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■ 英語ツアーの始まり
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さて、セントパトリックス大聖堂からホテルに戻ってきた我々は、入り口でツアーのバスを待っていた。この日参加するのは、Gray Line社が催行するグランピアンズ国立公園へ行くツアー。すべて英語だ!
英語のツアーに参加することには、内部でも議論があった。というのは、我々自身は半ば楽しみと冒険心をもって臨めばいいが、無謀な挑戦をして他のツアー客に迷惑をかけることだけは避けなければならない。
そこで、小生は事前に、「英語がほとんど話せないが、参加しても大丈夫か」とGray Line社に問い合わせた。以下がその回答。
Hi Young(仮),
We take a lot of passengers who speak little or no English. We would love for you to travel with us! There are vacancies on May 1st - would you like me to make a booking for you?
ちなみに小生、自分の英語のレベルに関して「little」という表現を用いたのだが、今振り返ると、我々の英語力は彼らの言う「no English」以下だったとしか言いようがない。
そう、小生はこのメールに安心して参加を決めたのだが、我々の英語力はあまりにも足りなかった。今こうしてこのツアーのことを振り返り、比較的冷静に書けるのは、結果として無事に終了したからであり、それは人智を超越した何か──我々はそれはフェイリンの奇跡だと信じているが、本当に偶然が重なったことで危機を回避し、事なきを得たからである。
今、「比較的」と書いたが、正直今思い出してもわずかに震えが走る。一体「no English」な我々が何をし、訪れた危機からどのようにして救われたのか、これから少しずつ話していくことにしよう。
時間を戻そう。
午前7時55分、入り口で待っていると、向こうから「AUSTRALIAN PACIFIC TOURING」と書かれたバスがやってきて、ホテルの前に停まった。我々はGray Lineのバスなので、これではないと思って眺めていたら、中から現れた人は我々のところにやってきて、間違いなく小生の名前を呼んだ。
中に入るとわずかな人数。
しばらく走ると、小生はこれが別の集合場所への送迎バスだと気付き、実際にバスは各ツアーのバスを待つ群衆の中に我々を下ろして走り去っていった。
集合場所には各社のバスが停まっており、どのバスがフィリップ島へ行くのか、グランピアンズへ行くのか、あるいはグレートオーシャンロードへ行くのか、旗によってわかるようになっていた。我々はグランピアンズの旗を見付けて、列の後ろに並んだ。
このツアー、よほど人気だったらしく、やってきたバスは再びAPTの、今度は二階建てのバスだった。Gray Lineは自社で二階建てのバスを持っていないのかも知れない。
ちなみにこれがバス。写真はグランピアンズ国立公園で撮ったもの。
バスに乗ると我々は2階へ行き、前から見て左側の席に座った。小生はMichaelと隣同士で座り、我々の前の席は空いていた。通路を挟んだ我々の隣の席には、アジア系の若いカップルが座っていた。
定刻通りバスが動き始めると、このカップルが、何故か我々の前に席に移動してきた。そして、くつろぐためにわずかに座席を倒したのだ。
この時小生は、「他の客は誰も椅子を倒していないのに、厄介な連中だ。こいつらはわざわざ小生とMichaelに嫌がらせをするためにこっちに来たのか?」などと考えていた。しかし、それも仕方ないことだろう。
まさか、この時すでに、フェイリンの奇跡は動き始めていたことなど、小生は知る由もなかったのである。