エリックとエルメス 第5話『離別』


◆ 目論み ◆

 前回の冒険で入った経験点は、エリックが1,050点、エルメスが1,150点です。その内の50点は、いつものオリジナルボーナス。前回は、ムーンドリアの廃墟に出現したジャイアント・アント・クイーンが、モンスター・レベル5でした。
 エリックは現状のまま変わりませんが、エルメスは、これに1ゾロ分の20点を加えることで、経験点がちょうど3,000点に達したので、ファイター技能を4に上げました。

水原(GM)「うぃっす」
ほずえ(エルメス)「うぃっす」
雪島(エリック)「『彼は石にあらず。かの者に失われし物を与え、武器を取らせよ。さすれば闇は切り裂かれ、必ずや新しき時代は訪れん』」
ほずえ「い、いきなりどうしたんですか? 先輩」
雪島「いや、この文章、絶対に役に立つから、今度から毎回繰り返し言うことによって、忘れないようにしようかと……」
ほずえ「でもお兄ちゃん、適当に言ったみたいだったよ。何も考えてなかったっぽい」
雪島「そうだよ。何か考えて言ったんじゃなくて、何も考えずに言ったことに、後から意味を持たせるんだよ。ねっ、水原君」
水原「ドキドキ」
ほずえ「動揺してる〜」
雪島「絶対に何かシルファと関係してると見た。いや、させると見た。忘れるものか(笑)」
水原「そう言われると、無意味なものにしたくなるね〜♪(汗)」
雪島「汗が出てるよ」
水原「夏だから」
雪島「なるほど」
ほずえ「で、今回は? タイトルにでかでかと『離別』なんて書いてあるけど」
水原「ああ、うん。ちょこっと今回は、君たちに協力して欲しいんだけど、オーケー?」
雪島「うぃっす。前回の媚薬から、あからさまに今回のことを目論んでたよね?」
水原「そうそう。実は第4話より先に第5話の構想が立っていた。っていうか、第4話はお遊びのつもりだったし」
ほずえ「私もまあ、別に構わないけど。今回多少、GMの意思に沿って、次回からまた自由に暴れれるなら」
水原「ああ、まあ、沿うってほど沿わなくてもいいよ。基本的には、しっかりとロールプレイしてくれれば、俺の考えている方に進むはずだから」
雪島「ふ〜ん。で、どうすればいいの?」
水原「いや、今言った通り。雪島はエリックの、ほずえはエルメスの、それぞれの立場に立って、しっっっっっっかりと自分を演じてほしい。今後のこととか、普通の人なら心配するような、いわゆるキャラの個性を殺しちゃうような心配を一切せずにプレイしてくれればそれでいいんだよ」
雪島「了解」
ほずえ「手伝うっていうのは、それだけでいいんだね?」
水原「うん。ああ、一カ所だけ、エルメスにはGMの思い通りにさせてもらうから」
ほずえ「一カ所?」
水原「本来ダイスを振るところを、振らずにいく。まあ、プレイしてればわかるよ」
ほずえ「にゅ」
水原「あとは、エリックが媚薬を使ってくれればそれでいい。どういうふうに使うかとかは、全部君に任せるよ」
雪島「了解」
水原「じゃあ、楽しい冒険を〜♪」
雪島「うぃっす」
ほずえ「あ〜と〜さ〜きも考えないで〜♪」
雪島「にゅ?」
ほずえ「しくしく」
水原「やれやれ」

 ほずえ注:大江千里の『COWBOY BLUES』っていう曲だけど、知らないかなぁ……しくしく。

◆ 女心 ◆

GM「今回はなんだぁ。もう、君たちのロールプレイがメインね。ひょっとすると、ダイスを1回も振らないかも」
エリック「わかったよ。今どこにいるの? ザイン?」
GM「いや、まだロマールの予定だったけど」
エリック「なかなかしぶといね、あんたさんも(汗)」
エルメス「アノスまで、まだかなりの距離があるよ」
GM「でもロマール(笑)。あれからあんまり時間が経って欲しくない」
エリック「わかった。じゃあ、あれから何日経ったの?」
GM「2日くらい。君たちがキスをした晩から2日目の夕方だ」
エリック「俺たちの仲は?」
GM「さぁ。エルメスに聞いてみて(笑)」
エリック「(エルメスに)俺たちの仲は?(爆)」
エルメス「そこそこ回復。でもまだ、多少陰りを帯びた笑顔」
エリック「GM、例の媚薬はどんな形状?」
GM「君の使いやすいようにどうぞ」
エリック「じゃあ、無色透明、無臭の液状にしよう。お酒に混ぜて飲ませてやる〜♪」
エルメス「なんか、嬉しそう……」
エリック「くくく……。ほずえちゃん(エルメス)を犯すんだ、私……」
エルメス「先輩(エリック)、怖いです……」
GM「やれやれ」
エリック「とりあえず食事にしよう。部屋は一緒?」
エルメス「別々がいい。ちょっとわだかまり」
エリック「しょうがない。ドアをノックする」
GM「コンコン」
エルメス「誰?」
エリック「俺だけど……」
エルメス「じゃあ、ドアを開ける」
GM「ガチャ」
エリック「…………」
エルメス「…………」
GM「ん? どうしたの?」
エリック「いや、別に……」
エルメス「相変わらず、“音”担当になってると思って……」
GM「渋いでしょ。俺は絶対小学校の学芸会で、木とか月とか演じるタイプの人間だと確信してる」
エリック「変な人(笑)。エルメス、飯を食いに行こう」
エルメス「そうですね」
エリック「手を握る」
GM「きゅっ」
エルメス「スッと避けよう」
エリック「しくしく」
エルメス「…………」
エリック「でもまあ、それも今夜まで。くくく……と、心の中で思う」
エルメス「気付かない。ほら? 行くのでしょ?」
エリック「ああ、ごめんごめん」
エルメス「席は空いてますか?」
GM「それなりに。相席しなくても大丈夫」
エルメス「じゃあ、適当に座る」
GM「『ご注文は?』」
エリック「生2ちょー」
エルメス「いえ、生1杯と、この果物ジュースを……」
エリック「相変わらずお酒はダメなの?」
エルメス「嫌いなものを無理して飲むこともないでしょう」
エリック「そうだね……」
エルメス「あっ……」
エリック「ん? 何?」
エルメス「ごめんなさい。私、また何か、言葉が刺々しかったですね」
エリック「あっ、いや、別にいいよ」
エルメス「すいません……」
GM「『うぃ〜っす。生とジュースだぜ』」
エリック「おう、ありがとう」
エルメス「ありがとう」
GM「『料理は?』」
エリック「Aランチ」
エルメス「Bランチ」
GM「『AとBだな?』」
エリック「そう」
GM「『夕飯にランチとは、珍しいヤツらだ。まあいいけど(笑)』」
エリック「言われてみれば……」
エルメス「ねえ、エリック」
エリック「何?」
エルメス「明日辺り、そろそろここを出ましょうか」
エリック「ああ、そうだな。早くアノスに行かないと」
エルメス「クリーナでしたっけ? アノスの人らしき方のことは、ギルドなどで調べてみましたか?」
エリック「あっ、いや……(GMに)どうしよう」
GM「どうしたい?」
エリック「情けない方が面白いかなぁ(笑)」
GM「実際に調べてないんだし、調べてない方向でいこう」
エリック「じゃあ、ごめん、エルメス。ここのギルドではわからなかったよ……」
エルメス「??」
GM「嘘つくのね?」
エリック「うん。だって、情けないもん(笑)」
エルメス「なるほど。じゃあ、そうですか……と、溜め息を吐く」
エリック「なかなかムードが出ないなぁ」
GM「女心は難しいね」
エリック「!! 水原君(GM)の口から、“女心”なんて言葉が出るとは思わなかった」
エルメス「びっくりだよ!」
GM「お前らなぁ。とりあえず食事が運ばれてくる」
エリック「食べる」
エルメス「黙々と」
エリック「ちらっとエルメスを見る」
エルメス「ちらっとエリックを見る」
エリック「目が合って、慌てて俯く」
エルメス「淡々と食べる」
エリック「う〜む」
GM「ちょっとGMとしての質問いい?」
エリック「いいよ」
GM「エリックは、エルメスのこと、好き?」
エリック「もちろん!」
GM「エルメスは?」
エルメス「よくわからない。好きだと思う。でも、命懸けでフェアリーを助けようとしていたカッコいいエリックは、私のものじゃなかった。複雑な心境。エリックは私のためにも、あんなに頑張ってくれるのかな?」
GM「独占欲と嫉妬心?」
エルメス「そんな感じ。女の子だし、初めての恋だし。ちょっと強調してみる」
GM「エリックはそれには?」
エリック「気付くわけない。プレイヤーがもどかしいほど、エリックは鈍感だ(笑)」
GM「うぃっす。了解です」
エリック「じゃあ、食事を終えよう。ごちそうさま」
エルメス「ごちそうさまです」
エリック「部屋に戻る」
エルメス「ついていくよ」
エリック「ねぇ、エルメス」
エルメス「何ですか?」
エリック「あ……っと、いや、何でもない。また後で。慌てて自分の部屋に戻る」
エルメス「何も答えずに、一度訝しげな顔をしてから、自分の部屋に入る」
GM「にゅ」

◆ 媚薬 ◆

GM「エリックからやろう。具体的な行動やら、心理描写をしてくれるとありがたい。今回は、GMのシナリオよりもむしろ、君たちの心の動きを、君たち自身やリプレイを読んで下さるお客様方に楽しんでもらいたいから」
エリック「わかった。じゃあ行動は、夜、もう廊下から足音もしなくなるくらいの時間に、エルメスの部屋に行って、今後の行動予定と称してジュースを飲ませる。そこに媚薬を混入して、さらに想いを告げながら落とす。目指せ、18禁プレイ」
GM「わかった。じゃあ、想いなんかも語って欲しいな」
エリック「独り言?」
GM「俺がゲマをやろう。君はゲマを両手で挟んで、ゲマに話しかけてくれ。はい(といって、ゲマのぬいぐるみを渡す)」
エリック&エルメス「(爆笑)」
エリック「じゃあ、やろう。なぁ、ゲマ」
GM「『何ゲマか?』」
エリック「どうすればエルメス、機嫌直してくれるんだろうな」
GM「『…………』」
エリック「それ以前に、一体何をそんなにも怒ってるんだろう。俺、何かしたのかなぁ。……むっちゃしたやん、とプレイヤーは言いたくてしょうがない(笑)」
GM「『ゲマにもわからんゲマ』」
エリック「あの子(フェアリーのこと)を助けたとき、『私のときは何もしてくれないのに』なんて言ってたけど、俺、エルメスが盗賊に捕まったとき、気が気じゃなかったんだけどな」
GM「『そうゲマねぇ。エルメスは鈍感ゲマ』」
エリック「そうだよな。エルメス、きっと恋とかしたことないから、俺の気持ちに気付いてないんだろうな」
エルメス「心外だ(笑)」
エリック「こんなにもプレイヤーとは違うキャラを演じるのも、それはそれで味があっていいよ」
GM「女の子じゃのぉ」
エリック「なあゲマ。エルメスは俺のこと好きなのかなぁ」
GM「『大丈夫ゲマ』」
エリック「そうか?」
GM「『エリックには、媚薬があるゲマ(笑)』」
エリック「あっ、GM」
GM「ん?」
エリック「今のゲマの一言で媚薬を使おうと思ったことにしよっか?」
GM「別にいいけど、それじゃあ、買った理由がつかないよ」
エリック「あれはこう、あの店の娘にやられたってことで」
GM「了解」
エリック「そうか、媚薬か! せっかく買ったんだしな」
GM「『そうゲマよ。高い金を払ったゲマ』」
エリック「よしっ。……でも、気付かれないかなぁ」
GM「『店の女が、大丈夫だと言ってたゲマ。人は信じるゲマよ』」
エリック「そうだよな。そっか……。じゃあ、いよいよエルメスと、か……」
GM「『…………』」
エリック「わくわく。やっぱり、1回しておいた方がいいのかなぁ(笑)」
GM「おい!」
エルメス「先輩……」
エリック「あ、あの、いや、エリックが……」
GM「雪島のスケベ」
エルメス「1回するって、何をする気なんですか!?」
GM「へっ?」
エルメス「他の女性で予行演習?」
エリック「いや、それはその……」
GM「…………」
エルメス「にゅ?」
エリック「いや、水原君(GM)、する前に1回するらしいよ」
GM「いや、それはその……」
エルメス「お兄ちゃん? 何を?」
GM「いや、だから……」

 閑話休題。

エリック「よしっ。決めてやるぜ」
GM「頑張ってね」
エリック「おう!」
エルメス「なんか、ものすごく怖い……」
GM「じゃあ、エルメスの方をやろう。同じく、今後の行動とか、心理描写とかしてくれると嬉しい」
エルメス「じゃあ、鏡台の前で、髪をとぎながら呟こう。エリックさんは、本当に私のことを好きなのかしら……」
GM「…………」
エリック「…………」
エルメス「お、お願い。誰か相槌打って(笑)」
GM「ああ、はいはい」
エリック「じゃあ、俺がちゃちゃを入れよう。好きだよ、エルメス」
エルメス「(笑)。あの人は、口では『好きだ』と言ってるけど、心がわからない。本当は好きでないのか。或いは、本当に好きなんだけど、他にもたくさん『好き』な女性がいるのだとか……」
エリック「じ、実は……そうなんだ(嘘)」
GM「(苦笑)」
エルメス「ああ、考えれば考えるほど、胸が苦しくなってくる。エリックさんを信じたいけど、あのことが頭を離れない。あんな、フェアリーなんかに命をかけて」
GM「……なんか、か(汗)」
エルメス「そういえば、私が盗賊に捕まっていたときも、結局助けに来てはくれなかった。あんなにも辛い目に遭っていたというのに……。いっぱい、お願いしたのに……」
エリック「いや、それは無理(笑)」
GM「一人で考えてると、少しずつ少しずつ、思考が悪い方へ行くみたいだね」
エルメス「でも、エリックさんはタラントで、困っていた私に声をかけてくれた。指輪も買ってくれた……」
エリック「そうそう」
エルメス「これも全部、嘘? でも、そうだとしたら、一体何が目的なのかしら……」
エリック「目的なんて……躰?」
エルメス「躰?(爆)」
エリック「(苦笑)」
エルメス「首を左右に振る。まさか……。あの人はそんなことを考える人じゃない。そう、信じよう」
GM「じゃあ、そこら辺でエリック参上と行きますか(笑)。躰目当てで(笑)」
エリック「コンコン。エルメス、俺だけど」
エルメス「ドアを開けよう」
GM「ガチャッ」
エリック「なにやら、地図とジュースを持って立っている」
エルメス「もう、ジュースが不自然すぎ!」
エリック「いや、喉が渇くと思って(笑)」
GM「どうするの?」
エリック「あの、これからの予定を話したいんだけど、いい?」
エルメス「あっ、はい。どうぞ」
エリック「お邪魔しま〜っす」
エルメス「適当に座る」
エリック「小さなテーブルがあって、そこに向かい合って座ろう」
エルメス「ん」
エリック「じゃあ、媚薬入りのジュースをエルメスの前に置いて、地図を広げる」
エルメス「とりあえず一口飲む。GM、反応は?」
GM「適当に演じて、二人とも。君たちならできる! コンベンションとかと違って、プレイヤー同士が互いを熟知してるから、なんとかなるでしょう」

 ……思えば、これが間違いだった……。

エリック「いいよ。じゃあ地図を広げて、ここが次に行くザインという国だ。言いながら、目でちらちらとエルメスのジュースやら、胸元やらを気にしている」
エルメス「地図を見ている」
エリック「ザインは魔法使い嫌いで有名だから、俺としてはさっさと出たい街の一つだな。ここを越えると、次がエレミアだ」
エルメス「ジュースを一口。エレミアというと、職人の王国ですね?」
エリック「そうそう。ちょっと指が震えてる。GM」
GM「何?」
エリック「なんとなく、好きな女の子を前にした、純粋な男の子の気持ちがわかったよ」
GM「ありがとう」
エリック「純粋な男の子の! あんたじゃない」
GM「俺は純粋だよ。昔は雪島の前に立つと、言葉が震えたもんだ」
エリック「ああ、震えてたね。私は心の中で笑ってたよ。まだそれほど親しくなかったから、『この人、どうしたんだろう』とか思った(笑)」
エルメス「ふ、二人とも、昔話はいいから(苦笑)」
GM「ああ、ごめんごめん」
エリック「そうだよ。職人の街だから、可愛いものとかいっぱいあるかもね。エルメスに似合いそうなものがあったら、買ってあげるよ」
エルメス「ありがとう……。と言っておく。でも、さっき『どうして指輪とか買ってくれたんだろう』って疑問に思ってたから、あんまり嬉しくない」
エリック「自分のジュースを一口」
エルメス「つられるように」
エリック「えっと、何だっけ? 焦ってる」
エルメス「その次はどこへ行くのですか? って言いながら、なんか妙にエリックの指が気になる。綺麗な指……」
エリック「つ、次はオランだ。これドイツんだ? オランダ。ここはどこ? オランだ。あいつはおったか? オランだ。もうわけわからん」
エルメス「あんまり気にならない(笑)。エリックの指が、つっと地図の上をなぞるその軌跡を見つめている。ぼーっとしてる」
エリック「ちらっとエルメスを見る」
エルメス「気付かない。しばらく指が止まっていたから、ふと顔を上げる」
エリック「目が合ったら、にこっと笑おう。オランはこのアレクラストで一番大きな国だ。きっとエルメス、びっくりするよ」
エルメス「エリックさん……。少し頬を染めて俯こう。子供っぽい彼の笑顔にドキドキ(笑)」
エリック「オランでは少しゆっくりしたいね。エルメスと一緒に街を見てみたいよ」
エルメス「ど、どうしてですか?」
エリック「す、好きだから……。言って、すぐに話を変える。オランには親戚が住んでてね……」
エルメス「さっきの言葉にドキッとする。○○○がむずむず」
GM「ほずえが……(笑)」
エリック「さすがは媚薬!」
エルメス「身をよじろう。ちょっと汗ばんできたから、さらにジュースを一口」
エリック「何か喋ってる。自分でもよくわからない。気になるのは、少し汗ばんだエルメスの首筋だけ」
エルメス「どんどん熱くなってくる。心臓がドクドクいってる。あんまり暑いから、服を一枚脱ごうとして、エリックの視線が気になる。エリックさん……」
エリック「どうしたんだ? 棒読み。こっちも心臓が張り裂けそう」
エルメス「いえ……。俯く」
エリック「わざとエルメスが気になるように、ジュースを飲む」
エルメス「じゃあ、つられて」
エリック「飲み干す」
エルメス「ごっくん」
エリック「ドキドキドキドキ」
エルメス「ドキドキ……」

◆ 幻影 ◆

エリック「ねぇ、エルメス……」
エルメス「は、はい……」
エリック「その、髪飾り、似合ってるね……」
エルメス「えっ? すっと髪飾りに触れる。あ、ありがとう……」
エリック「でも、少しゆがんてるから、直してあげる。そう言って、立ち上がってエルメスの後ろに立つ」
エルメス「相手の姿が見えなくて不安。震える」
エリック「そっと髪飾りを直してから、髪の毛、綺麗だね……。とか言って、そっと撫でる」
GM「俺が君にやったこと、そのまんまじゃん!」
エリック「だって、よくわかんないんだもん」
エルメス「先輩はそのとき、どんな感じでした?」
エリック「えっ? あっそう? ふ〜ん。ありがと。以上」
GM「(泣)」
エルメス「そ、それじゃあ、話にならないから(汗)、照れよう。あ、ありがとう……」
エリック「撫で続ける。撫でて撫でて撫で続けて、その内、そっと抱きしめる」
エルメス「あっ……。俯く」
エリック「そっと首筋に唇を当てて、好きだよ、エルメス……。ちょっと抱きしめる腕に力を加える」
エルメス「あ……エリック……さん……」
エリック「すっとエルメスの横に回って、逆側の頬に手を当てて、こっちを向かせる」
エルメス「あっ……。目を閉じる」
エリック「キスする」
エルメス「エリックさん……」
エリック「しばらくキスして、舌を絡めながら、そっと胸を触る」
エルメス「はぁ……。深く溜め息をつく。ちなみにこっから先、プレイヤーがわからないです(笑)」
GM「いいんじゃない? ほずえも初めて、エルメスも初めてなら、そのまんまプレイすれば」
エルメス「いや、だからわかんないから、どんな感じかわかんないって話……」
GM「ああ、なるほどね」
エリック「じゃあ、してあげるよ、ほずえちゃん……」
エルメス「あの、先輩……。目がマジなんですけど……」
エリック「好きだよ、ほずえちゃん……ちゅっ」
エルメス「うわぁっ!」
GM「(爆笑)。マジでしやがった、こいつ」
エリック「いや、あんまり綺麗な唇だったから(爆)」
エルメス「はぁ……はぁ……。びっくりしたーっ!」
エリック「まあ、適当に演じてくれぃ。どうせ最後まではいかせてもらえないんだし」
エルメス「ん? そうなの?」
GM「せいぜい、R指定かな? しばらく続けてて」
エルメス「わ、わかった……」
エリック「ゆっくりと服の上から胸を揉む」
エルメス「一々先輩に聞こう。それはどんな感じがするの?」
エリック「ドキドキする」
エルメス「じゃあ、ドキドキする」
GM「さっきからしてるじゃん!」
エリック「唇はキープしたまま、服の中に進入。じか揉み」
エルメス「どんな感じ?」
エリック「先っちょに触られると、こう、背筋がぞくぞくする」
エルメス「じゃあ、そんな感じ」
GM「ダメじゃん(笑)」
エリック「エルメス、ベッドにいこう」
エルメス「はい……」
GM「トサっ……」
エリック「揉む、触る、舐める」
エルメス「あぁ……。よじる、喘ぐ、恥ずかしがる」
エリック「まくる、つまむ、撫でる」
エルメス「ふぁ……」
エリック「脱がす」
エルメス「もう、メロメロ。好きにしてって感じ。頭の中がぼーっとして、何も考えられない」
エリック「……いいの?」
エルメス「はい……」
エリック「違う。GM」
GM「えっ? ああ、困る」
エリック「でも、このままだとヤっちゃうよ」
GM「う〜ん……まあいっか。シナリオ破綻しても」
エルメス「いいのか……?(汗)」

 よくない。
 でも、GMが動くのが遅すぎた。
 ヤバイ……。

エリック「そっとあそこに指を這わす。しっとりと濡れた感触に、エリック君はドキドキだ!」
エルメス「欲しい……と思う。膝の力を抜こう」
エリック「綺麗だよ……。女の子は言葉に弱い」
GM「雪島は言葉に弱い……っと_〆(。。 )」
エリック「こらこら」

 もう一度確認するけど(第3話の前半でも言っている)、エリックのプレイヤーは、GMの彼女に限りなく近い親友。

GM「雪島がする行動が、雪島のしてほしい行動ってことで」
エルメス「(笑)」
エリック「覆い被さって、耳からほっぺたにかけて舐める。左手で身体を支えて、右手は股間をキープ。慣れてきたら中指を入れる」
エルメス「あっ! ビクッと身体をよじる」
エリック「マジで18禁になってきた。GM、いいの?」
GM「密かに困ってる。このままされるとかなり困る。正確には、することそれ自体じゃなくて、君たちの仲が深まることなんだけど……でも、動きようがない」
エリック「このシナリオを始める前に言った、自分の言葉覚えてる?」
GM「『今後のこととか、普通の人なら心配するような、いわゆるキャラの個性を殺しちゃうような心配を一切せずにプレイしてくれ』」
エリック「了解。指をL字型に曲げて、ほずえちゃんの中を徹底的に攻める」
エルメス「あっ……あぁ……」
GM「何故ほずえ……」
エルメス「あっ! そうじゃん! 騙された」
エリック「くくく……。好きだ……囁きながら濃厚なキス。二本目の指を入れる」
エルメス「されるがまま……」
GM「クチャクチャ……」
エリック「音が立ってる……」
エルメス「恥ずかしい……。で、音がするの?」
GM「…………」
エリック「…………」
エルメス「大人の世界か……(汗)」
エリック「準備オーケー?」
エルメス「いっぱい濡れてる」
GM「シーツまでぐっちゃぐちゃ。媚薬の効果はすごい!」
エリック「これだけ濡れてれば入るかな? 心の中で思いながら、ほずえちゃんの膝の間に入る」
エルメス「もう完全にとろんじゃって、動けない」
GM「(だから、何故ほずえ……)」
エリック「ズボンを脱ぐ。パンツも脱ぐ。こっちも準備オーケーだから……」
GM「(こいつもこいつで、すごい台詞をバンバンと……。やっぱりTRPGは夜やった方が面白いか……?)」

 注:プレイ開始が21時くらいです。

エリック「入れる……」
エルメス「あぁ……エリック……」
GM「(止めよう)エリック」
エリック「何?」
GM「君がお×ん×んを……」
エリック「げしっ!」
エルメス「死ねっ!」
GM「げふっ!!」
エリック「貴様は恥を知れ!」
エルメス「お兄ちゃん、サイテー!」
GM「ごめんごめん! 悪かった! やめてくれ!」
エリック「ぜぇ……ぜぇ……」
GM「ふぅ……。リプレイでは伏せ字にしておこう」
エルメス「変態!」
GM「き、気を取り直して、エリック」
エリック「おう」
GM「君が……を入れようとすると」
エリック「うん(平気らしい)」
エルメス「……(恥ずかしいらしい)」
GM「ふと、とある女性の影が頭をよぎる」
エリック「…………」
GM「その人は、いつも君のことを『エリック』と呼び捨てで、けれど親しみを込めて呼んでいた」
エリック「……リーミア……。一瞬、動きを止める」
GM「その一瞬が命取りだ!(もう無茶苦茶) エルメスはその異変に気付く」
エリック「それは無理でしょう」
GM「なんで?」
エリック「ここまでされたら、頭ん中真っ白で何もわかんないよ。水原君も女の子になってみればわかる」
GM「無茶言うなよ(困)」
エリック「ってことで、幻影を振り切って……」
GM「ストップ! 媚薬の効果を思い出せ」
エルメス「効果?」
エリック「何かあったっけ?」
GM「リプレイにこうある。『使う者の愛情が深ければ深いほどよく効く』と」
エリック「つまり、その一瞬。リーミアのことを考えた瞬間に、エルメスへの愛が0になったと?」
GM「そうだね。媚薬の効果は0になった。0には何をかけても0だから、効果はない」
エルメス「じゃあ、その一瞬に、ふと部屋で考えていたことが思い出される。エリックさんは、躰だけなの? みたいな……」
エリック「ここで幻影を振り切る。いくよ、エルメス」
エルメス「ま、待って!」
エリック「ここまで来てなんだよっ!」
エルメス「やっぱりやめましょう。ごめんなさい」
エリック「そ、そんな……。かなり残念そう」
GM「待て、雪島(エリック)」
エリック「何?」
GM「ここまで来たら、頭ん中真っ黒でやめられないよ。雪島も男の子になってみればわかる」
エリック「じゃあ、今男の子だからやめない。ダメだ、するぞエルメス」
エルメス「いやっ! 最大の抵抗」
エリック「入れる。ズスッ!」
エルメス「いぐぅぅっ! 蹴る」
エリック「うぐっ!」
エルメス「ひどいです、エリックさん! ひどいです!」
エリック「だって、ここまで来てやめれるものかよ!」
エルメス「シーツで身体を隠す」
エリック「もう一度エルメスのところへ」
エルメス「逃げる。やめてください。泣く」
エリック「たじろぐ。エルメス……」
エルメス「泣きながら言う。部屋に帰ってください。お願いします……。ごめんなさい、ごめんなさい……」
エリック「うぅ……。水原君なら?」
GM「帰る(シナリオを進めるために! 本当は無駄でも慰める)」
エリック「じゃあ、帰る。ごめん、エルメス。でも、俺は本気で君のことが好きなんだ。それだけは、疑って欲しくない」
エルメス「泣いてる。めそめそ」
エリック「溜め息をついて帰る」
エルメス「エリック……さん……」
GM「バタン」
エリック「ちくしょう! 壁でも叩こう」

 とりあえず、かなり無理矢理だけど……。
 はぁ……。GMが経験点マイナスだな、こりゃ(悔)。
 自分が想像した以上に、媚薬の魔力が強かった(笑)。

◆ 破綻 ◆

エリック「ところで、本当にダイス振らない気だね、GM」
GM「たまにはいいんじゃない? 君たちの発言がすべてのプレイも」
エリック「なるほどね。かなり強引だったね、さっきの」
GM「媚薬の効果に、GMが負けた」
エルメス「しようと思った。プレイヤーよりも先に、PCが経験するのかと……」
エリック「だからほずえちゃん、私がしてあげるって」
エルメス「しくしく。私の処女プレイの相手は女性でした……えへへ……みたいな?」
GM「じゃあ、今度お兄ちゃんがしてあげるよ」
エルメス「まだそっちの方がましかな?」
エリック「やばいって。兄妹は」

 確かに、やばい。
 いや、会話が……。
 深夜モード突入。そのうち、日付が変わるぞ!

GM「じゃあエリック君です」
エリック「部屋に戻る。ベッドに座って、そのまま寝転がる」
GM「ふわふわ〜。『どうだったゲマか?』」
エリック「どうって?」
GM「エルメスの具合」
エルメス「具合って?」
エリック「……知らない方がいいよ(汗)」
エルメス「りょ、了解……」
エリック「やってないから、わかんねぇな」
GM「『ダメだったゲマ?』」
エリック「はぁ……。媚薬なんかに頼って、焦ったか? 俺……」
GM「『そうゲマねぇ』」
エリック「一瞬リーミアのこと考えちまった。俺がまだ、エルメスに本気になれてないのか?」
GM「『う〜ん。エリックはエルメスのこと、本気ゲマ。それとリーミアのことは別問題ゲマ』」
エリック「そうか……」
GM「『仕方ないゲマよ』」
エリック「あの時、媚薬の効果が切れちまった。それでエルメスが抵抗したってことは、つまりそれが答えだろう。それに、それまでうまくいってたのも、所詮は媚薬のおかげ。俺の魅力じゃない」
GM「それはちょっと違うかな?」
エリック「そう?」
GM「媚薬は、君が愛し続ける限り、その効果を発揮していたんだから、君にわずかたりとも心に隙なくエルメスを愛し続けられたら、あのときも大丈夫だったはずだし、その後も大丈夫だったはず。まさに店の女の子の言ったとおり、それでうまくいっていたはずだよ」
エリック「リーミアか……」
GM「『もてる男は辛いゲマ』」
エリック「宿命だな、もてる男の……」
エルメス「無茶苦茶(笑)」
GM「エルメスはどうする?」
エルメス「しばらくぼーっとしてる」
GM「ぼーっ」
エルメス「その内、服をただす。パンツは変えよう」
エリック「(笑)」
GM「ベタベタだもんね〜」
エルメス「穿いてて気持ち悪いにゅ」
GM「濡れたパンツは?」
エルメス「何も考えずに洗う」
エリック「生々しい(微笑)」
エルメス「一段落ついてから、思う。エリックさん、やっぱり躰目当てなのかな……」
GM「そうだね〜。うん。きっとそうだね、最低だ、エリックは!」
エリック「違う違う」
エルメス「でも私、どうしてあんなことを……。思い出して赤くなる」
エリック「ちょっと入れたぞ、俺。もうエルメスは俺のもの」
エルメス「そうなの……?」
エリック「……って考える男の子がたくさんいるらしい。1回セックスするだけで、もう相手は自分のものになったって思う人たち。困ったさんだ」
GM「ドキドキ」
エリック「エリックもその一人ということで(笑)」
エルメス「私、しちゃったのかな……」
エリック「したした♪」
GM「先っちょだけ」
エルメス「してないよね?」
エリック「(泣)」
エルメス「全然わからない。そういえばGM。『どうしてあんなことを?』って考えちゃってよかった? たしか、そういうことにはならない魔力があるって話だったけど」
GM「構わないよ。途中で切れちゃったし」
エルメス「じゃあ、強く思おう。ふとテーブルを見ると、空のグラスと地図」
エリック「置き忘れてきたらしい……」
エルメス「しばらくグラスを手でもてあそんでから、エリックさんに謝ってこようかなって思う。地図を持って立ち上がろう」
エリック「ドキドキ」
GM「じゃあ、ひとまずエルメスはそこまで。エリックの方に行こう」
エリック「GM、顔が笑ってるよ」
GM「いやいや(笑)。エリックは?」
エリック「ぼーっとしてる。ゲマを片手に、仰向けにベッドに寝てる」
GM「じゃあ、しばらくそうしていると、突然、部屋のドアが力強く開かれた」
エリック「驚く。激しく驚いて、半身を起こす。エルメスか!?」
GM「けれど、そこには誰もいない」
エリック「何だなんだ?」
GM「ほんの数秒の間があった。そのあと、いきなり君は身体に衝撃を受けて、ベッドに倒れ込む」
エリック「敵?」
GM「いや、敵意は感じられない。ベッドに倒れ込んだ君の上に、何かが乗っている。物体としては大きくて重い。暖かくて、君の首に柔らかいものが絡みつく」
エリック「っていうか、インビジビリティね? フェアリー?」
GM「聡明だね〜、雪ちゃん」
エリック「フェアリーなんておいしいキャラ、水原君(GM)が再登場させないわけがないからね」
GM「じゃあ、君が気が付くと、魔法の効果が切れる。髪の毛が乱れていて、身体にわずかな傷がある。服は、とてつもなく薄い綺麗な衣を着ているけれど、随分はだけている。すけすけだから、胸も×××も、色々見えるよ」
エリック「でも今は見えない(笑)。どうしたんだ!?」
GM「フェアリーは泣いている。よくわからないことを叫びながら……って言っても、声は小さいけど、とにかく泣いてる」
エリック「えらいことだ……って、GMのしたいことは理解した(汗)」
エルメス「(苦笑)」
GM「くくく……。エリックとして演じてね」
エリック「わかってるよ。エリックは気付かない。ここをエルメスに見られるなんて、絶対に気付かない(笑)」
エルメス「わくわく」
エリック「とにかく抱きしめる。左手で背中を抱きしめて、右手で頭を撫でてやる。もう大丈夫だ。大丈夫だから落ち着け」
GM「言葉は通じないけど、しばらくそうしていると、わずかに呼吸が落ち着いてきた」
エリック「どうした? 優しい瞳でフェアリーの目を覗き込む」
GM「見つめ合う二人。フェアリーはまだ泣いてる。何かを言うけど、君にはわからない」
エリック「困った」
GM「もう一度しっかりと首に抱き付いて泣く」
エリック「やれやれ。無言で抱きしめていよう」
GM「じゃあ、そろそろエルメス、行こうか?(笑)」
エルメス「うん!」
エリック「(苦笑)」
GM「いいよ。適当に演じて」
エルメス「了解! 地図を持って部屋を出る」
GM「すると、あら不思議! エリックの部屋のドアが開いている!」
エリック「GM、台詞が白々しい(笑)」
エルメス「エリック? 心で思いながら、近くまで行って、そっと覗き込む」
エリック「フェアリーを抱きしめてる。頭を撫でてる(開き直ったらしい)」
エルメス「エ、エリック!? 息を飲む。声は出さない」
エリック「端から見ると、フェアリーを上に乗っけて寝ているようだ。フェアリーはだいぶ落ち着いてるし、服はすけすけだから、全裸同然! もう、Hしてるようにしか見えない!」
エルメス「あ……あぁ……。後ずさりする。生理的嫌悪感を覚えて、思わず口を手で押さえる」
エリック「ほら、もう大丈夫だよ……。もう泣かないで(ヤケ)」
エルメス「頭の中真っ白でふらふらと自分の部屋に戻る。エリック……さん……」
エリック「撫で撫で。ああ、フェアリーの身体スベスベしてて気持ちいい♪」
GM「そんなこと思うの?」
エリック「いや、男としての本能」
GM「君、なにか男を誤解してるんじゃ……」
エリック「いや、貴方(GM)がいつもそんな感じだから」
GM「しくしく」
エルメス「(唐突に)荷物をまとめる」
エリック「わー、待ってくれー(笑)」
エルメス「ひどいです、エリックさん。見損ないました……。私、もう、人を信じられないかも知れません……」
GM「可哀想に」
エリック「あんたのシナリオ通りだろぅが!」
GM「いやいや。俺は君たちに仲良くなってほしかったよ(嘘)」
エルメス「鎧を着て、剣を持つ。指輪は着けたままだから気にしない。髪飾りも着けたまま。お金がないけど、そんなことを考える心の余裕がない。すぐさま宿を出る」
エリック「気付かない。ほら、もう泣くなよ〜。困ったように苦笑しながら、フェアリーを抱きしめてる」
GM「何か光景が思い浮かぶよ。とにかく今、そうして君たちは破局を迎えた」
エリック「……いいのか?」
エルメス「……いいの?」
GM「さぁ……」

 全然考えてない。

◆ 破壊 ◆

エルメス「絶対にGMに乗せられてる」
エリック「っていうか、GMがそうしたいのを肌で感じたから、なんとなくそういう方向に……」
GM「良いことだ。それじゃあ、こっから二人ばらばらにやろう。先にエリックね」
エリック「はい」
GM「しばらくフェアリーを抱きしめてると、やがてフェアリーは君から離れる」
エリック「少し首を傾げながら、フェアリーの顔を覗き込む」
GM「フェアリーは慌てたように右を見て、左を見て、また右を見て……困ってる」
エリック「う〜ん。全然わからん。怪我してるんだっけ?」
GM「多少。服も埃っぽい」
エリック「何かあったのかな?」
GM「フェアリーはおろおろしてる。その内、はっとドアが開けっ放しになってるのに気が付いて、それを閉める。一応見られるとまずい」
エリック「そうだね。特にエルメスには見られるわけにはいかない(笑)」
エルメス「やましいことがないならいいじゃん」
エリック「いや、私(プレイヤー)はそう思うんだけどね」
エルメス「なるほど〜。でももういない(笑)」
エリック「とりあえず、紙とペンを渡そう。何か描けるかな?」
GM「どう使えばいいのかわからない。ペンをもったままあたふたしてる」
エリック「じゃあその手をとって、ペンにインクを付けて、それで紙に絵が描けることを教えてやろう」
GM「じゃあ、フェアリーは必死に絵を描くよ」
エリック「じっと見てよう」
GM「……完成! これだ!」

 GM、絵(fig.1)を見せる。

fig.1 芸術だろ、これは……


エリック「…………」
エルメス「…………」
GM「…………」
エリック「こ、これは……(汗)」
エルメス「…………」
GM「わかんない?」
エリック「あ、生憎……」
GM「じゃあ、フェアリーは泣きそうな顔になる」
エリック「ま、待て待て。とりあえず、人が二人倒れてて、顔の黒いヤツが立ってるのは理解した」
GM「うんうん」
エリック「まあ、フェアリーが怪我してることも考えて、村がこの黒いヤツに襲われて、逃げてきたってのが妥当かな? でも、それを理解したことを伝えるすべもない。紙を持って、大きく真顔で頷こう」
GM「じゃあ、フェアリーは何か囁くように叫びながら(謎)、君の袖を引っ張る」
エリック「助けに来てくれってことか……。とりあえずエルメスに相談しないと」
GM「エルメスねぇ」
エルメス「私ねぇ(笑)」
エリック「フェアリーの肩に手を乗せて、とにかくベッドに座らせる。それから、通じなくてもいいから、すぐ戻るって声をかけて隣の部屋に」
GM「そうすると、フェアリーは大人しく部屋にいる。で、エルメスの部屋のドアは開け放たれたままになってる」
エリック「訝しげに覗き込む」
GM「どこか散らかった部屋。エルメスの姿も、彼女の荷物もない」
エリック「うっ……」
GM「エルメス。何か書き置きとかは?」
エルメス「ないよ。地図に涙の跡でも残しておこうか(笑)」
エリック「じゃあ、その地図を取って、呆然と立ち尽くす。エルメス……どうして……?」
GM「プレイヤー的には?」
エリック「自業自得だ、ばーか」
エルメス「面白すぎ」
GM「よくそこまで演じれるね。すごいよ。俺には無理だ」
エリック「とにかく、首を左右に振って部屋に戻る。どうしよう……」
GM「フェアリーは君の顔を見上げてる」
エリック「うっ……。行くしかない……。行こう」
GM「エルメスのことは?」
エリック「あ、後だ!」
エルメス「ひどい……」
エリック「今フェアリーの村に行かないと、両方後悔することになる。片方だけでも……」
エルメス「その“片方”はフェアリーなんだね?」
エリック「宛てのある方を選ぶ」
エルメス「感情的には?」
エリック「わからない。ただ、別問題だと思う」
エルメス「なるほど。私もプレイヤー的にはそう思うけど、エルメスはそうは思わないだろうね。やっぱり私よりフェアリーを……。でも、幸いにもエルメスはいない(笑)」
エリック「行きます、GM。荷物をまとめて出発する」
GM「じゃあ、フェアリーはインビジビリティ」
エリック「フェアリーの肩に、目印にゲマでも乗せておこう。宿屋の主人に金を払って、宿を出る。そして、ちらりと思う。エルメス、お金はどうしたんだろう……」
エルメス「無一文。身体売って稼ぐか……(笑)」
エリック「やめれ」
GM「すぐに街を出た。ちなみに、結構遠いです、この子の村」
エリック「間に合わないね」
GM「間に合わないよ、現実的に考えてね」
エリック「どの辺?」
GM「前回のムーンドリアの廃墟の、“ランスの村”って書いてあったところ。モンスターがうじゃうじゃいたけど、フェアリーは抜け道を知っている」
エリック「そこまでどれくらいだっけ?」
GM「1日だと、前回のリプレイに書いてある」
エリック「遠いな……。とにかく行こう」
GM「エルメスのことは?」
エリック「今は何も考えない。意図的に」
GM「じゃあ、一日経って村についた」
エリック「状況は?」
GM「壊滅してる。フェアリーたちの死体が数体、地面に転がっていて、家々はボロボロ。木々は薙ぎ倒され、焼けこげている」
エリック「ひどい……。フェアリーは?」
GM「放心状態で、ぶるぶる震えてる。膝もガクガクしてる」
エリック「抱きしめる。とにかく抱きしめてやる。この光景が見えないように、頭を胸の中に抱き入れる」
GM「泣く。ひたすら泣く」
エリック「誰がこんなことを……。一体、何のために……」
エルメス「ねえ」
エリック「ん?」
エルメス「この絵(fig. 1)の右端にある物体、箱じゃない?」
エリック「う〜ん。そう言われるとそう見えなくもない」
エルメス「何か、宝物があったんじゃないの?」
エリック「そうか。でも、どうやってそれをこの子に聞こう」
GM「泣き続けてる」
エリック「無力だ。言葉の大切さが身に沁みてわかったよ」
GM「しばらく泣いていると、不意にフェアリーが泣きやんで、ガクッと倒れる」
エリック「わわわ。どうしたの?」
GM「疲れて眠ってしまった感じだ」
エリック「じゃあ、安全そうなところに寝かせよう」
GM「すーすー」
エリック「村の様子を詳しく教えて」
GM「小さな小屋が3つある。その全部ドアは開いている。この場所から見えるフェアリーたちの死体は、4体。いずれも魔法によって殺されている」
エリック「なるほど。ダークエルフの仕業か。小屋に一軒ずつ入ろう」
GM「何もない。ひたすら荒らされている」
エリック「振る?(ダイスのこと)」
GM「いや、今回は敢えて1回も振らないプレイでいく。本当に大したものは見つからない」
エリック「次の小屋は?」
GM「どの小屋も一緒。何もない。何かあったと思われる場所は、すべて何もない空間が広がっている。持って行かれたようだ」
エリック「どんなものが置いてあったのか、埃の積もり具合とかでわかんない? 形状とか」
GM「四角い跡がある」
エリック「やっぱり箱かな?」
GM「どうだろうね」
エリック「何もないなら、フェアリーのところに戻る。どうしてる?」
GM「寝てるよ。疲れ切ってる。寝言で何か呟くけれど、やっぱりわからない。でも、恐らく、『お父さん』か『お母さん』だろう」
エリック「しばらく髪の毛を撫でてやってから、背負う。ここから離れよう」
GM「じゃあ、ムーンドリアを抜けた」
エリック「そこで俺も限界。ずっと寝ずに歩いてきたし。フェアリーを傍らに寝かせて、俺も倒れ込むようにして寝よう」
GM「わかった。じゃあ、次はエルメスに行こう」
エルメス「にゅ」

◆ 傷心 ◆

GM「君が宿を出たとき、真夜中だよ。しかも、夜はこれからますます更けていく」
エルメス「星が滲む。なにか、身体の一部分が奪われてしまった感じ。心がなくなってしまったみたいだけど、本当に心をなくした人を見てるから、その考えを改める。無性に悲しくて情けないのは、心があるからだ」
エリック「ほぇ〜〜」
GM「よくそれだけの台詞がスラスラ出てくるね? すごいよ」
エルメス「いやいや(照れ)」
GM「街の中は闇がはびこっている。誰もいない。静まり返った街には哀愁が漂っている」
エルメス「トボトボと歩く。足音が土に吸い込まれていく。この世の中に生き残った人間が自分一人になってしまった感触。或いは、自分だけがこの闇に溶け込んでしまった感触。どっちも、孤独。エリック……さん……。声を出したら、少しだけ現実に身を引き戻される」
GM「街を出るかい?」
エルメス「ただ歩く。どんどん街壁の方へ突き進んでいく」
GM「じゃあ、街壁まで来た。当然だけど、門は閉まっている」
エルメス「諦めよう。街壁の端に、へたりと座り込む。肩を震わせて、無言で泣く」
GM「風が強く吹く。ビュッと、君の髪が風になびく。その拍子に、髪飾りが飛んでしまって、石畳の上にカラカラと音を立てて転がっていく」
エルメス「あっ。慌てて取りに行く。そして、それを拾い上げてじっと見つめる」
GM「エリックに買ってもらったものだね。月の光に、ピカッと光る」
エルメス「エリック……さん……。泣きながら髪飾りをぐっと握り締めて、叩き付けようとする。でも、やっぱり出来ない」
GM「エリックが好きなんだね?」
エルメス「わからない。わからないけど、自分から投げ捨てたくない。あっ、髪飾りのことじゃなくて」
エリック「わかってるわかってる」
エルメス「結局受け身なだけなのはわかってるけど、向こうから何かしてほしい。すべてにおいて自分からは結論付けたくない」
GM「なるほど」
エルメス「髪飾りは、とりあえずしまっておく。元々、宿とか街の中をふらふらしてる時に着けるものであって、旅装束のときに着けるものじゃないし」
GM「いいよ。じゃあ、そんな君の耳に、不意に笛の音色が聞こえてくる」
エルメス「笛?」
GM「優しい音色だ。普通に聴いていて優しいっていうのもあるけど、それに呪歌の力も合わさっている。チャーム+ノスタルジィみたいな感じ。心が落ち着く」
エルメス「……優しい音色……。音色に誘われて、ふらふらと音のする方に歩いていく」
GM「この辺は街の端っこだから、家もなく、だだっ広い草地になっている。観賞用の木々も植わっていて、その内の1本に背をもらせさせて、若者が一人、目を閉じて笛を吹いている」
エルメス「こんな時間に?」
GM「……っていう疑問は持つだろうけど、一応君は、呪歌の力にかかったことにして、そういうように演じてくれるとありがたい。ダイスを振って抵抗してもいいけど、それをする意味はあんまりないと思う」
エルメス「了解。じゃあ、惹き付けられるようにそこに行って、聞き惚れる」
GM「若者は、15、6歳だ。若い。君に気付いているのかどうかはわからないけど、しばらく笛を吹き続ける。横笛だ」
エルメス「聴いてる。じっと聴いてる」
GM「じゃあ、君の心は随分落ち着いてくる。同時に、これは一瞬でいいけど、エリックのことを忘れて、心の中がこのメロディーと若者のことでいっぱいになる」
エルメス「素敵な音色……。素敵な人……」
GM「やがて、笛を吹くのをやめて、月を見上げる。『僕は、リウス……。あなたは?』」
エルメス「えっ……? あっ、エルメスです。エルメス・フィレン……」
GM「『エルメスか。綺麗な名前です。美しい湖に住まう、神秘の精霊たちを連想させます。貴女も、名前の美しさに負けない魅力を持っている……』」
エルメス「あ、ありがとう……」
エリック「魔力にかかってなかったら、歯が浮きそうなんだけど(苦笑)」
GM「『でも……』ゆっくりと君を見る。『心が、泣いています。それに、少し疲れているようだ』」
エルメス「あっ、いえ……。俯く」
GM「『何かあったのですか? 風にでも話すつもりで、僕に話してみてください。それだけで楽になるかも知れませんし、貴女にとって都合の悪いことは、すべて次の朝が来る頃には、風に流され、遠く山の向こうでしょう』」
エルメス「……実は、大切な人と喧嘩をしてしまって……」
GM「黙って聞いている」
エルメス「喧嘩……じゃないです。エリックっていう人なのですが、私は今日、その人に抱かれそうになりました……」
エリック「はぁ……。すごいこと話すなぁ(笑)」
エルメス「魔力魔力♪」
GM「『お嫌だったのですか?』」
エルメス「首を振る。わからない。エリックさんのことは好きだったけど、でも何かが違うの。エリックさんが私のどこを好きなのかわからなかった。私には、好きになって欲しいところがある。だから、例えば心の底から愛されている箇所が躰だったら、そんな悲しいことはない」
GM「『そうですね……。男と女は難しいですから……。僕にもわかりません……』静かに空を見上げる」
エルメス「黙って空を見上げる」
GM「絶妙の間をとってから、君を真っ直ぐ見つめて言う。『一緒に旅をしませんか?』」
エルメス「えっ? 少し驚く」
GM「『いつも一緒にいるとわからないことも、少し距離を置くことでわかるかも知れません。そしてそれは、エリックにしても同じです。少しの間、貴女がいなくなることで、貴女が自分にとって本当の意味でどういう存在だったのか、それを知るかも知れません。もしもその答えが、貴女の望んでいないものであったら、そのときは別れてしまった方が貴女のためでしょうし、もしも貴女の望んでいるものであれば、また彼の許へ行けば良いのです』」
エルメス「…………」
エリック「気持ち悪い魅力を持った子だ。シロッコのよう……。エルメスも堕ちるね(笑)」
GM「リウスはまた遠くを見つめる。それから目を細めて、穏やかに微笑む。『好きな人がいるんです』」
エルメス「えっ……?」
GM「遠くを見つめたまま続ける。『片想いなんですが、僕より一つ上で、とても可愛らしい方です。でも、病気にかかってしまって……』眉をひそめる」
エルメス「病気……ですか? 悪いんですか?」
GM「『はい……。いえ、実際のとところはよくわからないのです。見たことのない病気なので、僕は今、その薬を探して旅をしているのです』」
エリック「……どうするのかな? エルメスは……」
エルメス「ついていく理由が弱い。でも……」
GM「でも?」
エルメス「選択の余地はないかな? ここまで言われれば。しかも、どうせ宛てもお金もないし、好きな人がいるなら、一緒にいても危険はないだろうし。それに、ちょっとカッコいいかも……(笑)」
エリック「エルメス〜(泣)」
GM「リウスは君に視線を戻して、にっこりと笑う。『貴女が答えを見つけ出すまでで構いません。手伝ってはくれませんか? 貴女がいてくれると、心強い』
エルメス「はい。あなたがよければ、喜んで」
GM「『ありがとう』スッと手を差し出す」
エルメス「握る」
GM「細くて綺麗な手だ」
エルメス「ドキドキする。ドキドキドキドキ」
GM「じゃあ、これでエルメスパートは終わりね」
エルメス「うん」
エリック「っていうか、本当に離ればなれに(笑)」

◆ 旅立ち ◆

GM「じゃあ、エリックの方」
エリック「うん。ラストだね?」
GM「そう。今夜(プレイ時間が夜)最後のシーン……の予定」
エリック「いい加減眠くなってきた……」
エルメス「私、もう先に寝たいくらいだよ(笑)」
エリック「こらこら。反省はやらないと」
エルメス「ラジャー」
GM「どんなに辛い夜の後も、朝は必ずやってくる。不意に君は、額に冷たい感触を覚えて目を開ける」
エリック「何だ……?」
GM「眩しい光が目の中に飛び込んでくる」
エリック「うっ……。溶ける……」
GM「じゃあ、君は溶けた。生命力に57点受けて」
エリック「死ぬ死ぬ」
GM「フェアリーの膝の上にいる。フェアリーが額にタオルを乗せてくれたようだ。近くに小川があるらしい」
エリック「おはよう、フェアリー」
GM「『……??』困ってる」
エリック「おはよう」
GM「『お……は、よー??』」
エリック「そうそう。笑顔で頷く」
GM「じゃあ、嬉しそうに繰り返す。『おはよぅ、おはよー』」
エリック「……俺の名前と勘違いしてないことを祈ろう(笑)」
エルメス「あぁ、今頃“おはよう”はどこで何をしてるのかしら(爆)」
エリック「起き上がる」
GM「首を少し斜めに傾けて、微笑む。『おはよぅ』」
エリック「うん。おはよう」
エルメス「……お兄ちゃん(GM)、よくこんなフェアリーなんて演じられるね?」
GM「ん? 何言ってんだ? ほずえ(エルメス)」
エルメス「ん?」
GM「後で発表するけど、君には次回から、重大な使命があるから……」
エルメス「……使命って?」
GM「後で発表するよ」
エリック「くくく……」
エルメス「ん〜? 先輩(エリック)は知ってるの?」
エリック「バレバレじゃん、水原君」
GM「まあ、それはそれ。君たちはそうして老人になるまで、『おはよう』と言い合ってる?」
エリック「んなわけないでしょう。自分の方を指差して、しきりに自分がエリックであることを訴える」
GM「じゃあ、その内わかるかな? 『エリ……ック?』」
エリック「頷く。そうそう。アイ・アム・エリック」
エルメス「怪しい(笑)」
エリック「フェアリーにも名前を聞こう。同じようにフェアリーに指を指す。君は?」
GM「『??』」
エリック「困った……」
エルメス「大変だねぇ」
GM「何か決めてあげて。恐らく、フェアリーの名前は君たちにはわからない」
エリック「ラジャ」
GM「『ラジャ?』」
エリック「違う違う」
エルメス「可愛い名前がいいね♪」
エリック「何が面白いかなぁ」
エルメス「……どうせなら、面白い名前じゃなくて、可愛い名前つけて欲しいなぁ(汗)」
エリック「ああ、そうだね。エルメスはこの子、嫌いじゃなかったの?」
エルメス「プレイヤーは好きだよ。嫌う理由がどこにもない」
エリック「なるほど。何かない?」
エルメス「う〜ん」

 いい加減夜も遅いが、この後10分ほど二人でああだこうだと言い合う。
 結局、最終的には『ミーシュ』という名前になった。

エリック「ミーシュ……」
GM「しばらく呼んでると、ようやく君のしたいことを理解したらしい。音の響きが気に入ったみたいで、自分の方を指差して『ミーシュ』、君の方を指差して『エリック』だと、楽しそうに言ってる」
エリック「微笑ましい」
エルメス「まだ子供なんだね〜」
GM「そうだね。知力が18もあるけど、知恵と知力は別物だから」
エルメス「18? 設定?」
GM「いいや。手元にキャラシがある」
エルメス「…………」
エリック「気付いたらしい(笑)」
GM「まあ、また反省でね(爆)」
エルメス「やるの……? 次回、私がこの子を……? マジですかー!?」
エリック「くくく……」
GM「さっ、これからどうする?」
エリック「……ミーシュは?」
GM「何も考えられないみたいだよ。いきなり全然知らない世界に放り出されて、かなり困惑してる。今、もしも君がいなくなってしまったら、間違いなくベアかタイガーの餌になって終わりだね」
エリック「脅迫だ……。一緒に行けと?」
GM「別に、どっちゃでもいいよ。まあ、弱肉強食の世の中だから、弱いものは強いものに、文字通り食われてもしょうがないし」
エルメス「可哀想……」
エリック「わかったよぉ(泣)。一緒に行きます」
GM「弱ってる」
エリック「俺と一緒に来る? 伝わるかな?」
GM「悲しそう」
エリック「ダメだ〜! 手を取って歩き始める」
GM「じゃあ、ついていく。何やらフェアリー語で言うけど、君にはわからない」
エリック「ねぇ、GM。次セージ上げて、フェアリー語覚えてもいい?」
GM「どうしよっかなぁ。覚えてもいいけど、片言ずつにせん? 実際、そう簡単に覚わるとも思えんし」
エリック「わかった。はぁ……。またソーサラー4が遠退いていく」
GM「ところで、真面目な質問だけど、エルメスのことは?」
エルメス「わくわく」
エリック「……とりあえず、今の旅の目的は、ミンフのためとはいえ、つまりは俺の問題であって、エルメスをわざわざ危険な目に遭わすこともないから、まあ、その……」
エルメス「探してくれないんだね?」
エリック「探さない」
エルメス「しくしく」
エリック「エルメスが追いかけてくれればそれでいいし、俺には、彼女を危険に巻き込む責任がとれるのか不安」
GM「…………」
エルメス「……その子(ミーシュ)は?」
エリック「この子は……ここにいるより、俺といた方が安全だろ?」
エルメス「そうだね……」
GM「エルメスのこと、好き?」
エリック「さぁ……。秘密(笑)」
エルメス「(笑)」
GM「仕掛けてきたな(苦笑)」
エリック「ちゃんと考えてプレイしてるから、何とかなるんじゃない? いや、ならないかも(爆)」
GM「ダメじゃん」
エルメス「まあ、当面私はリウスと一緒に旅して、エリックはミーシュと一緒に旅かな?」
GM「そうだね。互いが生きていれば、またいつかどこかで会える日もあるだろう」
エリック「敵同士だったりしてね」
エルメス「それはないでしょう」
エリック「いやいや(含笑)」
GM「(こいつ、何か勘づいてるな……)」
エリック「先が楽しみだね。GMが恐らく自分から望んだストーリーになったと思ったけど」
GM「まあ、一応。じゃあ、締めよう」
エルメス「うぃ」
エリック「了解」
GM「エルメスはエリックと別れ、巡り会った詩人リウスと一緒にロマールを出る。宛てのない旅だけど、東の地を目指す」
エルメス「東……オランの方だね?」
GM「そうだね」
エルメス「オランか……。エリックが、おっきな街だって言ってたな……」
エリック「言ってた言ってた」
エルメス「一緒に街を見たいって言ってたな……。あの言葉も……」
GM「優しくリウスが言おう。『そんな俯いて歩いていると、影の暗さに瞳が曇りますよ。胸を張って真っ直ぐ前をご覧なさい。きっとあの青空のように、瞳も心も澄み渡りますから』」
エリック「歯が浮く……」
エルメス「は、はい! 答えて、微笑もう。あっ……なんかこの人に惹かれつつある。やばっ」
エリック「くすんくすん」
エルメス「だって、エリック情けないもん」
GM「じゃあ、エリックの方も東を目指すけど、まずはミーシュを何とかしないとね」
エリック「何とかって?」
GM「格好。羽根も透けてるし、全身透け透け。やばい」
エリック「それなりの服を着せれば、一応エルフで通じる?」
GM「大丈夫だよ。可愛すぎる以外、問題はない」
エリック「なるほど。じゃあ、服を調達行かないと」
GM「それはまた次回で。君たちのパートをやるから」
エリック「はいよ。じゃあ手を引いて、ミーシュの歩調に合わせて歩く」
GM「ミーシュは嬉しそうに微笑む。まだぎこちない笑いだけど、少しは昨日のことを吹っ切ったようだ」
エリック「そっか……。いつかきっと、それを乗り越えられるときが来るから」
GM「そうだね。じゃあ、そうして君たちは新たなる旅に出た……」

◆ 反省 ◆

水原(GM)「色々あるにゅ」
雪島(エリック)「そうだねぇ」
ほずえ(エルメス)「物語は進行したけど、今までで一番まずかったかな?」
雪島「はっきり言っちゃうと、面白みにかけた」
水原「たぶん、君らが俺の行きたい方向を理解しちゃって、わざわざそっちに乗せようとしてくれたから」
ほずえ「そうだね。ほら、前にお兄ちゃん、『単にラブラブじゃ、つまんないから、うまくやってね』って言ってたじゃん。だから、今回見てて、絶対に一度別れさせようとしてるなって」
雪島「見え見え」
水原「そうか……。しかし、媚薬の効果はすごかったね」
雪島「完全に18禁プレイになっちゃった。いかんねぇ、プレイヤーがなまじ知識があるのも」
水原「いや、知識量の問題じゃなくて、性格の問題だと……」
ほずえ「そうそう。お兄ちゃんも先輩もHだから」
雪島「心外だ」
水原「とりあえずあそこでマスタリングをミスった。大誤算だ」
雪島「当初の予定では?」
水原「一応、流れはあの流れなんだけど、もっと早くする予定だった。おかげで、恐ろしく強引なプレイになってしまった」
ほずえ「まあ、しょうがないっしょ?」
雪島「たまにはそういうこともある」
ほずえ「ところで、あの後私(エルメス)がエリックの部屋に行かなかったら、どうしてたの?」
水原「何とかしてた。隣に聞こえるように音を立てるとか。それだけで見に来たでしょ?」
ほずえ「なるほどね。じゃあ、あそこで私(エルメス)が声を出してたら?」
雪島「私(エリック)が引き止めたりとか」
水原「そういう状況になってみんとわからんなぁ」
ほずえ「リウスと私を旅させるのは作戦だったんだよね?」
水原「状況的に、ほずえなら大丈夫だろうと踏んでたから、そっちの心配はなかったよ。ミーシュの方も、エリックなら一緒に旅してくれるだろうと思ってたから問題なし。一番怖かったのは、エルメスがエリックを許すか、エリックがエルメスに謝ることだね」
雪島「なるほど。そこで私たちが、GMが別れさせようとしてることに気が付いてたから、敢えてそれをしなかっただけで、最悪その可能性はあったわけだね」
水原「まあ、本当に最悪の場合は、君たちに頼むけどね。コンベンションじゃないんだし。リプレイは編集すれば済むことだから」
ほずえ「今のところリアルにきてるから、なるべくしたくないね」
水原「一度もダイス目を誤魔化してないのが偉いな、俺。かなり珍しい」
ほずえ「そうなの?」
水原「GMやるとわかる。今回、ここまでのプレイでエリックが2回残り生命力1になってるけど、普通はああもうまくはいかない」
ほずえ「ふ〜ん」
雪島「これからどうするの?」
ほずえ「ああ、そうだよ。やっぱり私がミーシュをやるの?」
水原「うん。でも、エルメスをプレイしていたほずえとしてじゃなくて、新プレイヤー、ほずぴーとして……」
ほずえ「ほ、ほずぴー!?」
雪島「(笑)」
水原「そうそう」
ほずえ「だ、ださいからヤだ」
水原「そうか……」
雪島「次はこっちだね?」
水原「そうだよ」
雪島「エルメスのときは、私はどうするの? リウスをやればいいの? 歯の浮く若者(笑)」
水原「いや、あの人は超重要人物だから、やらせない。とりあえず、今のところ何も考えてないってのが本音かな……。恐らくエルメスの方は、戦闘よりも会話中心の話になると思うから、エルメス側につくような適当なキャラを作ってもらうことになると思う」
ほずえ「戦闘はやんないの?」
水原「リウスが無茶苦茶強い。正確には、ダメージを受けない。彼、戦闘技能はないから」
ほずえ「なるほど(汗)」
水原「まあ、多少はすると思うよ。バード技能は、戦闘でその能力を行使するまでに時間がかかるから」
ほずえ「そうだね」
雪島「それにしても、大丈夫なの? 水原君」
水原「わからん。とにかく今回は、自分でもあんまり気に入ってない。出来がよろしくないから、次は面白い話になることを願ってるよ」
雪島「そうだね」
ほずえ「2話と3話は面白かったよ。ああいうプレイがしたい」
雪島「やっぱり、プレイヤーはプレイヤー同士で、ああだこうだと頭使った方が面白いね」
水原「了解。まあ、今回は手伝ってもらったってことで」
雪島「にゅ」
水原「じゃあ、お疲れさま。もう寝よう」
雪島「お疲れ様〜……っと、GM、忘れ物」
水原「何?」
雪島「経験点」
水原「ああ、そう言えばそうだね。もう、寝ることしか考えてなかった」
ほずえ「私も」
水原「じゃあ、手伝ってくれたし、二人とも1,100点ずつあげる」
雪島「了解」
ほずえ「1,100点ね?」
水原「にゅ。じゃあ、今度こそお疲れさま、俺を寝させてくれ」
ほずえ「お疲れさま、早く寝たいにゅ」
雪島「お疲れ〜」


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