■ Novels


マジックプラネット
精霊の国ミナスレイア。あらゆることが精霊力によってなされ、精霊力によって支えられるこの国で、異変が起きた。
長年保たれてきた人間と精霊の調和。それが今、崩れようとしていたのだ。
ミナスレイアの平和を願う二つの正義が、今この大陸の命運をかけて雌雄を決する。

エピローグ

 一面の草原の真ん中を、一本の街道が走っていた。
 その街道を四、五十歳くらいだろうか、一組の壮年の男女が歩いていた。
 やがて道の傍らに、ぼろぼろになった木の立て札が見えてきた。
『精霊の国ミナスレイア』
 立て札にはそう書かれていた。
 遙か彼方に険しい山々を望み、やや離れたところには、川がその清流を湛えて流れている。草原の草は涼やかな自然の風にさやさやと揺れ、日の光を反射して、波のように白く光っていた。
 二人は一度立ち止まり、彼方の山に目をやると、再び道を続けた。
 街道は少しずつ荒れ果てていき、しまいには草だらけで、道と草原の区別が付かないほどになっていた。
 その頃になって、初めてミナスレイアの街の街壁が見えてきた。
 二人は草を踏みながら、街門をくぐった。
 精霊の国ミナスレイア。
 しかしそこには、すでに人の姿はなかった。
 草は伸び放題に伸び、家々は崩れ落ち、廃墟と化した街がそこにはあった。
 二人はその場に立ち尽くし、感慨深げにその様子を眺めていた。
 しばらくそうしていて、不意に女の目から涙が零れた。
 男はそれを見て、優しく涙を拭ってやると、そっと女の頬に口づけをした。
 それから二人はミナスレイアを後にした。
 そして、二度とこの国を訪れる者はなかった。
Fin
←前のページへ