い魔は?」
雪島「あっ! ごめん、忘れてた。後から考える。他は、シーフ2」
GM「回避用だな」
雪島「レンジャー1」
GM「いかにも経験点の端数処理って感じのレンジャー」
雪島「一々うるさいなぁ! あとはセージ1」
GM「付属品」
雪島「もうっ!」

 注:ソーサラーがあると、とりあえずセージが1ついてきます。

ほずえ「私、ファイター3、レンジャー2、セージ3、プリースト2」
GM「プリーストの信仰は?」
ほずえ「信仰?」
雪島「色んな神様がいる。はい、これ(『S.W.RPG完全版』を渡す)」
ほずえ「う〜ん。無難にマーファ」
雪島「無難だね」
GM「うんうん。ヤなプレイヤーは、ラックが欲しいだけのためにチャ・ザをとるからねぇ」
雪島「ああ、いるいる。チャ・ザ=ラックな人。どんな神様かも知らずに」
ほずえ「ラックって?」
GM「失敗ロールを、成功ロールにする魔法。一日1回使える。朝唱えておいてね。初めから精神力を1減らしておいて、『俺、毎朝ラックかけてます』というプレイヤーが後を絶たない」
雪島「(笑)」
ほずえ「よくわかんないけど、私は大丈夫」
GM「うぃっす」

 とりあえずキャラ完成!

雪島「ああ、使い魔だけど、ゲマということで」
GM&ほずえ「ゲマ!?(爆笑)」
雪島「そうそう」
GM「能力は?(笑)」
雪島「生命点5、精神点2、飛べる、喋れる(笑)」
GM「で、それ(ゲマ)は、一般にアレクラストにいる生物なの?」
雪島「いない」
ほずえ「どっから出てきたんだろう」
GM「湧いて出た?」
雪島「ある日、混沌の大地から飛んできた」
GM「(爆笑)」
ほずえ「先輩、面白すぎ!」

◆ プレイ開始 ◆

 ……はいいんだけど、実は何もシナリオを考えてない(爆)。まあ、なんとかなるだろう。NPCも作ってない(笑)。

GM「とりあえず自己紹介して」
エルメス(ほずえ)「はい。私は……名前がエルメス・フィレン。18歳です」
GM「ぴちぴち」
エルメス「貴族の生まれで、どこかズレてる。頭がちょっと固くて、融通が利かないところあり」
雪島「融通が利かないのね。_〆(。。 )メモメモ」
エルメス「タラント出身。タラントでは割と大きめのフィレン家の末女だったんだけど、父が病死してから、少しずつ財政が危なくなってきたの。そこで長男が借金して、家が崩壊。末女の私は、冒険者になり果てました」
雪島「ほずえちゃん、結構設定が過激……」
GM「おう。素質を感じる。んじゃ、雪島は?」
エリック(雪島)「エリック。一人称……まあ、私でいいや。男の人が使う、丁寧な“私”ね。昔、とあるミッションで、自分以外のパーティーをすべて失ったことがある。そのときに最愛の人も亡くしてしまった」
エルメス「十分過激じゃん」
エリック「エルメスとはタラントで会った。ちょうど彼女が路頭に迷っていたところで知り合ったんだけど、この子が昔のその女性に似ているとか(笑)」
GM「自分のことだろ!」
エリック「げふっ。それで、エルメスだけは守ってあげようと」
GM「了解。二人の関係は?」
エリック「肉体関係」
エルメス「ただの仲間です」
エリック「しくしく」
エルメス「なんか、お兄ちゃん(GM)とプレイしてるみたいだよ、この人(雪島)」
GM「ナイスだ、雪島!」
エリック「みぅ」

 それでは、始まり始まり〜♪

GM「今君たちは、ドレックノールの追っ手から逃れて、ザーンを越え、ベルダインに来ました」
エリック「ちょっと待て。何で俺たちが追っ手に追われてるんだ? あっ、“俺”になった(笑)」
GM「その方が面白いから(爆)。大丈夫。別にドルコンとかジェノアの直接の恨みを買ったわけじゃないから。その下っ端の下っ端くらいの、個人的な恨みを買っただけで、特に何かすごい秘密をつかんだとかじゃない。『ああ、ここまでくれば大丈夫だろう。へへんだ』って感じ」
エルメス「ジェノアって誰?」
GM「うぃ。セージで振って」
エルメス「どうすればいいの?」
エリック「2D6+セージレベル+知力ボーナス」
エルメス「にゅ。6+3+2で11」
GM「じゃあ、知らないことにしておこう。プレイヤーには教えると、ドレックノールという街の、盗賊ギルドの影の長だな」
エリック「初めっから、プレイヤー質問じゃなかった?」
GM「俺も後からそう思った。まあ、ロールの練習ということで」
エリック「了解」
GM「とりあえず、ベルダインにやってきた。時刻は夕方。街は夕飯の買い物客と、その客をターゲットにした市で賑わってます」
エリック「やっと着いたな、エルメス。疲れてないか?」
エルメス「はい。大丈夫です。貴方は大丈夫ですか?」
エリック「疲れた(笑)」
エルメス「弱ひ……」
エリック「腹減ってないか? 久しぶりに美味いもんが食えるぞ」
エルメス「……お腹は空いてますが、あんまりそういうことを女性に聞かない方がいいですよ、エリックさん」
エリック「にゅ」
GM「『にゅ』とか言うな!」
エルメス「(笑)」
エリック「どこか店を探そう」
GM「何屋?」
エリック「甘味」
エルメス「それ、夕食?」
エリック「おやつ」
GM「プレイヤーとキャラクターがごっちゃになってる(笑)」
エリック「俺、実は甘味が好きなんだ」
エルメス「そ、そうなんですか……。疲れたときにはいいかも知れませんね。知らないけど」
エリック「ということで、甘いもん食いてぇ」
GM「右手にケーキ屋さん、左手に饅頭屋さん」
エルメス「時代背景が滅茶苦茶(笑)」
エリック「じゃあ、先にケーキ屋さん」
エルメス「両方行くのね?」
エリック「当然♪」
GM「『いらっしゃいませ』」
エリック「ショコラ」
エルメス「モンブラン」
GM「『こちらでお召し上がりですか?』」
エリック「イエス」
エルメス「キリスト」
エリック「つまんない」
エルメス「マーファ信仰だった」
エリック「(苦笑)」
GM「『ご一緒にポテトはいかがですか?』」
エルメス「い、いらない」
エリック「欲しい」
エルメス「変だー! 絶対にこの人、おかしい」
エリック「言うな、エルメス。色々あるんだ。男の事情」
GM「男としては複雑だよ、雪島君」
エリック「いやいや」
GM「『それでは、全部ひっくるめて、20ガメルになります』」
エリック「はい」
エルメス「ガメル?」
エリック「お金の単位。ゴールドとか、ガバスの親戚」
GM「ガバス……」
エルメス「とりあえず食べる。美味しいですね、エリックさん」
エリック「黙々と食べてる」
エルメス「……貴方は色気より食い気なのですね……」
GM「そういう台詞の出る貴族の娘なのね(笑)」
エルメス「毒されたらしい」
エリック「はぁ、食った食った。おお、エルメスはもう食い終わってたんだな」
エルメス「は、はい……」
GM「早くも、性格が固定されてきたな」
エリック「いや、プレイヤーが個性的だから」
エルメス「(苦笑)」
GM「自分で言うか、その台詞!」
エリック「次は饅頭だぞ、エルメス」
エルメス「いえ、私はもう結構です。それより、早く宿をとって休みませんか?」
エリック「饅頭怖い?」
エルメス「??」
GM「ジェネレーションギャップじゃないか? 今の」
エリック「わかんなかったの?」
エルメス「ごめんなさい。キャラクターは知ってるかも。(ころころ)セージで10」
エリック「振るか!?」
GM「知ってることにしよう(笑)。よく覚えてないけど、何かつまみ食いしたんだか、とりあえず食べ物関係で悪いことをしたやつを、こらしめようとした人がいて、そいつが、『饅頭が怖い』と言った」
エリック「それで、饅頭ばかりの部屋に入れられて、しばらくしてから見てみると、その人が『饅頭怖い、饅頭怖い』って言いながら、饅頭をバクバク食べてたお話」
エルメス「……それを、プレイヤーは知らなくて、キャラクターが知ってるのね?」
GM「ダイス振ったの、お前だろ!」
エルメス「しくしく」
エリック「じゃあ、とりあえず店を出て宿を探します」
GM「ベルダインと言ったら……」
エリック「<白い貝殻亭>」
エルメス「??」
エリック「その内わかるようになるから気にしないで」
エルメス「ラジャー」
GM「んじゃ、そこに着いた」
エリック「世話になりたい。部屋は空いているか?」
GM「若い娘さんが出てきて、『一人部屋を二部屋ですね?』」
エリック「付加疑問文かい! 普通、逆だろ」
GM「じゃあ、君がそういうと、若い娘さん、頬を赤らめて、『きゃっ。じゃあじゃあ、夫婦部屋ですね?』」
エリック「普通に、二人部屋と言えんのか!」
エルメス「(爆笑)」
GM「『わかりました。空いております』」
エリック「うむ。大儀である」
エルメス「休みたい」
GM「じゃあ、二階の部屋に案内される」
エリック「罠感知」
GM「ダイス振って」
エリック「冗談だ」
エルメス「どんな部屋?」
GM「質素だよ。木製で……当たり前だけど、小さな丸テーブルが一つと、小型のベッドが二つ。壁には、安物だろうけど、竜と戦ってる冒険者たちの絵が飾ってある」
エルメス「素敵ですね、エリック」
エリック「あ、ありがとう」
エルメス「違う! 絵!」
エリック「あ、ああ」
GM「今の、マジだろ、雪島」
エリック「げふっ」
エルメス「しくしく」
GM「んじゃ、どうする?」
エリック「少し休んでから、下に行ってご飯を食べる」
エルメス「そうしたいです」
GM「じゃあ、少し休んだ。時刻は、日本時間の7時頃ということにしよう。君たちが部屋を出て下に行くと、結構盛り上がってる。席も、相席じゃないと空いてない」
エリック「混んでるなぁ」
GM「その呟きを受けて、さっきの娘さん参上。『はい。おかげさまで』」
エルメス「席はありますか?」
GM「『空いてるところはすべて座れます』」
エルメス「どこが空いてる?」
GM「暗い顔で酒を飲んでる若い男女の冒険者風のテーブルに丁度2席と、完全にできあがったおじちゃんと、その人率いる中年野郎パーティーのテーブルに2席」
エリック「俺は、明るい方がいいな。まあ、過去が過去だし」
エルメス「私、エリックの過去は知ってますか?」
エリック「話したことにしよう。前に、ドレックノール辺りで」
エルメス「じゃあ、暗い方はやめて、明るい方に行きます。苦手だけれど」
エリック「席、いいか?」
GM「『おう、いいぜ。だが、どうぜなら、そっちの可愛い娘っこをこっちの席に座らせてくれるとありがたい』」
エリック「そうしたら酒をおごってもらえるなら考えよう」
エルメス「私はイヤです」
GM「『酌もつけろ』」
エリック「よかろう」
エルメス「私はイヤですってば!」
エリック「諦めてくれ」
GM「『きひひ、かわいこちゃん〜』」
エルメス「さ、触らないで下さい」
GM「そうやって、君たちが楽しんでると……」
エルメス「楽しんでない!」
GM「注文聞きが来る。さっきとは違う女性。快活そうなおばさん。『どうすんだい?』」
エリック「こっち(おじさんたち)からエール2つ。まず持ってきてくれ」
GM「『あいよ』」
エルメス「ちょっと、エリック。私はお酒は飲めません」
エリック「いや、酒が飲めるのは、冒険者の必須技能だぞ」
エルメス「うぅ……」
GM「じゃあ、おじちゃん。『なんだい? 嬢ちゃん。酒はダメか?』」
エルメス「息をよけながら、え、ええ。困ったように愛想笑い」
GM「『かぁーー! こんなうまいものがダメとは、相棒のよれよれ魔法使いが弱いから、嬢ちゃんもダメになっちまったんだ、きっと』」
エリック「聞き捨てならんな」
GM「『ん? お前が飲めれば、相方も飲めるようになるもんだぞ。見ろ、俺たちの周りは、みんな飲める』無茶苦茶な理論(笑)」
エリック「そうか……」
エルメス「うわっ、納得してるし」
GM「『お前が飲めるかどうかは、嬢ちゃんが飲めるかどうかで判断しよう』」
エリック「いいだろう。飲めよ、エルメス」
エルメス「貴方たちは……貴方たちは……(涙)」
GM「エール登場! 『はいよ、おまちどうさん』(エルメスに)飲む?」
エルメス「飲みます。グビグビ」
GM「『うまいか? ん?』」
エリック「どうだ?」
エルメス「ぷはぁーっ! ふわふわ」
エリック「どうなったの? エルメス」
エルメス「う〜ん。酔った」
エリック「じゃあ、もう一杯」
エルメス「グビグビ。くらくら」
GM「『こっちからも。ほれ』」
エルメス「グビグビ」
エリック「うわー。エルメスが青くなってきた」
エルメス「グビグビ」
GM「『おいおい。やばいんじゃねーか?』」
エルメス「グビグビ」
エリック「ストップストップ!」
エルメス「ばたっ!」
エリック「あわわ」
GM「『がはははは。まあ、若いうちは、酒に倒れるのもいいだろう』」
エリック「とりあえず部屋に運ぼう。ああ、飯食いそこねた」
エルメス「う〜ん」
エリック「部屋に戻って寝かせます」
エルメス「うぅ……吐く……」
エリック「ここでは吐くな!」
エルメス「うっ……」
エリック「わー、わーー」
GM「すごい光景だ」
エリック「激しく後悔。トイレで吐かせてこよう」
GM「可哀想な貴族の少女(笑)」
エルメス「長男が悪い」
エリック「やれやれ」

 ちょっと話を進めよう(笑)。

◆ エルフたち ◆

エルメス「二日酔いで、2、3日ダウンしていました」
GM「じゃあ、4日後くらい」
エリック「エルメスは部屋に残しておいて、とりえずマスターに、仕事があるか聞こう」
GM「『仕事?』」
エリック「ああ。冒険者だからな」
GM「『ふ〜む。お前らのレベルの仕事か……。二人パーティーとはいえ、それなりに強そうだからな』」
エリック「強いぞ(笑)」
GM「『今のところ、護衛とか、荷物運びしかない』」
エリック「そうか……」
GM「『ああ、ワイト退治なんてのがあるぞ』」
エリック「ワイト? (ころころ)セージで11」
GM「知名度12です」
エリック「げふっ。残念」
GM「『ワイトを知らないのか?』救いの手」
エリック「生憎な。知る機会に恵まれなかった」
GM「『ワイトってのは、人に取り憑くアンデットだ』」
エリック「アンデットか……。銀がない」
GM「『最近、ベルダインの西方でこの事件が起きている。依頼主はリンディというお偉様で、すでにいくつかのパーティーが引き受けてるぞ』」
エリック「う〜ん。ちょっとパスさせてもらおう」
GM「『そうか?』」
エリック「ワイトも知らなかった状態で望むのは危険だ。慎重でなければ、良い冒険者にはなれない」
GM「『わかった。ただし、今は他にいい仕事はないぞ』」
エリック「ありがとう。とりあえず、急に金が必要なわけじゃないから、また今度でいいぜ」
GM「じゃあ、どうする?」
エリック「部屋に戻って、エルメスに報告」
エルメス「そうですか。お仕事、ありませんでしたか」
エリック「ああ」
エルメス「まあ、仕方ありませんから、とりあえず街見物でもしませんか? 私、ベルダインは初めてなんです」
GM「(エリックに)初めて?」
エリック「いや、3回目」
GM「じゃあ、色々知ってるね」
エリック「よしっ、じゃあ、いいところに連れていこう」
エルメス「Hなところはダメですよ?」
エリック「(爆)。行かない行かない」
GM「素で悠理さんをやってのけたか」
エリック「じゃあ、街に出る。だいぶ遠いけど、ぶらぶら歩きながら、<ブティック・ノアール>にでも行こう」
エルメス「<ブティック・ノアール>というのは、どういうところなんですか?」
エリック「服が売っている。冒険者用のものもあってな、おしゃれで実用的なものも多数取り揃えてございます」
エルメス「なんだか楽しそうですね」
エリック「エルメスに似合う服があったら、買ってやるぞ」
エルメス「あ、ありがとうございます!」
GM「(笑)」
エリック「じゃあ、そんな会話をしながら、のんびりと旧市街の方へ歩いていきます」
GM「うぃ。それでは、大体昼頃、旧市街に入りました」
エリック「目的地はもうすぐだ。疲れてないか?」
エルメス「これくらいで疲れていては、冒険者にはなれません」
エリック「そうか。俺は疲れたぞ」
エルメス「エリックさん……(困)」
GM「一応、エリックがシーフで、エルメスがファイターだもんね」
エリック「じゃあ、目的地に行きます」
GM「うん。じゃあ、目的地の<ブティック・ノアール>が見えてきたとき、ふと、路地裏から声が上がる」
エリック「どんな?」
GM「若い男の声。『もうやめてくれ! 放っておいてくれ!』」
エルメス「触らぬ神に祟りなし。行きましょう、エリックさん」
エリック「いや、それはいい冒険者とは言えない。仕事の匂いがしたら、まずとりあえず様子を見る」
エルメス「それもそうですね。ごめんなさい」
エリック「いや、構わない。<ブティック・ノアール>が楽しみだったんだろ?」
エルメス「えっ? あ、はい……」
エリック「よしよし。心配するな、店は逃げない」
エルメス「ふふふ。ありがとう、エリックさん」
GM「…………」
エリック「どうしたの? GM」
GM「いや、なんか、いいなぁと思って」
エルメス「(笑)」
エリック「裏路地に入って、様子を見ます」
GM「こりゃびっくり」
エルメス「私はびっくりしてない」
GM「まだ続くの! 見ると、数人のエルフ」
エルメス「エルフ?」
GM「エルフだな。男も女もいて、大体四人くらい。好戦的な目で睨み付けるその先に、二人の男女がいる。一人がエルフの少女。地面に倒れているけど、気丈にもエルフたちを睨み付けている。足をくじいているようだ。男の方は、なんか弱々しい感じの男だけど、エルフの少女の前で手を広げて立ちはだかってる」
エルメス「駆け落ち〜」
エリック「駆け落ち〜」
GM「元も子もないな。まあ、行き当たりばったりのシナリオだし(爆)」
エリック「もう少し様子を見る。一体、何を言い合っていて、誰が何をしようとしているのか」
GM「じゃあ、エルフたちが言う。『さぁ、大人しくフレミンをこっちに渡せ』フレミンってのは、少女エルフのことらしい。フレミンが言う。『いやよ。私はイルウィンと結婚するの!』イルウィンというのは、手を広げて震えている男のことらしい。イルウィンが言う。『フ、フレミンは渡さない!』」
エリック「駆け落ち〜」
エルメス「駆け落ち〜」
GM「ヤなプレイヤーだ(笑)。エルフたちが言う。『我々は自分たちの掟のためなら、人間を一人殺すなど、気にもしないぞ?』」
エリック「ダークエルフみたいな台詞だ」
エルメス「穏やかじゃないですね」
GM「それを聞いた二人が、青ざめる。『やめて!』これはフレミン。『最後の質問だ。フレミンを渡してもらえるかな?』どうする?」
エリック「まだいかない」
エルメス「臨戦態勢。ほずえちゃん、初戦闘体験、わくわく」
エリック「距離と状況をしっかり教えて」
GM「了解。君たちは今、細い路地にいる。一列に並んでいるから、両方同時には飛び出せない。路地の先には広くなっている箇所があって、そこに彼らはいる。広さは大体5m四方。君たちのところからエルフたちまで7m。君たちは箱の陰にいて、彼らは君たちに気付いていない」
エルメス「相手の装備は?」
GM「なし。だけど、当然だけど精霊魔法がある。男が二人、女が二人」
エリック「例の二人は役に立ちそう?」
GM「男は無理(爆)。女は仮にもエルフとだけ言っておこう」
エリック「う〜む」
エルメス「どうする?」
エリック「敵の女エルフが両方ともレベル3以上あったら、たぶん戦闘が終わらないか、こっちが負ける」
エルメス「フレミンは、ヒーリング使えないのかなぁ? 怪我したまま倒れてるけど」
エリック「怪我してるのが痛い。逃げられるか?」
エルメス「GM。ここから通りまでは?」
GM「15m」
エルメス「通りまで出ちゃえば、たぶん大丈夫」
エリック「難しい。相手の敏捷度は?」
GM「秘密」
エリック「とりあえずエルメスにプロテクションかけられる?」
GM「許可しよう」
エリック「じゃあ、かける。エルメス、ダメージ1点減ね」
エルメス「了解」
GM「じゃあ、おっぱじめよう。イルウィンが『断る!』と言った瞬間、エルフたちが襲いかかる」
エリック「その一テンポ前に飛び出す」
エルメス「1ラウンド目でいく」
GM「了解」

fig.1 戦闘配置図


<1ラウンド目>

GM「エルフはA、B、C、Dで、AとBが女。行動順は、C、エルメス、エリック、A、B、Dね」
エリック「了解」
GM「Cはとりあえず、イルウィンにウィスプ飛ばす。『うわぁ』」
エリック「うわぁ、じゃねぇ!」
GM「いきなりやばそう」
エルメス「一般人め!」
エリック「しまった!」
GM「どうした?」
エリック「カンタマかけ忘れた」
GM「(爆笑)」
エルメス「とりあえず、一般人(笑)をかばいつつ、Dに斬りかかる。8は14」
GM「うぃ」
エルメス「6は11点」
GM「半分くらい減った」
エリック「う〜んとねぇ」
GM「何かたくらんでるね?」
エリック「う〜ん。ファイア・ウェポンは目立つから無理としても、エンチャント・ウェポンとかもかけておけばよかった」
GM「久しぶりだからね〜」
エリック「とりあえずダークネスかなぁ。ああ、でもウィスプであっけなく霧散しそう」
GM「くくく……」
エリック「はぁ……。結局スリープ・クラウドになるのね……」
GM「どうぞ」
エリック「集中してかける……できたっけ?」
GM「忘れた。できたと思う」
エリック「うぃ。お願いします……(ころころ)げふっ! なんで4とか出るのかな!」
GM「集中って、色んな種類があって、2回振って大きい方を取るとかなかった?」
エルメス「マジ?」
エリック「そんな気がするような、しないような。違うところだった気もするし」
GM「まあいいや。あったことにしよう」

 嘘です。ごめんなさい。
 魔法の拡大と勘違いしていたらしい。しかも、ダメージのロール……。

エリック「ありがとう。また7割ったりして。(ころころ)……」
エルメス「…………」
GM「…………」
エルメス「……5に見える……」
エリック「しくしく。8でクラウド」
GM「寝た、抵抗、抵抗、抵抗。ちなみに、A以外の3人、出目だけで抵抗♪」
エリック「泣きたい」
GM「Aは寝てる。(ころころ)起きた」
エリック「しくしく」
GM「B。『お前たち、邪魔をするな!』エリックにシェイド」
エリック「GM、あんた鬼!」
GM「12」
エリック「なんとか抵抗」
GM「5発」
エリック「2点受けた。あと10か……」
GM「Dはエルメスに……」
エルメス「ブラウニー?」
エリック「(爆笑)」
GM「ちゃう! スネア……10」
エルメス「(ころころ)」
エリック「!!」
GM「きたきたきたきたきたきたきたー!!」
エルメス「初ゾロ。10点ください」
GM「転べ転べ」
エルメス「しくしく」

 どうでもいいけど、こいつら、ダイス目が悪すぎ。

エリック「GM、フレミンは?」
GM「ああ、ごめん、忘れてた」
エリック「頼むて」
GM「ヒーリング、自分」
エリック「ほっ。じゃあ、次のターンは、ブラストが飛ぶね」
GM「さぁ」

<2ラウンド目>

 丁寧にリプレイ起こしすぎかも。
 まあいいや。

GM「Cは貧弱ソーサラーにシェイド。12」
エリック「12、抵抗」
GM「4点」
エリック「痛くないな」
エルメス「起きる(泣)」
GM「フレミンはサイレンス……」
エリック「おっ、偉いぞ女の子!」
エルメス「わけわかんないよ」

 これに、誰も抵抗できず。

エリック「うしっ」
エルメス「他力本願。私たちは何もしていない」
GM「『くそぅ』そう吐き捨てて、彼らは向こう側の路地から逃げようとします」
エルメス「追いかける」
エリック「止める」
エルメス「なんで?」
エリック「サイレンスは効果が範囲だから、追いかけたらやられるだけ」
エルメス「なるほど〜」

 とりあえず戦闘終了〜♪

◆ フレミンとイルウィン ◆

エルメス「大丈夫ですか?」
GM「君がそう言うと、イルウィンが答えます。『は、はい。ありがとうございました』ちなみに、フレミンはイルウィンにヒーリングをかけている」
エリック「とにかくここは危険だ。安全な場所までいこう」
GM「二人は頷きます」
エリック「じゃあ、とりあえず路地まで」
GM「路地にはたくさん人がいる。まあ、冒険者もたくさんいるから、さほど君たちの方を変な目で見るヤツらもいない。エルフも珍しくない」
エリック「イルウィンさんは、この街の人かい?」
GM「『あっ、はい。旧市街で、野菜屋を営んでおります』」
エリック「ほほぅ。それで、二人の馴れ初めは?」
GM「そう聞くの? いきなり」
エリック「和むため……和むため……」
エルメス「明らかに、エリックの趣味ですね」
エリック「そ、そんなことはない!」
GM「じゃあ、二人は一度顔を見合わせてから、『その、私が怪我をして困っていたところを、助けていただいたのです』」
エリック「なるほど」
エルメス「ありがちですね」
GM「そうだね(笑)。いやいや」
エリック「とりあえず、イルウィンさんの家に行けますか?」
GM「『はい、構いません』」
エリック「じゃあ、行くことにしよう」
エルメス「<ブティック・ノアール>が遠退いていく……」
エリック「また後でね。どうせ行くことになるから」
エルメス「そうなの?」
GM「じゃあ、イルウィンの家だ。野菜屋といっても、小さな店で、主に朝市とかで商売するのがメイン。朝夕、一日2回、市に店を出しに行く。『拙宅ですが、お上がり下さい』」
エルメス「ご丁寧にありがとうございます」
エリック「うむ。大儀である」
GM「じゃあ、部屋に通されて、落ち着いたことにしよう。君たちは二人ずつ向き合っていて、フレミンはイルウィンの斜め後ろの位置にいる」
エリック「よければわけを聞かせてくれないか?」
GM「顔を見合わせて悩んでいる模様」
エルメス「事情はわからないとはいえ、首を突っ込んでしまった以上、もはや他人事ではありません」
エリック「それに、一応エルフを数人敵に回してことにもなる。事情がわからないと、こっちは安心して寝て良いのかもわからん」
GM「じゃあ、フレミンが話し始めよう。『実は私は……エルフなんです』」
エリック「見ればわかります(笑)」
エルメス「それで『ドワーフです』とか言われたら、確かに『実は……』ですね」
GM「『ここから北西に行ったところに、イムランの森という森があるのをご存じですか?』」
エリック「知らない」
エルメス「知らない」
GM「こらこら。今俺が作った森なんだから、プレイヤーが知ってるわけないじゃん。頼むから、ダイスを振ってくれ」
エリック「セージで9」
エルメス「……10点ください」
エリック「(笑)」
GM「本当は、こういうところのロールは経験点、入らないんだけど、特別にあげよう(笑)」
エルメス「わーい。20点(涙)」
GM「じゃあ、二人とも見たことも聞いたこともない」
エリック「すまないが、聞いたことがない」
GM「『そうですか。イムランの森はとても深い森で、奥に行くと、昼でも光が届きません。でも、そこをさらに抜けて進むと、スウェンという、エルフたちの小さな集落があるのです』」
エリック「スウェン……集落ね。_〆(。。 )メモメモ」
GM「話し手がイルウィンに。『そこのエルフたちは、大の人間嫌いなんです。それで、人間は敵という観念があって、人間と親しくするものは、裏切り者扱いされて、村のことが伝播しないよう、口封じされるそうです』」
エリック「なるほど。それでさっき、殺されそうになってたんだな」
エルメス「なるほど」
GM「そう、気軽に『殺されそうになってたんだな』って言われても」
エリック「いやいや」
GM「『でも、少し違うんです』これはフレミン」
エリック「と、言うと?」
GM「『彼らは、私を殺せないの』」
エルメス「偉い人なんですね?」
GM「『彼女は、長の娘なんです』」
エリック「なるほど。じゃあ、長の娘なら、一番一族を説得させやすい立場であることもまた事実だろう」
GM「『それがそんなこともないのですよ……』」
エリック「そうなの?」
GM「フレミンの話だと、逆に一族のリーダーの肉親が、一族を裏切る行為をすることは許されないとさ」
エリック「なるほど」
エルメス「どうしよう……」
エリック「う〜ん。二人はどうしたいの?」
GM「悩んでます」
エリック「わかりやすい」
エルメス「でも、二人がここで暮らしたいのなら、長を説得するしかないでしょう」
GM「『けれど、とても納得させられるとは思いません。それに、戻ってしまったら、恐らく彼女はもう二度と外には出してもらえないでしょう』」
エリック「確かに。じゃあ、二人で逃げては?」
GM「『この家を捨てることはできません』これはイルウィン。『私には姉や弟がいますから』」
エリック「やっぱり説得させるしかないね」
エルメス「でも、どうやって?」
エリック「どうしようかなぁ」

 二人、しばらく考える。
 結局、いい案が思い付かず、一旦退くことにした。

エリック「それじゃあ、また明日来る。そう言って家を出よう」
エルメス「また明日」
GM「『はい……』」

◆ <ブティック・ノアール> ◆

エリック「さて、どうしたものかなぁ。GM、時間は?」
GM「夕方近く」
エリック「<ブティック・ノアール>に行ってたら、宿には戻れないかな?」
GM「そんなことはないけど、新市街まで結構時間がかかるから、明日困るかもね」
エリック「じゃあ、ゲマを飛ばして、帰れない旨を伝えよう」
エルメス「出た、ゲマ!」
エリック「ゲマは人語を操る」
GM「了解(苦笑)」
エリック「じゃあ、エルメスを<ブティック・ノアール>につれていこう」
エルメス「わぁ! ありがとう、エリックさん」
エリック「約束だからな」
GM「着いた。冒険者用のものもあるとはいえ、一般人向けのものもあるから、色んな人で賑わってるよ」
エリック「入ろう」
エルメス「ねえねえ、エリックさん。私、少し店内を見てきてもいいですか?」
エリック「ああ。少しじゃなくてもいいぞ。俺も少し用があるから」
エルメス「はい!」
エリック「ということで、エルメスと別れたから、ギルドへ行きます」
GM「にゅ」

 注:<ブティック・ノアール>は、盗賊ギルドというもう一つの顔を持っているのです。

GM「過去に来たことある?」
エリック「ある」
GM「了解。でも、今その時の店員はいないようだ」
エリック「じゃあ、そこら辺の店員を引っ捕まえよう」
GM「『いらっしゃいませ!』」
エリック「合い言葉、合い言葉。『乃絵美LOVE、LOVE、乃絵美LOVE、合わせてLOVE、LOVE、乃絵美LOVE』」
GM「『はい?』」
エリック「しくしく」
GM「いや、なんかないの? こう、格好いい合い言葉」
エリック「ない」
GM「はぁ。じゃあ、『……こっちだ……』と言われて奥に通される。ギルドマスターはさすがに出てこないけど、君が過去に一度あったことのある幹部の人が出てくるよ」
エリック「よぉ。久しぶりだな」
GM「でかい口叩くなぁ(笑)。とりあえず、こういう人たちは人を覚えるのの天才だから、当然覚えている。『よぉ。エリックだっけか? 1年ぐれぇ前に会ったな』」
エリック「あの時は世話になった。あんたがいなかったら、俺のゲマは死んでいたよ」
GM「一体何があったんだー!(爆笑) 『礼には及ばんよ。その分の金はもらったんだからな。で、今日は?』」
エリック「ああ。わけありでイムランの森」
GM「淫乱の森!!?」
エリック「言ってない言ってない。イムランの森!」
GM「『イムランの森っていうと、な〜んもないただの深い森だな』」
エリック「そうなのか? 相手を試すような目で」
GM「じゃあ、『……どこまで知っている? こういうところでは、話せるところまで先に話すのが筋だぜ』」
エリック「生憎、人間様嫌いなエルフたちがたくさんいることしか知らねぇな」
GM「『それ以外に、どんな情報が欲しいってんだ?』」
エリック「できれば、人数とか規模とか、過去にあの森のエルフたちと人間との間に何があったか。それは、人間嫌いになった理由だけじゃなくて、実際に最近何かあったのかとかも聞きたい」
GM「『……150だな』」
エリック「安いな」
GM「『その情報は、情報としての価値があまりない』」
エリック「ほらよ」
GM「『まず、規模だったか?』」
エリック「ああ」
GM「『人数は大体50人くらいだな。エルフの村としてはそれほど大きくはない。ただ、村の面積も狭いから、そいつらが一ヶ所に固まっていて、多く見えるかもしれない』」
エリック「一ヶ所か……」
GM「『人間嫌いだが、強いという話は聞いたことがない。だから、ヤツらと何かあったという話は聞かない。こっちから行く利益はねぇし、行かなければ、ヤツらからは何もしてこんからな』」
エリック「人間嫌いになった理由は?」
GM「『さぁな。生憎知らない』」
エリック「……わかった。助かる」
GM「じゃあ、君がそう言うと、そいつが親しげに話しかけてくる、『最近どうだ? あの話は聞いているが……』」
エリック「あの話っていうのは、俺の前のパーティーが全滅して、俺だけ生き残った話?(これはGMに)」
GM「そうだよ」
エリック「じゃあ、どうもしねぇよ。今はエルメスという女と旅をしている」
GM「『お前のこれか?』これ、イコール、恋人」
エリック「さぁな。俺にもわからんよ」
GM「『そうか。しかし、まさかお前がまた、パーティーを組むとは思わなかった。リーミアのことは、吹っ切れたのか?』」
エリック「どうだか」
GM「『同じことを繰り返すなよ。エルメスだっけか? お前のことだ。リーミアの身代わりというわけではないだろうが、同じ目には遭わすなよ』」
エリック「当たり前だ。エルメスは俺が守る」
GM「『冒険者に向いているのか?』」
エリック「冒険者は、なりたくなくてもならなきゃならねぇ場合もある。彼女もその一人だ」
GM「『まあ、大切にしろよ。この先、色々と辛いこともあるだろうがな』」
エリック「了解」
GM「『できれば、あのエルフには手を出すな』」
エリック「背中越しに手を上げて、そのままギルドを出ます」
GM「ラジャー。せっかくだから、エルメスの方も何かしようか?」
エルメス「うん。したい!(完全にプレイヤー発言)」
GM「どうぞ」
エルメス「なにか、可愛い服ない?」
GM「女性店員が来る。『いらっしゃいませ。服ですか?』」
エルメス「はい」
GM「『冒険者向けのですか? それとも、プライベート用?』」
エルメス「う〜ん。プ、プライベート用……かな?」
GM「『ふふふ。顔が赤くなってますよ、お客様』」
エルメス「あはは」
GM「『これなんてどうですか?』あんまりGMが知識ないからダメだけど、薄い可愛いドレスにしておこう。肌の露出部分が多い」
エルメス「恥ずかしいです」
GM「ベルダインは暑い地域だからね。基本的に露出度が高い。だから、『皆さん、ここではこういうものを着てますから、大丈夫ですよ』」
エルメス「ふふん♪ 他には?」
GM「うん。色々出してくるけど、まあ、初めのが君の一番マッチしたっぽい」
エルメス「じゃあ、初めのドレスをいただきます」
GM「『ありがとうございます。150ガメルになります』」
エルメス「はい」
GM「じゃあ、そうこうしてると、向こうからエリックがやってくる」
エリック「よぉ、エルメス。買い物か?」
エルメス「はい」
エリック「何だったら、俺が買ってやったのに?」
エルメス「いえ、いいんです。私も冒険者として、エリックさんと同じだけ稼いでいるんですから」
エリック「しっかりした娘になった……と、心で思いながら、穏やかに微笑もう」
エルメス「エリックさん、あの、恥ずかしいです」
エリック「あ、ああ。すまない。出ようか」
エルメス「はい!」
GM「はぁ。いいなぁ、こういうプレイ」
エリック「いいなぁ」
エルメス「面白いにゅ」

◆ 襲撃? ◆

GM「外に出ると、もう夜です」
エリック「そこいらの適当な宿をとる」
GM「『いらっしゃい』」
エリック「二人部屋を頼む」
GM「『あいよ』」
エルメス「今考えると、イルウィンの家に泊まればよかったという説が……」
エリック「まあそうだけど、ちょっと作戦会議をしたい」
エルメス「了解」
GM「じゃあ、部屋に案内された」
エリック「うぃ。さてと、どうしたものかなぁ。とりあえず、ギルドで得た情報をエルメスに」
エルメス「なるほど〜」
エリック「かなり難しい。逃げるに逃げれず、説得も難しい」
エルメス「どうしましょうか」
エリック「俺、考えたんだけど、結局力でねじ伏せるしかない気がするんだけど」
エルメス「穏やかじゃないですね。それに、危険です」
エリック「或いは、この街から逃げるか」
エルメス「逃げても、追っ手がくるかも知れません」
エリック「適当に、フレミンは死んだことにして」
エルメス「ああ、それいいかも!」
エリック「エルメスはなんかない?」
エルメス「う〜ん。人間嫌いになったのは、遥か昔からの確執みたいだから、誰も知らないかも。人間はそれだけじゃない、いい人もいればいいところもあるということをわからせれれば」
エリック「どうやって? 相手は相当石頭だぞ」
エルメス「そもそも、フレミンはイルウィンに助けてもらったんでしょ? どんな感じだったんだろう。それは、信頼を得るに値しなかったのかな?」
GM「じゃあ、それについて。フレミンは怪我をして森の外にいた。それを、たまたまイルウィンが見つけた。まあ、野菜屋だから、外に出ることもあるでしょう。イルウィンはフレミンを街まで運んで介抱した。もっとも、介抱する頃には、彼女は精神力も回復して、ヒーリングも使えたわけだが、使ったかどうかはおいといて、そこで二人の仲は深まった。ただし、森のエルフたちは、誰もその過程を見ていない」
エリック「つまり、言葉が的確かどうかはわからないけど、証人がいないわけだ」
エルメス「そのことをフレミンがエルフたちに言ってないとは思えないから、それは使えないと」
エリック「そうだな」
エルメス「じゃあ、たまにある戦法だけど、わざとエルフたちの前でフレミンを襲わせて、それをイルウィンが助けるというのは?」
エリック「フレミンを人間が襲う時点でアウトだね」
エルメス「じゃあ、誠心誠意を込めて頼み込むか、力でねじ伏せるか、どっちかね」
エリック「後者は数がいる。すごい戦闘になるのが目に見えてる。それに、フレミンはそれを望んでいるかどうか……。前者は現実的に見て厳しそうな気配。下手をすると、フレミンを除いて全滅する」
エルメス「痛いね」
エリック「うぐぅ」
エルメス「ふにゃ〜〜」
GM「…………」

 相当困っている様子。
 このままでは埒が明かなそうだったから、少し背中を押してみることにする。

GM「じゃあ、君たちは夜までそうしてうだうだと考えていた」
エリック「はい。エルメス……やっぱり逃げよう……」
エルメス「二人は放っておくの?」
エリック「いや、俺たちが逃げるんじゃなくてさぁ」
エルメス「わかってます。冗談です」
GM「ドンドンドン。ドアが叩かれる」
エリック「身構える。エルフたちかも知れない」
GM「生憎。でも事態はもっと悪いらしい。男の声がする。『エリックさん、エルメスさん! 私です。イルウィンです!』」
エリック「ドアを開けよう」
エルメス「ガチャ」
GM「イルウィンが飛び込んでくる。怪我をしているようだ」
エルメス「キュアー・ウーンズ」
GM「ああ、振らなくていいよ。治った治った。ん〜〜、ちょっとシーフ+知力で振って」
エリック「(ころころ)おっ、10は15」
エルメス「私は?」
GM「本来なら、技能がないときは素で振るけど、まあエリックが気が付いたからいい。イルウィンの後、つまり廊下の方から、殺気がする」
エリック「気付かない振りをしよう。エルメスにも教えない。数は?」
GM「もう1回振って」
エリック「11」
GM「じゃあ、一人ということはわかったけれど、距離は特定できない」
エリック「待つ」
GM「じゃあ、怪我を治されながら、イルウィンが話し始める。もちろん、かなり慌てた感じでだ。『フ、フレミンがさらわれてしまったんだ!』そこで飛び出してくる」
エリック「達成値3倍スリープ・クラウド! いけぇ! (ころころ)期待値。7は13の16!」
GM「そりゃ無理だ。パタッ。見ると、昼間のエルフの一人です。『ひっ!』怯えたようにイルウィン」
エルメス「私も驚く」
エリック「とりあえず指を封じる」
GM「マニアだ!」
エルメス「指?」
エリック「シャーマンは、指を使わないと魔法を使えない」
GM「ソーサラー技能があったらどうするのさ」
エリック「ありそう? 何か持ってる?」
GM「おめでとう。なさそうだよ」
エルメス「とりあえず起きる前に、イルウィンに話を聞く。どうしたんですか?」
GM「『あ、ああ』気を取り直してイルウィン。『昼間のエルフたちが突然襲ってきて、寝ているフレミンをさらっていったんだ。私はこうして逃げてくるのが精一杯で……』」
エリック「まあ、殺されなかっただけ良かったと思え」
GM「『うぅ……』泣いてるイルウィン」
エルメス「情けない人……」
エリック「まあそう言うな、エルメス。それが一般人というものだ」
エルメス「そうですね……」
エリック「どうしたものかな? おい、お前はどうしたい?」
GM「『わ、私は……私はフレミンと一緒にいたいです!』」
エリック「じゃあ、連れて逃げる覚悟もあるか?」
GM「『それは……』」
エリック「じゃあ諦めろ」
GM「『あ、あります! フレミンとだったら、たとえ命を捨ててでも!』」
エルメス「何にそんなに惹かれたのかしら」
エリック「GMの都合……げほげほっ。人に惚れるというのは、きっとそういうことなのだろう(笑)」
エルメス「なるほど(苦笑)」
エリック「じゃあ、お前は俺たちにどうして欲しい?」
GM「『フレミンを連れ戻して欲しいです!』」
エリック「俺たちの職業は?」
GM「『冒険者……ですよね?』」
エリック「じゃあ、何がいる?」
GM「ああ、ちゃんと気付いたのね?」
エリック「当然。ただ働きはしないよ」
エルメス「する気、まんまんだった(笑)」
GM「『お金は……ないです。それに、逃げるなら、お金は払えません』」
エリック「じゃあダメだ。他を当たってくれ。さぁ、エルメス。これからワイト退治でも(笑)」
エルメス「反応に困って、苦笑い」
GM「イルウィン、慌てる。『そ、そういえば、フレミンが、青色の水晶の埋め込まれた首飾りを付けてました。もしも彼女を助けてくれたら、それを差し上げます』」
エリック「おいおい、いいのかよ(笑)」
GM「『はい!』」
エルメス「青色の水晶。話を聞いてわかりそう?」
GM「ちょっと厳しく、セージと知力で達成値15」
エリック「うぃっす。10が出ても14」
エルメス「7で12」
エリック「わかんなかった。ちょっとそれだけじゃ、仕事は受けられないなぁ(爆)」
GM「『お願いします! 絶対に高価なものです。もしも価値がなければ、出世払いでも構いません!』」
エルメス「まあ、受けてあげましょう」
エリック「…………」
エルメス「ねっ」
エリック「まあ、エルメスがそう言うなら。俺はエルメスが心配で渋ってるのだが……と、これは心の声」
エルメス「了解」
GM「ういっす。じゃあ、受けるということで。『ありがとうございます』そこで、エルフの男が起きたことにしよう」
エリック「じゃあ、とりあえずイルウィンは荷造りして、家に帰って。ひょっとしたら別に逃げなくても良くなるかもしれないけど、まだわかんないから」
GM「『はい』イルウィン、家に帰る」
エリック「さてと……」
GM「『なんだ? どうするつもりか知らんが、俺は何も言わんぞ』」
エリック「話させよう」
GM「どうするの?」
エリック「くすぐる」
エルメス「単純な手だ」
エリック「こしょこしょこしょ」
GM「『ひっ! ひひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!』」
エリック「こしょこしょこしょこしょこしょこしょ」
GM「『ぎゃはははははははははっ。いーひっひっひっひっひっひっひっひっひっ!』」
エルメス「私も手伝います! こちょこちょこちょこちょ」
エリック「こしょこしょこしょこしょ」
GM「『ぎゃーーーーっ! わかった! 話す! 話す!!』」
エリック「うぃっす。村の構造とか、村人のこと、フレミンのいるであろう場所とか、警備の様子を聞く」
GM「要点を押さえた質問だなぁ。村の構造は、まあ、君たちの持ってるレンジャー技能と足し合わせて、それなりにわかりやすい地図が書けた。村人については、能力はこいつらが一番高いくらい」
エルメス「みんな3以下ね」
GM「フレミンの家は、村でも一番大きな家で、彼女の父は、彼女に罰を与えると言っていたらしい」
エリック「GM変態だから、きっといじめられてるよ」
エルメス「可哀想に」
GM「ひどい言われようだ」
エリック「警備は?」
GM「おおよそ聞いた。パターンがあるみたいだから、それを外せばなんとか誰にも会わずにフレミンの家に辿り着ける」
エリック「わかった」
エルメス「見つかったらアウトね。40人も50人もいたら、全員レベル1でも勝てっこないよ」
エリック「ばれないことを期待しよう。ゲマは戻ってるよね?」
GM「ふわふわ浮かんでる」
エリック「了解。じゃあ、少し休んで、夜が明ける前に集落に着くぐらいにここを出ます」
GM「つまり、今からだね?」
エリック「げふっ」
エルメス「精神点を回復したかったのね?」
エリック「張り切りすぎた」
GM「頑張って下さいませ」
エリック「ブラジャー」

◆ エルフの集落 ◆

エリック「今更ながら、二人パーティーはきつい」
エルメス「でも、二人きりというのは、その……いいですね」
エリック「ぽりぽり」
エルメス「ふふふ」
GM「幸せそうだ。さっきのエルフは?」
エリック「適当に捨てた。邪魔されると厄介だから」
GM「ん。じゃあ、森に入った。一応、レンジャーと知力で振って」
エリック「12」
エルメス「11」
GM「もう1回」
エリック「11」
エルメス「13」
GM「無難な数字たちだ。じゃあ、予定通り目的地に着いたことにしよう」
エリック「ここから集落は見えますか?」
GM「ぎりぎり見える位置ではない」
エリック「ゲマを飛ばして、偵察に行かせよう」
GM「その必要はない」
エルメス「ヤな空気」
エリック「はめられたっぽい」
GM「『お前ら、動くな!』声と共に、わらわらと3人ほどのエルフが来る」
エルメス「3人か。戦闘したら、村にとどくよね?」
エリック「わらわら来そう。しまったなぁ。容易に信じすぎた」
GM「命取りだよ。エルフたちは弓を持っている。男が3人。鎧はなし。クロースだね」
エリック「眠らせるか」
エルメス「失敗したら、ウィンドボイスで仲間を呼ばれるよ」
エリック「相手は、俺たちを殺しそう?」
GM「それはない。相手は冒険者風情だし、多少の緊張が見られる」
エリック「弱いから」
エルメス「一人じゃ何もできない人たち」
GM「どうする? じりじりと歩み寄ってくるよ」
エリック「とりあえず抵抗はやめておく。メイジリングを口に入れたいから、シーフで振らせて」
GM「了解」
エリック「器用度で10……」
GM「10か……。相手が君が何かしたのだけ気が付いて、『ん?』と顔をしかめる」
エリック「上手にダガーを捨てて、抵抗はしない。フレミンのところに連れていけ、と言おう」
エルメス「じゃあ、私も剣を捨てよう。さようなら、エルメス・ソード」

 注:+1のブロード・ソードのこと。

GM「矢を打ってくる。ビュン!」
エルメス「ひどい」
GM「避ける?」
エリック「避けない」
エルメス「避けたい(笑)」
GM「1本ずつ受けて。後の一人は、ウィンドボイスで仲間に連絡。(ころころ)あっ、ごめん」
エリック「何故回る!」
GM「二人とも13点くらい受けておいて」
エリック「鬼! 鬼鬼鬼!」
エルメス「くうぅ」
GM「まあ、至近距離だしね。結構致命傷ということで(笑)」
エリック「後4しかないです」
GM「知らない。じゃあ、捕まってボコボコ殴られた上で、13点受けたことにしておけ」
エリック「ふぁ〜い」
エルメス「女の子を殴るなんて……」
GM「関係ない。人間は人間」
エルメス「くすん」
GM「君たちは縛られたまま、長のところに引っ張られる。村人がわんさわんさといる」
エリック「見せ物だ〜」
エルメス「どうしよう」
GM「長登場。若く見えるけど、エルフに歳を聞くのはナンセンス。フレミンはいないけど、間違いなくこの人がフレミンの父親」
エリック「フレミンはどこだ!?」
GM「『それを答える必要はない。貴様ら、ここに何しに来た?』」
エリック「なんだろう(爆)」
エルメス「フレミンを自分の足で歩かせるためよ!」
エリック「おっ、カッコいい♪」
GM「『お前たちに、私の娘にそんなことをさせられる権利はない』」
エリック「親だからと言って、娘を自由にできる権利はない」
GM「『人間の価値判断で、エルフを量るな。人間とエルフは違うのだ』」
エルメス「う〜む。そう言われると、元も子も……」
エリック「困ったぞ」
GM「言いあぐむ?」
エリック「もうちょっと。じゃあ、エルフは産んだ者勝ちか? 親は子供に対して絶対なのか? ああ、もし『そうだ』と言われたら困ることを言ってしまったかも」
GM「じゃあ言おう。『そうだ!』」
エルメス「それは親のエゴよ! フレミンの気持ちは考えてあげないの? 村の掟を破ってまでも人間と一緒になろうとしたのは何故?」
GM「『人間にそそのかされたのだろう』」
エルメス「フレミンはそう言ってるの?」
GM「『言うわけないだろう。そそのかされた者が、自分からそそのかされたという話など、聞いたことがないわ!』」
エルメス「むぅ。ダメだこりゃ」
エリック「かなりやばい」
GM「『言いたいことはそれだけか? もう死ぬか?』」
エリック「やっぱり殺すのか〜」
エルメス「どうしようどうしよう」
エリック「長までの距離は?」
GM「近いよ。4mくらい」
エリック「ゲマは?」
GM「君の自由にして可」
エリック「じゃあ、ちょっと勝手かも知れないけど、捕まってからこれまでの間に、長の家に入らせて、フレミンを探してもいい?」
GM「う〜ん。まあ、絶体絶命だし、君がどうするか見てみたいから許可しよう」
エリック「じゃあ、ゲマに家の中を探させる」
GM「じゃあ、君たちがちょうど長の前に引っ張られた頃に、フレミンを見つける。小さな部屋に、木製のドアがついていて、その中に閉じこめられてる模様」
エリック「『助けにきたゲマ〜』ゲマは喋れる」
GM「ドアには鍵がかかってる」
エリック「アンロック。精神点ぎりぎり(ゲマは精神点が2しかない)」
GM「カチャ。『あ、あなたは……』泣いていたようで、頬に涙の跡があるが、元気そうだ」
エリック「『エリックの使い魔ゲマ。フレミン、今から言うことを良く聞くゲマ』」
GM「『はい』」
エリック「『助けて(爆笑)』」
エルメス「なんだそりゃ!?」
GM「(爆笑)」
エリック「だって〜。とりあえずすぐに上に来て」
GM「どうするか指示して。そうじゃないと、GMの一人芝居になっちゃう」
エリック「どうしようかなぁ。人質として取ることはできそうだけど、意味はなさそう」
エルメス「楯にしても、この長の前では、無駄そうだし」
エリック「とりあえず、『その人たちを助けてあげて』、がいいかな? 『そうしないと、私は死にます』」
エルメス「『フレミン、お前は騙されてるんだ!』」
エリック「『だ、騙されてるのかしら……』」
GM&エルメス「ダメじゃん!」
エルメス「少なくとも、自分たちだけ助かっても意味がない。フレミンも連れて帰らないと」
エリック「うぃ。もう決まり。長を人質に取る」
GM「マジですかー?」
エリック「マジです」
エルメス「後先は?」
エリック「人質にとったまま後退。三十六計、逃げるに如かず」
エルメス「了解!」

 こいつら、マジおもしれぇ〜(苦笑)。

◆ 逃げる ◆

GM「じゃあ、いこう。長が手を上げると、周りの連中が一斉に君たちに向けて矢を掲げます」
エリック「フレミンは?」
GM「ここで出てくる。エリックはゲマを通じてわかってるから、絶妙のタイミングで動いていいよ」
エリック「そのタイミングを、冒険者+知力で、感覚的にエルメスに伝えさせて」
GM「いいよ。12くらい」
エリック「出目10で余裕♪」
エルメス「はっ。今のは何?」
エリック「ニュータイプの兆しよ」
GM「では始めます。頑張ってね。こんな無茶苦茶なの、実は初めて」
エリック「私も〜」
GM「弓を掲げると同時に、家からフレミンが飛び出す。『やめてください! お父さま!』周囲の目が一瞬そっちにそがれる。1ラウンド分、時間をあげよう」
エリック「次のラウンドで、フレミンはどこまで何ができる? 何をする?」
GM「何をするかは君が決めて」
エリック「じゃあ、長に飛びかかる。できる?」
GM「了解」
エリック「火で縄を焼き切る。ティンダー」
GM「いいよ。でも、どっちか一方」
エリック「当然、エルメス」
エルメス「了解。じゃあ、ターンを遅らせたことにして、キュアー・ウーンズをエリックに。エリック、6点回復」
エリック「うぃ」

<1ラウンド目>

GM「フレミンが長に飛びつく。『いい加減にして!』長と一緒に倒れ込むフレミン。『何をする! フレミン!』」
エルメス「私、フレミンより速いけど、どうしよう」
GM「君たちより速いヤツらから、矢が飛んでくる。エルメスに2本。エリックに2本。エリックは回避修正-2で振ってね。12、11、10、10」
エルメス「平気」
エリック「とことん今日は、運に見放されてるらしい。下手すると死ぬかも」
GM「両方?」
エリック「出目が5と6じゃね〜(笑)」
GM「7点と4点」
エリック「5点受けた。さっき回復してもらわなかったら、気絶してた」
エルメス「絶妙な判断」
GM「エルメスの番」
エルメス「エリックの縄を切る」
GM「何を使って?」
エルメス「えっと……歯とか(笑)」
GM「却下」
エルメス「手でほどく」
GM「まあいいでしょう」
エリック「じゃあ、すぐに長のところへ走る。飛びつく」
GM「フレミンと同時に飛びついた。『みんな、動かないで!』フレミンが叫ぶ。でも、その前に長のシュートアローがエルメスに」
エリック「レベル5! ジャベリンじゃなくて良かったけど……5!?」
エルメス「いくつ?」
GM「回避不可。10点」
エルメス「何で引けるんだっけ?」
GM「鎧で引ける」
エルメス「(ころころ)3点受けた。あと8」
エリック「俺は、あと5」
GM「ちなみに、フレミンは元々10しかない」
エリック「ボロボロ」
エルメス「ドキドキするよ、このゲーム」
エリック「ダイス振る楽しみがわかってきた?」
エルメス「のめり込みそう」
GM「周りの連中は動けなくなる。で、どうすんの?(笑)」
エリック「弓を捨てろ! 俺は魔法使いだ。いつでも長を殺せるぞ!」
GM「数人が弓を捨てるが、そこで長が言う。『捨てるな! こいつらを殺せ』」
エリック「黙れ! ゲシッと蹴る」
GM「フレミンが一瞬辛そうにしたけど、すぐに元に戻る。『武器を捨てなさい! 私の言うことが聞けないの!?』」
エルメス「とりあえず長の方に近付こう。近くに刃物ない?」
GM「ない。精霊使いは、金属を嫌う」
エルメス「私の剣は? エルメス・ソード」
GM「さっきの場所に捨てたまま」
エルメス「了解」
GM「結局全員弓を捨てたけど、彼らは精霊魔法が使えるから、それほど気にしてない。それよりも、長のことが不安らしい」
エリック「よしっ。じゃあ、全員、10歩後ろに下がれ! 下がらないと、こうだ! と言って、もう一度長を蹴ろう」
エルメス「もう無茶苦茶」
GM「『ぐぅ……。こ、これが人間の本性だ、フレミン。目を覚ませ……』」
エリック「やばっ」
エルメス「(笑)」
GM「大丈夫だよ。フレミンは気丈に振る舞っている。『目を覚ますのは、貴方です、お父さま。いつまでも古い慣習に縛られていては、その内目が見えなくなってしまいますよ』」
エリック「連中は?」
GM「離れたよ」
エルメス「さっきまで縛られてた縄で、長を縛る。当然、魔法を使えないようにね」
エリック「賢明だ。ジャベリンが怖い」
GM「『この愚か者が!』長は血を吐くようにそう叫んだけれど、フレミンは動じない」
エリック「じゃあ、こいつを引きずりながら、じわじわと後退」
GM「連中、何もできない。長は暴れているが、抵抗できない。集落から見た森の入り口まできた」
エリック「連中は?」
GM「ついてくる。距離は置いてるけど」
エリック「お前たち、ついてくるな! 大人しくフレミンを渡せば、長を殺しはしない!」
エルメス「なんか、悪人の台詞みたいだね」
エリック「くそぅ」
GM「武器のところまで来た」
エルメス「拾う」
エリック「拾う」
GM「どこまで、どうする? 長は?」
エリック「森の入り口までは引っ張ってくよ」
GM「ういっす。じゃあ、レンジャー+知力で振って」
エリック「来た来た〜♪」
エルメス「13!」
エリック「11」
GM「じゃあ、エルメスは気付いた。くそぅ」
エルメス「(笑)」
GM「どうやら、こっそりついてくる者がいる」
エルメス「エリックにそう伝える」
エリック「お前ら、言ってることがわかんねぇのか!? ゲシッと長を蹴りながら叫ぶ」
GM「フレミンが、キュッと目を閉じる。敵は慌てて逃げた様子」
エルメス「絶対に私たちが悪人ですね」
エリック「善人、悪人は立場によって変わる。これでも、依頼主から見れば、立派な行いなんだろう」
エルメス「辛いですね」
エリック「しょうがないさ」
GM「じゃあ、森の入り口まで来た。追っ手はないけど、もう1回レンジャーで振って」
エルメス「低い、10」
エリック「げふっ。また3とか出てるし。7」
GM「うぃ。じゃあ、どうする?」
エリック「長を放っておいて、街の方へ駆ける」
エルメス「逃げるしかないでしょう。ああ、でも、道の途中でキュアー・ウーンズかけてたことにしていい?」
GM「承諾。振って……あっ、いや。フレミンがヒーリングをかけたことにする」
エリック「ありがとう」
エルメス「助かります」
GM「じゃあ、長を離してからしばらくしたところで、後ろから声がする。『待て、貴様たち!』」
エリック「足を止めて振り向く」
GM「40mほど向こうに、二人のエルフ。一人は長で、一人は、君たちが宿で捕まえたヤツ」
エリック「ああ、あの嘘つきか」
GM「『あんなものを信じるお前たちが悪い!』」
エルメス「許さない!」
GM「問答無用で戦闘です。距離40m。行動順、エルフ、エルメス、エリック、フレミン、長」

◆ ラストバトル ◆

<1ラウンド目>

GM「無茶苦茶やらせてもらおう。エルフ、近付きながらストーン・ブラスト。近い方」
エルメス「受けましょう」
GM「げふっ。8」
エルメス「抵抗」
GM「くそっ。10が出た。回ってたのにぃ。10点」
エルメス「十分痛いです。7点受けて、残り14。私、遅らす」
エリック「カンタマ2倍がけ。(ころころ)成功」
GM「フレミンには?」
エリック「ごめん、忘れてた」
GM「フレミン、『しくしく』そのフレミンは……どうして欲しい?」
エリック「あっちの空間に、サイレンス」
GM「12は……抵抗の……3!? げふっ。長が……長がぁ……」
エリック「おめでとう」
GM「じゃあ長は、効果範囲から脱出しよう」
エルメス「遅らせたけど、ファイア・ウェポンは飛んでこなかった(笑)。エルフを攻撃。11」
GM「うぃ」
エルメス「(ころころ)なんで3とか出るのかなぁ」
エリック「呪われてるのよ」
エルメス「8点」
GM「それでも8点あるのね。あっ、11とか振っちゃった」
エリック「GMのオープンダイス、怖い」
GM「リアリティがあっていいでだろ」
エリック「ジャベリンで回らないでね」

<2ラウンド目>

GM「エルフは、もう1回ストーン・ブラスト。近い方……ごめん、気にしないで」
エリック「GMがオープンダイスで1ソロ振るほど気持ちいいのもないね」
GM「黙れ」
エルメス「殴る。7は13」
GM「いいよ」
エルメス「(ころころ)なんで4とか出るのかなぁ」
エリック「呪われてるのよ」
エルメス「9点」
GM「8とか振っちゃった」
エリック「ライトニング。……今日は期待値が出ない。6は12ね」
GM「すまんな。抵抗」
エリック「GMの目、さっきからいいなぁ。9点」
GM「じきに倒れるなぁ。フレミンは?」
エルメス「とどめ」
GM「じゃあ、ファイアボルト」
エリック「ダメ。火がない」
GM「ごめん。GMがミスった。じゃあ、ウィスプ。あっ、5とか振っちゃった(爆)」
エリック「GM、嫌い」
エルメス「呪いだ」
GM「長は近付く。次のターン、ジャベリンね」
エリック「ジャベリン宣言された」

<3ラウンド目>

GM「エルフ、3発めのストーン・ブラスト。近い方……12」
エルメス「3とか振った」
GM「回れーっ。ダメ、9点」
エリック「GMが回れとか言わないでよ。怖い怖い」
エルメス「後8か。GM、長に走れる?」
GM「あんまりやって欲しくないけど」
エルメス「やりたい。やらせて」
GM「ういっす。どうぞ」
エルメス「攻撃……お願いっ! 4とか振った……マジ泣きそう。10です」
GM「いいよ」
エルメス「へっ?」
GM「長、回避できない。レンジャーしかない」
エリック「ナイスだ」
エルメス「じゃあ、ここで起死回生の一撃を……5……とか……出てるし……。10点です」
GM「うぃ」
エリック「ジャベリンはなんとか堪える方にかけて、エルメスにファイア・ウェポン」
GM「フレミンは?」
エリック「エルフにとどめ」
GM「シェイドでもいいけど、無難にウィスプ。(ころころ)うぃ、11とか振って、いい感じに倒れてくれた」
エリック「雑魚にしては手こずった」
エルメス「だって、だって〜」
GM「『よくもヒッポクリテスを!』」
エリック「誰だそりゃ!(笑)」
エルメス「聞いたことがあるようなないような」
GM「ジャベリンをエリック。期待値、7は15」
エリック「魔力が8っすか。(ころころ)ふぅ……あくまで3とか出るよ」
GM「『死ね……』8振って、16点」
エルメス「16点!?」
エリック「GM、敵強すぎ! 生命点、あと1。何とか残った」

<4ラウンド目>

エルメス「エリックの仇! 強打で9は15」
エリック「死んでない死んでない」
GM「(ころころ)回避はできない。強打はどっち?」
エルメス「う〜ん。男は賭け、クリティカル値-1」
GM「プレイヤーもPCも女じゃん」
エルメス「いけーーーーーーっ! (ころころ)きゃーーっ!」
エリック「ごふっ!」
GM「あ〜あ」
エルメス「7は4+7で11点」

 あっ。今気がついたけど、ファイア・ウェポンの加点忘れてるね、エルメス。

GM「防御防御〜♪ (ころころ)」
エリック「うえっ! GM、9とか振ってるし」
エルメス「なんか、むっちゃ悔しい」
エリック「フレミンの方に駆け寄りつつ、長にスリープ・クラウド」
GM「これかかったら、泣くよ、俺は」
エリック「ちなみに、ラストという説がある。精神点が残り2」
GM「倒れるの?」
エリック「カッコいいでしょ?」
GM「どうぞ」
エリック「ああ、ごめん。魔晶石使う。命の方が大事」
GM「そうだね」
エリック「2倍がけでいこう。こういうものは回りもの。またその内手に入るだろう。いけぃ! 8の14は15!」
GM「気合い入ってるね。7以上で抵抗。うりゃーーーっ! げふっ!」
エリック「やったーーーーーーーーっ!」
エルメス「っつしゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
GM「ごふぁっ! 長、陥没」
エリック「縛り上げろ!」
エルメス「了解です!」
GM「そして平和が訪れた……」

 読み返してみるとあっけないように見えるけど、じっくり読んでみると、戦いの壮絶さがわかります(笑)。

◆ それぞれの旅立ち ◆

GM「『ということで、もうここには居れません。私たちは、ザーンにでも行こうと思います』」
エリック「わかった。気を付けてな」
エルメス「追っ手は大丈夫でしょうか、フレミンさん」
GM「君がそう言うと、フレミンは少し寂しそうな顔で言います。『大丈夫です。あの人たちはあそこを出てくることができません。ザーンという国の位置はわかりませんが、ここを離れてしまえば安全です』」
エリック「そうだな」
GM「『あっ、そういえば』と言って、イルウィンが宝石を渡してくれます。『約束のものです』」
エリック「何?」
GM「10点分の水晶石」
エリック「振らなくて良かったの?」
GM「最初に振ったとき、君が14振ってたからいいよ。知名度は13」
エリック「了解。一応、市場では4,800ガメルくらいの価値になるものだな」
エルメス「今の私たちには、十分な報酬でしょう」
GM「『本当にありがとうございました』」
エリック「いや。姉さんと弟さんは?」
GM「ああ、一緒にいるよ。みんなで逃げる(笑)」
エリック「そうか……。冒険者としては悔しい終わり方だけど、これでも丸く収まった方かな?」
GM「そうだね。もう一度『ありがとうございました』と言って、彼らは去っていく」
エリック「元気でな」
エルメス「お幸せに〜」
GM「さっ、お疲れさん」
エリック「さてと、街に戻って酒でも呑むか、エルメス」
エルメス「お酒はもうイヤです」
エリック「あいつら、またいたりして」
エルメス「怖いです。もう貴方の前で吐きたくありません。冒険者でも、私は女です」
エリック「くくく。気にしてないよ」
エルメス「私が気にしてるんです!」
エリック「わかったわかった。ほれ、行くぞ」
エルメス「はい!」
GM「そう言って歩き出した君たちを出迎えるように、遠く西の空から夕陽が赤々と大地を美しい朱に染めていた……」
エリック「さっ、明日は俺たちもここを出るぞ。逃げないと(爆)」
エルメス「はい。どこまででもついていきます!」

◆ 反省 ◆

雪島(エリック)「経験点は?」
GM「う〜ん。じゃあまあ、1,200点くらい」
雪島「微妙な線だね」
GM「あんまり丸く収まった気がしない」
ほずえ(エルメス)「どうすれば良かったの?」
GM「考えてない。考えてあると、無理矢理そっちの道に乗せちゃいそうで怖かった」
雪島「なるほど」
水原(GM)「さてと、どうだった? ほずえ。初めてのTRPGは」
ほずえ「かなり面白かった」
雪島「はまってるはまってる(笑)」
ほずえ「ゲームって、面白いんだね!」
水原「そう言ってくれると嬉しいよ」
雪島「ありがちなシナリオのくせして、かなり変則的なプレイになったね」
水原「ドキドキしたよ」
ほずえ「平均取ると、たぶん出目が5.5から6くらいじゃないかと……」
水原「見ててイライラしてた。敵、強すぎたな」
雪島「あれくらいの方がスリルがあっていい」
ほずえ「一切、手抜きなしだったね」
水原「一回出目を誤魔化すと、くせになるんだよ。必要なときもあるけどね」
雪島「とりあえず楽しかった。絶対に次もやろう!」
ほずえ「やりたい」
水原「了解! 俺もやりたい」
雪島「ってことで、お疲れさま」
ほずえ「お疲れ〜」
水原「お疲れさまです」


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