■ 絶対に人間ではあるまい

 空港から外に出た瞬間思ったことは、「暑い!」ということ。
 気温は名古屋のそれよりも低いのだが、日差しの強さが半端ではない。サングラスを持って行ったのは正解だったが、帽子はまあいいやと思ったのは失敗だった。
 バスに乗り込むと、いくつかの理由により、夕食の前に雑技を見ることに。
 車窓から写真を何枚か撮ったが、特別面白いものはないので、ここでは割愛。
 劇場に着くと、バスは無造作に路上に駐められ、我々は降りた。下が劇場の正面の写真。


 中に入ると、まだ前の方にも空席がたくさんあり、ツアーの参加者たちは適当に座り始める。
 小生はなんとなくぽつんと取り残され、あたふたしている間にもどんどん席はなくなっていく。
 仕方ないので、通路側に一つ席が空いていることを確認し、中国人に混ざって座ることにした。
 ちなみに周りは子供連れの人たちが3列くらいにわさわさ座っていたのだが、小生が、
 "Excuse me. Here, OK?"
 と、実にわかりやすい英語で尋ねると、後ろの席のおっさんが、妙に嬉しそうに、
 "OK, OK!"
 と答えた。これ、後から感じたのだが、中国では英語より日本語の方が通じる。少なくとも土産物屋の店員さんたちはみんな日本語を話したし、観光地で押し売りしてくる人たちも、お金くらいは日本語で言えた。そこから推測するに、恐らくあまり聞き慣れていないであろう英語で話しかけられたのが衝撃的だったのではなかろうか。
 とにかく、妙に嬉しそうだった。

 公演は1日2回だそうで、これはその1回目。1回目の方が空いているらしく、それも夕食の前に雑技にした理由の一つだった。
 もっとも、結果的には席は満席となり、いよいよ幕が開く。


 まあ、最初はこんな感じで、ただ華やかなだけで大したことはなかった。
 が、だんだんとんでもないことになっていく。例えばこれ。


 円柱の上に置いた板の上に人が乗り、その人が二人の女性を支え、その女性たちが台を持ち、台の上にさらに円柱が置かれ、その上に板、そしてその板の上に乗った人が、板の先に皿を置いて、その皿を頭の上に乗せるのだ。
 こいつら、絶対に人間ではあるまい。
 次にこれ。


 一番下の男は、はしごの上に立っている。まずそれだけでも人間技ではない。後ろの女性が支えているように見えるが、たまたまそこにいただけで、別に支えてはいない。
 その男は布をぐるぐる回している。男の頭の上に台があり、その上に女性。女性は上を向き、額の上にものを乗せている。
 こいつら、絶対に人間ではあるまい。
 女性たちは女性たちで、ものすごかったが、特にこれ。


 わかるかな? 胸を反らせて、そのまま後頭部が背中にくっついている。さらにその上に人が乗り……。
 この人たちには、どうやら背骨という概念がないようだ。
 感動と興奮の内に、1時間くらいの公演は終了。初っ端から大満足な企画だった。
 ちなみに、後でRyan氏に尋ねたら、失敗することもあるらしい。実際、今回も輪をバク転でくぐる見せ物で二度ほど失敗していたが、場合によっては上の方で掲げた写真のような派手なものでも失敗することもあるそうだ。それはそれで見てみたかった気が……。